三毛田
2025-01-24 21:57:27
1087文字
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82 082. 広がる波紋

82日目
ゆっくり広がっていく

 一度でも疑惑を抱いてしまえば、それは瞬時に波紋のように広がっていく。
 口へ運ぶと、サク、サクッと音を立てるスナック菓子。
「ずいぶん真剣に観ていたな」
 その声に振り返り首を回す丹恒を眺め。
「初めて観たジャンルだからさ。面白かった」
「そうか。それなら、勧めた甲斐があった」
 彼は立ち上がると、ダイニングテーブルにある炭酸水のボトルを手にして戻って来る。
「俺にじゃないの?」
 中身が吹き出さないよう、そうっと蓋を開け。そして、口をつけてゆっくりと飲んでいくのでそんな言葉が出た。
「たまには自分でやれ」
「ちぇっ」
 てっきり甘やかしてくれると思ったのにな。残念だ。
「好きだ」
「そうか」
「何がって聞かないんだ」
「お前からの好意は、きちんとわかっている。図り間違えることはしない」
 そう口にする彼の表情は見えない。
 どうしてかって? 彼はこちらに背を向けているからだ。
 でも、綺麗な黒髪から覗く耳が、ちょっとだけ赤い。気がする。
 それを見たら、もう少しだなって思う。
「冷たっ。丹恒」
 頬にスラーダの瓶が当てられ、思っていたより冷たくて軽く悲鳴を上げて抗議の声も上げる。
 丹恒は嬉しそうに笑って。
 その笑顔に引き付けられ、気づけば彼の頬に手を添えていた。
「きゅう」
 薄く開いた唇から零れ落ちた声は、いつもと違ってかぼそくて。
 俺の心に波紋を広げ、かき乱す。
「丹恒、このままだとキスするよ」
「それ、は」
 指の腹で唇をなぞると、ちょっとだけ水滴がつく。
 さっき飲んだ炭酸水だろう。
「嫌? 嫌なら、もっと強く拒んで。そうしないと、俺は本当にキスするから」
 そう告げると、手首を掴んでくる。
 まあ、拒絶されても仕方ないようなことをしているのは確かだから。
 でも、返事は欲しい。
「好きだ」
……知っている」
「丹恒は、俺のことどう思ってる?」
「嫌いじゃ、ない」
「俺はお前のこと、欲を持って見てる」
「そ」
 驚いたように、目を見開いて。
 まさかそんなものを、俺が抱いているとは思っていなかったのだろう。
 絶句したように俺を見つめ。
 それから、慌てたように手を引っ込めようとする。けど、俺はそれを許さない。
「丹恒。遅いよ」
 手のひらにキスをして、じっと彼を見つめ。
「きゅう、やめてくれ……
 じわりじわりと、白い頬が赤く染まっていき。
 相変わらず手を引っ込めようとするけれど、力は弱い。
「キスするから」
 腕を引き、抱き寄せ。
 逃がさないよう後頭部を掴み、そっと唇を重ね。
「もう、逃がさないから」