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haru_haru0704
2025-01-22 19:32:39
2768文字
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悪口はほどほどに
哥舒臨×カカロ 全年齢
べったーに上げたものの続きみたいな感じ
忌炎はおろおろしていた。
目の前で、哥舒臨とカカロが口喧嘩を始めたからだ。
彼らは似た考えを持っているようでいて、案外そうでもない。今日は些細な意見の食い違いから、言い争いに発展してしまっていた。
「この老いぼれめ。頭が固いのも大概にしろ」
「間違っていることを間違っていると言っただけだ。未熟な意見を振りかざすな、若造が」
「俺は間違っていない。そもそも、幽霊猟犬についてお前にとやかく言われる筋合いはないな」
「善意から助言してやってるんだろうが」
「それを余計なお節介と言うんだ、クソジジイ」
「フン。下賤な野良犬には難しい話で理解できなかったか?」
あ。
忌炎はカカロの僅かな表情の変化を感じ取った。
今の哥舒臨の言葉は、失言だったのではないだろうか。
「・・・もういい」
カカロは哥舒臨に背を向け、そのまま歩き去っていく。
忌炎は、カカロの背と哥舒臨の顔を何度も交互に見た。
「え、あの、哥舒臨さん?追いかけなくていいんですか?」
「追いかけてどうする。余計に怒らせるだけだ」
カカロが最後に見せた顔は、怒りの表情ではなかった。しかし哥舒臨はそのことに気づいていないようだ。
ダメだ。俺がどうにかしないと。
忌炎は慌ててカカロを追いかけた。
「カカロ!」
「忌炎?どうした?」
呼びかけに振り向いたカカロは、感情の読み取れぬ表情をしていた。
いつもの彼と同じ、冷静な表情である。
いつもと同じ・・・ではある、が。
「その・・・哥舒臨さんも悪気があったわけじゃないと思う。だから・・・」
「だが、あれは奴の本音だろう。・・・どうせ俺は、卑しい野良犬だよ」
そう呟いたカカロは寂しげに笑った。
カカロのこんな顔、今までに見たことがない。
「っ、いや、あの人は口が悪いだけで、そんな・・・」
「そうだろうか?俺は、あいつに軽んじられているような気がしてならない。あいつにとって、俺はその程度の存在なんだろうと思うと・・・なんだか、息が苦しくて」
話しながら、カカロは胸を押さえた。
痛ましいその姿に、忌炎の胸もズキリと痛む。
カカロは自嘲するように笑うと、忌炎を見つめた。
「お前みたいに、普通の家庭の生まれだったら・・・こんな風に引け目を感じることもなかったんだろうか」
「哥舒臨さん!!今すぐカカロに謝りに行ってくださいすぐにほら早く!!」
部屋に入るなり暴風のような勢いでまくし立てた忌炎に、哥舒臨はうんざりと息を吐いた。
「騒々しいぞ。第一、何を謝るんだ」
「下賤な野良犬って言ったことですよ!!カカロ、傷ついてましたよ!?」
「・・・・・・」
哥舒臨は急に黙り込む。何か心当たりがあるのか、バツが悪そうだ。
「あなたは軽い気持ちで言ったのかもしれませんけど、カカロは本気にしてますよ!生まれが・・・普通の家庭じゃなかったから、引け目があるって。軽んじられていると思うと、苦しいって」
「・・・わかった、わかった!謝りに行けばいいんだろう」
哥舒臨は忌炎から目を逸らしつつ、椅子から立ち上がった。
「本当に、ちゃんと会話してあげてくださいね?カカロってわりと自己肯定感が低いように感じます。自分が誰かに愛されるなんて信じられない、みたいな」
「肝に銘じておく・・・」
哥舒臨はうろうろと破陣基地内を彷徨った。
しかし、どれだけ探してもカカロは見当たらない。
カカロのために貸し出された部屋にも、倉庫にも、食堂にも、訓練場にも、どこにもいない。
幽霊猟犬の団員に聞いても、みな「知らない」と言う。
哥舒臨がカカロを探し始めたのは夕方だったが、とうとう会えないまま日付が変わってしまった。
「クソ・・・あいつ、どこほっつき歩いてやがる」
カカロの部屋のベッドに腰かけ、哥舒臨は独りごちた。
ここで待っていれば、さすがにいつかは帰ってくるだろうという魂胆だ。
わざと明かりを落とした部屋の中で、哥舒臨はじっと耳を澄ませる。
そうして、1時間ほど経った頃だろうか。
カチャリと、扉を開ける音がした。
ようやく帰ってきたカカロを捕まえて、ベッドに押し倒す。
おい!と文句が聞こえたが無視して、厚みのある体を腕の中に閉じ込めてやった。
「何なんだ、急に・・・」
「・・・悪かった」
「・・・・・・」
カカロが身じろぐ。
困惑している気配を感じて、哥舒臨は言い募った。
「あんなの、ただの軽口だ。お前だって、本気で俺のことをジジイだと思っているわけではあるまい」
「まあ・・・それはそうだが」
「・・・そんなに気に障ったのなら、もう言わん。だから、機嫌を直せ」
「・・・・・・」
カカロは強情で、何も返事をしなかった。
まだ許してくれないらしい。
「どうしたら、許してもらえる?」
「・・・別に、俺が許さなくてもお前は困らないだろう」
「困る。お前が、・・・悲しんでいると、俺が困る。言わなくても、分かっているだろうと思っていたが」
ぎゅう、と更に強くカカロを抱きしめる。
その言葉を言うつもりはなかった。どうも、自分にはそんな甘ったるい言葉は似合わない気がして、意図的に避けていたのだ。
だけれども、自分の気持ちを伝えるには、もうこれしかなくて。
「俺は、お前のことを愛しく思っている」
「・・・っ」
腕の中の体が、ぎくりと強張る。
ああ、困ったな。もし抵抗されたら、どうすればいいのか知らない。
離してやるのがいいのか、離してやらないのがいいのか。どっちだろうな。
しかしそれは杞憂だったようで、カカロは暴れる素振りもなく体から力を抜いた。
「・・・俺みたいな、野良犬を、」
カカロが何か否定的な言葉を言おうとしているのが分かって、わざと遮る。
「拾って、育てて、遊んでいるうちに本気になって、俺はお前を手放せなくなった。お前が自分のことをどれだけ卑下しようと構わんが、俺がお前をどう思っているかはよく認識しておけ」
そう言うと、カカロは細く長い息を吐いた。
心なしか、その吐息は震えている気がする。
腕の拘束を解いて顔を見たくなったが、そうするとまともに話してくれなくなりそうだ。やめておこう。
「・・・俺、は」
カカロは、ぽつりと呟いたきり黙ってしまった。
頭をわしゃわしゃ撫でてやりながら、次の言葉を待つ。
しばらくして、カカロは心細くて仕方なさそうな声で言った。
「・・・どうすれば、いい」
「無理に変わる必要はない。ただ、俺が褒めたら素直に受け取れ。それだけでいい」
「・・・分かった」
ちゅっ、と耳たぶをついばむように口づけられる。
囁くように「したい」と言われ、哥舒臨はようやく腕を解いた。
目元をほんのりと赤く染めたカカロの顔が、思いの外──いや、当然ながら。可愛らしく感じられて、哥舒臨は口元を緩めた。
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