三毛田
2025-01-22 10:55:36
1061文字
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80 080. 零れた本音

80日目
思わずでてしまう

「やだぁ……丹恒と離れたくないよぉ……
 グズグズ鼻を鳴らしながら、穹は俺の足に抱きついてくる。
 助けを求めるように周囲を見ても、誰一人として目を合わせてくれない。
「仕方ないですね。モーディス、ファイノン。どちらか残ってください」
「お前が残れ救世主」
「いや。君が残るべきだ」
 こちらはこちらで、違った意味で譲れない戦いを始めようとしている。
「俺が残ったほうがいいのは、分かっている。街の人たちに頼りにされている彼らがいたほうが、事が進みやすいだろう」
「そうだけどさぁ。バカップルがいちゃついてるのに、俺が丹恒といちゃつけないのは間違ってるってばぁ……
「誰がバカップルだ」
「延々と、惚気を聞かされる方が辛いんだけどな」
「貴様も、バカップルを否定しろ。そっちの三人も、付き合っていたの?! という表情をするな」
 これのどこがバカップルなのだろうか。モーディスなんか、ただ穹の戯言に巻き込まれた人だろうに。
「バカップルとは、俺たちじゃないのか?」
「俺と丹恒はもちろんバカップルですよ」
「穹。俺は、まだまだトリビーにこの世界のことを聞かなくてはいけない」
「うう……行ってくる」
 ぎゅってしてくれ。と、強請られたので仕方なく抱きしめてやると笑顔で出かけていった。
「大変ねぇ」
 トリビーからの視線が痛い。
 それにしても。
 いつもは聞き分けがいいのに、今日はすごくわがままだったな。
「あまり甘やかしちゃ駄目よ?」
「俺のためにも、彼のためにもならないのはわかっている。けど」
「けど?」
「彼は、彼らは俺を〝俺〟として見てくれる。だから」
 その先は、上手く言葉にできない。でも、このこぼれ落ちたものは本音だ。
……色々事情があるのねぇ」
 何かを察して、彼女はそれだけを口にする。
「トリビー。オクヘイマの歴史書はあるだろうか」
「それなら、ゼノトスちゃんに聞くといいわ。場所は……
 彼女は俺のスマホの地図を開いてピンを刺してくれる。
「助かる」
「歴史書じゃなくて、あたちたちに聞いてくれてもいいのよ?」
「お前たちは、ここの人々に頼られているだろう。彼らが優先だ。だが、分からないところは聞きに来ると思う」
「優しいのねぇ」
 と、ニコニコと俺を見上げてきて。
 トリビーたちに別れを告げ、目的地へ。
 図書の管理人の老人に事情を話し、歴史書を読ませてもらう。
……少し寂しいな」
 穹の声が聞こえないのは、彼の温もりがないのは寂しいと感じてしまう。
 我ながら重症だ。