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樟
2023-11-29 22:16:25
5975文字
Public
文章系の語り
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小説メイキング的なやつ
やるか……メイキング……!
題材どれにしようかなと思ったんですけど、コメディ系では一番要素が多くてお気に入りの『いい年した兄弟喧嘩の話』(pixiv:
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=13010959)の前半部分にします。
あと普通に生産者目線の技術的な裏話とか入るので、この話自体を好きでいてくださる方にはオススメできません!大事なことなので最初に言いました!
しかしメイキングというより文章の書き方の解説かもしれない。ストーリーの話はしていない。ストーリー書こうと思って書いてないので。
ある日。
「たっだいまー!
……
へ?」
「ちょっとアレイシア、いきなり止まったら危な
……
え?」
「もう、何事、です、の
……
?」
外回りから戻ったアレイシア、エウブレナ、ネーレイスが、ヴァンガード隊本部で目にしたのは、
「お兄ちゃんのわからずや!」
「こちらの台詞だ!」
わけのわからない速さで取っ組み合いの喧嘩をしている成人男性二名だった。
強烈な引きを作る事だけに特化した書き出しですね。印象的で唐突な場面を冒頭にボンッと置くの、オリジナルの時によくやる手癖です。
この冒頭の『ある日。』、文意としては全然いらないんですけどリズムがいいのと、何も表現しないのに何か意味深っぽい感じが出る。とっかかりとしての機能が強い。
明るい話は台詞から書き出すパターン多いですね。読者目線でとっつきやすいのもあるし、自分の中でも「これはコメディ」というスイッチングに使ってるのかもしれない。あと単純に台詞書くのが好き。
3連の台詞で驚き→静止からの視線集中による物語への強烈な引きを作ったところで、ちょっとだけ状況を説明した地の文が『、』で区切れて台詞をはさんで続くのも、見た通り引きです、終わってない文は続き読みたくなるからね。
続く短い状況説明、これ多分ミステリ読みだった頃の影響なんですけど、『事件現場の描写を簡潔に済ませて一旦区切ってから詳細に入る』ってやり口に慣らされてるからこういうことする。人間わからないことをそのままにするのは気持ち悪いので、「何で!?」って思わせられたら書き手の勝ち。
メイン2名の名前をここで出してないのは手癖もあるけど、この書き方が「何で」の補強になるからです。台詞で匂わせてるし二次小説だから書かなくても読者にとっては誰だかわかるんですけど、文章のつくりとして伏せといた方が効果的。
最後の文、句読点なしで書くにはちょっと長いかなって感じる文量なんですが、語呂はそこそこいいのでまあいっか!ってそのまま行きました。長いの基準は文字数より文節の数に由来してます。だいたいいつもは3文節も続くと句読点打ちたくなるんですが、この文は5文節くらいありますね。語呂の良さの判断は脳内で音読した時につっかからないことです(突然感覚的になるな)。語呂の良さっていうと七五調のことが思い浮かびますが、こいつはあらゆる文を強制的にアンダンテ・カンタービレにしてしまう悪魔なので、さらっと読み流したい文に使うと逆効果だと思っている。
さかのぼること一時間前。
所用でハデス区を訪れたアポロンⅥことアポロニオは、ついでにヴァンガード本部に顔を出そうと思い立った。緊張状態ではなくなったとはいえ、ヴァンガード隊が英雄庁直轄の組織にもかかわらずしばしば規則破りをしでかす問題児であることは変わらない。網の目はキッチリかいくぐってるはずだ、とは司令官であるゾエルの言だが、そもそも規則とは守るべきものであって、屁理屈を駆使してかいくぐるものではない。社会の変化に応じた変革が必要なことも理解はするが、それは正規の手段で行われるべきだ。どんなに頑固だの唐変木だのそれ以上の暴言だのをぶつけられようとも、そこに規律がある限り、刺すべき釘は刺すのがアポロンⅥである。
『さかのぼること一時間前。』は『ある日。』とは違って明確な時制を表す意味のある表現ですね。でも体言止めの形をそろえてやることで機能面をちょっと残してます。
逆接の接続詞はたくさん知ってると便利。『とはいえ』『にもかかわらず』『だが』『ようとも』は全部ニュアンスが違って楽しいね。
人物の発言や心情をダイレクトに突っ込んで、『、と』で地の文に接続するの癖ですね。普通に書くと『~はずだとは、司令官である~』になる。特に深い意味はない完全な趣味です。
並列助詞『だの』『とか』『やら』を3つ重ねるのも趣味です。最後の1要素を長めに書くと小さめのオチがつくのでよい。
釘刺しとはいえ訪問の礼儀として手土産(お菓子)を用意し、ヴァンガード本部におとないを入れる。ややあって、出迎えたのはヴァッカリオだった。
「お、お兄ちゃん」
あからさまにぎくっとした弟の表情には頓着
しないようで
、至極嬉しそうにアポロニオは挨拶をする。
「おおヴァッカリオ、久しぶりだな。今日は待機シフトか?」
「えっ、あー、そう、そんな感じかな
……
」
シフトといえば聞こえはいいが、市民に悪印象を与えるからと待機を命じられただけである。しかもそれをいいことに、いつものことながら飲酒していた(本日三缶目)。
目をそらしながら曖昧に返事をする弟から、当然のごとく酒の匂いが漂ってくる。これにはさすがにアポロニオの目もすがめられた。
コメディと割り切っている文には()書きとか普通に入れる。シリアスな時はやらない。全体の文体がわりと固めに寄ってるので、ギャップを狙っている節もあります。
視点管理甘かったなと思って同人誌に収録する時ちょっと直したとこがあるんですよね。
あからさまにぎくっとした弟の表情には頓着
せず
、至極嬉しそうにアポロニオは挨拶をする。
キャラ名が長いので以下略称で書きます。
ほんの数文字なんですけど、類推の表現(ようだ)は「視点がどこに存在するか(誰がその推測をたてたか)」をめちゃくちゃ主張するので、ここを直してやるだけで神視点に寄せられる。修正前はアポ寄りの三人称視点(弟という関係名詞・表情の記述)がいきなりヴァ視点(アポの表情に対する推測)に引っ張られて、一文の中で視点がぶれている。ので、そこを修正しました。「そうだ」も類推の表現といえばそりゃそうなんですが、「ようだ」より慣用句的というか、逆にここを『至極嬉しくアポロニオは~』にすると感情を断定することになってしまうのでアポに寄りすぎる。この後はヴァ寄りで地の文を進めたいので、それも望ましくないわけです。視点変更直前の文はなるべく中立な文章にしておくと違和感少なめでできる。気がする。
「
……
また勤務中に酒を飲んでいるのか」
「
……
、
……………
はい」
ふー。
小さく悲しげなため息つくのは良心に刺さるからやめてお兄ちゃんダイレクトに罵倒された方がマシいやそんなことなかったこのお兄ちゃんに兄弟の縁切るとかもう二度と言わせちゃだめだ。
ここまでを一息に(発音はしていないがまあ、そんな気概で)思い、ヴァッカリオはおそるおそる兄の顔をうかがう。
輝ける光明神、英雄庁の広告塔、ヒーローの中のヒーローたるアポロンⅥの、市民に向ける親愛でもヴィランに向ける厳格でもない、悲しみに曇った表情など、誰が見たいと思うだろうか。誰も見たくはない。
コメディやギャグは3点リーダーもクエスチョンマークもエクスクラメーションマークも盛り盛りに盛ったもん勝ちだと思っている。別に誰を傷つけるわけでもない表現の幅ですし。
句読点なし文、しかるべきタイミングで出すのが好き。前述の通り普段の手癖はそこまで一節が長いわけではないんですが、ここぞという時に最高に語呂のいい一文を置けると大変気持ちいい。脳内麻薬出てると思う。で、ここを起点に地の文の視点がヴァ寄りに変わります。会話とか心の声文が入ると視点変更もすんなりいく気がする。
おちゃらけた文で反語を省略すべきところまで全部書いちゃうのも好きでやるやつです。ノリツッコミみたいなやつ(ノリツッコミも好き)。コメディは手数が勝負だと思っているので、言葉数を増やせる要素は全部くまなく増やしていく。
そんな表情のまま、アポロニオは律儀に手土産(人数分のエッグタルト)の袋を渡してきた。
「いや、いい。今日はお前の顔を見にきたわけではない。ゾエルはいるか」
「あ、ボス? 今はちょっと出てるけど、もうすぐ戻る予定だよ」
「そうか。ならば、中で待っても構わないか?」
あ、うん
……
という小声の返事に、すたすたと入室する。ヴァンガード隊にとってはいつも通りだが、世間一般の基準からするとひどく荒れた室内に。
()の天丼。まったく同じにすると滑るので、中身をどんどん盛っていくが吉。
一文が長いな
…
と思った時に倒置法にするのもよくやる手です。一文が長くなるのは書きたいことが渋滞してるのがだいたいの原因なので、じゃあ外に出して好きなだけ書きゃええやんってする。
そのままごく自然な動作で物を片づけ始めたアポロニオに、受け取った手土産(カスタードの甘い香り)を抱えたままのヴァッカリオは慌てて声をかける。
「お兄ちゃん、片づけなんてしなくていいから」
「気にするな、ただの癖だ。知っているだろう」
「知ってるけど。あとでエウブレナたちに怒られるから、おいらが」
非番のアポロニオが挨拶に訪れて以来、ヴァンガード隊三人娘の中でアポロニオの株は急上昇である。【中略】兄への高評価に否やがあるわけもないが、一抹の寂しさを感じないでもない。ここの隊長、おいらだよね?
()天丼②。
『~ままの』で人物の状態を書くの好きですね。直前のアポロニオに対して使っている『片づけ始めた』との対比で不可抗力感がにじみ出ていいと思う。そういう伝わるか伝わらないか微妙なニュアンスを積めるだけ積んでいくのが好き。
だーっと書いた地の文の〆を心の声でまとめる落とし方、コメディ書く時の常套です個人的に。ここまで書いてて気づいたけど、話の展開でオチをつけられない代わりに文章の書き方で細かいオチをつけてないか。
そんな内心を集約した言葉に、アポロニオは片づけの手を止め、くるりとヴァッカリオを振り向いた。ほっとしていると、真剣な顔で口を開く。
「常々思っていたのだが」
「何?」
「彼女らのお前への評価は、なぜそんなにも低いのだろうか」
ええ~
……
そこ疑問に思うんだ、そっか
……
。
ヴァッカリオ自身は、自分の言動が常識に照らして褒められたものでないことは重々承知しているし、あえてそれを狙っている節もある。部下たちの視線の冷たさも致し方ないことである。
だが、厳格にして公正なアポロンⅥ、もとい可愛い弟に対する兄アポロニオの認識に照らすと、それはどうやら違ったように映るらしい。
話の内容的にはここらへんからようやく本題です。前振りが長い。
ここの『くるりと』(オノマトペ)、書こうか書くまいかひたすら悩んだ記憶がありますね。可愛すぎるから。3文字オノマトペは可愛い。書かないと語呂が悪いので結局書いたんですが。
『常識に照らして』『認識に照らすと』『映るらしい』あたりの、似たような表現を畳みかけたり対の概念を持ってきたりするのはよくやる。まあ言葉遊びですね。
「確かに、昼日中から飲酒するのは褒められたことではない。お前の身体にも悪い」
そんなことをそんな真っ直ぐな目で、空き缶をゴミ袋に詰める音をBGMに言われると、はい、すみません以外の言葉の吐きようがないヴァッカリオである。そんな弟に、真剣な表情のままアポロニオは続ける。
「だが、それを差し引いてもだ。お前は、強く優しい。聡明な、いい男だ。冷遇されるいわれはあるまい」
あまりの言われように居たたまれなくなり、ヴァッカリオは軽く天を仰ぐ。あ、蜘蛛の巣
……
(気づいたからといって別に掃除はしない)。
『空き缶をゴミ袋に詰める音』動作を動作主の能動としてじゃなく、その結果として起こった現象によって描写すると、視点がぶれないまま状況がわかって何かいい感じになりますね。
ここの()はちょっと神視点の自我が出てるな。今なら書かないかもしれない。
【中略】台詞の応酬は二次創作なのでキャラっぽさを拾うように気をつけて書いてます。一人称・二人称もそうだけど、特に気を遣うのは語尾と接続詞の選択ですね。一番口調が出るので。
「そう思ってもらえるのは嬉しいけどさ。おいらなんかに、」
「ヴァッカリオ」
あ、まずい。
す、と細められた兄の目に、地雷を踏んだことを悟る。瞬間、口をふさがれた。
「それ以上、私の自慢の弟を卑下することは許さない。たとえ、それがお前自身であってもだ」
読点で括弧閉じするの、発言が途切れたことが直截にわかるので楽。シリアスな話だったら地の文を使って説明加えてもいいんですが、コメディにそこまでの描写濃度はいらないので。
読んでほしい場所は文章を極力短くしがち。句読点は休符だと思っているので、あればあるだけ挟まれた文章にいろんなものが凝縮される。
顔面に迫るアポロニオの手は一切見えなかった。それどころか、その届く範囲に踏み込まれたことすらも。そういえば先日のヒーロー・パンクラチオンでは、アレイシアの攻撃を受け流すばかりだった。自分から動いた兄の速さは、その時の比ではない。
これが最高のヒーロー、アポロンⅥ。その実力。
どこのどいつだ、純粋な戦闘能力だけならアテナⅦの方が上とか言ったやつは。
しかも今、アポロニオは怒っている。ヴァッカリオが踏んだ地雷によって、ものすごく。怒りという感情は、時に肉体の尋常を超えてその能力を引き出す。
台詞前ではわからなかった状況を後出しで説明する=視点人物の思考(触覚・聴覚・視覚情報を得る→情報を分析する)をなぞることで、動作自体の速さを印象付けている。アクション描写でよくやるやつ。あと、ここでも倒置法っぽいものを使ってますね。
キメ文は体言止めにしがち。でもコメディなので直後におちゃらけた文を入れて中和。
だが、ヴァッカリオもひるんでばかりはいられないのだ。口をふさぐ兄の手首をつかみ、引きはがす。
「
……
いーや。いくらお兄ちゃん相手でも、これは譲れないね」
ほう、とアポロニオの声が低くなる。それに対する怯えを振り払うためか、ヴァッカリオの口角が無意識に上がる。
「その、無駄に高いおいらへの評価、改めてもらうよ」
――
だって恥ずかしいから
……
!
「できるものならやってみせろ、力づくでな!」
こうして、武闘派ヒーロー二名による、いい歳した兄弟(四十路と三十路)取っ組み合いの喧嘩が、世にもあほらしい理由で勃発したのである
――
。
このへん完全に楽しくなっちゃってますね(書き手が)。
表情を直接書くのは割と苦手というか、顔面に対する興味があんまりないので、音声情報で代替することが多い。あと実際に見えているわけではない光とか抽象的な色とか。やべえ奴みたいなこと言ってんな。
文章でギャグっぽいことをする時に使いやすいのはギャップだと思っているので、壮大な仰々しい文体でふざけた内容を書くとなんか面白い。気がする。
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