2025-01-21 09:15:36
2937文字
Public 二次創作:UTAUホラー
 

隠し場所 / 語り部:重音テト

二次創作ホラー作品です。
重音テトやUTAU音源そのものに二次創作上の設定を多数含みます。名前だけですが桃音モモと欲音ルコも出ます。
下ネタあります。ギャグのノリだとは思う。

 ねぇ、君。一度くらいは同居人のエロ本とかの隠し場所探したことあるでしょ。
 え、ない?馬鹿な……
 ……ボクはやれるよ?実際一ヶ月くらい前にやりました。言う前に行動するのが正義!
 というわけで、今日はそのときのことの話をするね。

 あの日はボクたちのマスターが夜遅くまで出かけていた。家主がいない間、家にいたのはボク含むUTAU音源が数人だけ。フォルダの中で眠ってるやつは除いて、3〜4人くらいがここに出てきて、飯食ったりゲームしてたりと好き勝手過ごしていた。……うちのマスターのとこにいるのはボク含めみんな女の子寄りの見た目だからなのか、マスターとは別の部屋を自室として割り当てられたんだけど、なんだかんだみんな一ヶ所に集まりがちだね。
 .wavだか.frqだかの集合体がどうやって人みたいに暮らしてるかについてはお好きに想像していただくとして、だ。
 寝転がりカーペットと一体化していたボクは「そうだ!!!マスターいない間に隠された性癖暴いたろ!!!」……と思いついちゃったのです。
 善は急げ!ってことで、ボクはこっそりマスターの部屋に入った。善ではない?それはそう。

 ボクのマスターはね……お世辞にも綺麗好きではないかな。食べ終わったもののパッケージとか通販のダンボールとか溜め込むし、物の置き場所はコロッコロ変わるし……
 だからまぁ、文字通り足の踏み場もないくらいとっ散らかったマスターの部屋は、正直ベッド下より隠し場所になりそうなとこがいっぱいある。だとしても定番のとこから攻めてみるのがボクのやり方ってわけ。
 案の定ベッド下は本やら段ボールでゴチャゴチャ……ボクは「探しがいあるじゃーん!」って感じでテンション上がったなぁ。別にボクは楽しく過ごせるなら、マスターが生活力皆無でもいいってタイプだし。
 それで、慎重に慎重にベッドの下からモノを取り出し、アヤシげなモノじゃないか確認してまた引っ張り出し……なんとなく手に取ったDVDのパッケには「驚異の胸囲!天然記念物18歳Hカップ委員長は全ての男を鷲掴み!」
 露骨すぎんだろ。
 ベッドの下とはいえ床に野晒しはないだろ。
 驚異の貧乳がこれを見たらどう思うか考えろよやかましいわ。

 ……こうあっさり見つかると拍子抜けするもんで、もういいやって、DVDをベッドの下に突っ込んだ。
 別にボクはマスターの性癖暴いた後どうこうしたいわけじゃないからね。精々すっげ〜需要極狭なモノとかワンチャンボクのエロ同人とか出てきたらウケるなって思ったけどHカップ委員長が好きなら重音テトは刺さらんな自分で言っててむかついてきた。
 とにかく!その日はもうそれでおしまいだ。

 ……で、本題はここから。
 例の本を見つけてから数日後の夜中。
 モモやルコとゲームしてたボクはリビングで
寝落ちしたらしく、ふと目を覚ましたら喉が乾いて仕方なかった。あ"ーって力み音素みたいな声出しながら起き上がって、ダイニングスペースの水道に口を濯ぎに行った。
 戻ろうとしたとき、目の端にオレンジの線がちらついた。
 思わずそちらに目をやる。廊下に繋がるドアが開きっぱなしで、そこから見える廊下にはまた別の部屋へのドア……それの隙間から光が漏れていた。電気も太陽光もない夜の空間で、そのオレンジの細い光はすごい目立っていた。
 気づけばボクは廊下の光を踏んで……ドアの隙間からマスターの部屋の中を覗き込んだ。


 マスターの丸まった背中が見えた。どうやら机に突っ伏しているようだ。
 マスターの部屋って、ドアを開けると真っ先にモニターとかキーボード置いてるデスクが目に入る位置でさ。マスターが作業とかするために座ると、唯一の出入り口であるドアに背を向けることになるんだ。あぁ作業中に寝落ちたんだなって思って、ボクはそっとドアを開けて部屋に入った。
 モニターは真っ暗で、DTM用の機材も出てなくて……なんの作業してたんだろうってふと思った。でもそんなこと気にせずに、ボクはマスターを覗き込む。
 腕を机の上で組んで、その中心に顔を埋める……腕の肉をクッションにして眠るような姿勢。後頭部から耳に向かって、声をかけた。
「おーい、そんな寝方したら腰いため――

 ぐるんって、マスターの首が回った。

 寝落ちなんかしてなかったと気づく間もなく、ボクはマスターと目があった。

「見た?」

 確かにそれだけ言ってた、かも。でも、それよりもボクは、その目に気を取られていた。
 まんまるで真っ黒い目が、ボクを捉えている。どうしてこんなに黒いのか――と思って、虹彩と見間違えるほどにその瞳孔が開き切っていているからだと思い至る。
 一応、キメラかつUTAU音源という人外のボクすら、自分でもわかるほどに瞳が揺れてるのに、マスターは人間のくせにボクの視線にぴったり動きを合わせて、その暗黒の瞳でこちらを覗き返してる――そんな気がした。

 嘘をついてはいけない。本能がそう告げた。
 だからボクは言葉を選ぶ。

……なんのこと?」

 まぁ、ボクは本当のことも言わないんだけど。曖昧に、余計なことは言わず、馬鹿のふりをする。
 するとマスターは一つ瞬きをして、それからいつもみたいに目を細めてごく自然に微笑んだ。
「そう。……おやすみ」
 ボクもおやすみ、とだけ返し、そのまま部屋から出た。


 マスターは、ボクが部屋の外に出る最後の最後まで、突っ伏したままだった。
 ……でも、ドアを閉めた後、やっぱり隙間から光が漏れるのを確認したとき、本当にちょっとだけ、欲張りたくなって。
 わざと音を立ててリビングの端まで歩いた後、足音を立てずにマスターの部屋の前まで戻った。
 まだ明かりがついていた部屋の中を、ドアの隙間から覗き見た。
 まぁ、対して決定的なものは見えなかったよ。

 パキッ、とDVDのケースを開いて、すぐに閉じて、ベッドの下に放り込んだところしか見えなかった。


***


 それだけさ。別にあれ以来マスターがボクや他のみんなに何かしたわけじゃないし、変わったこともない。
 ただ、気を抜いたときにあのときのことを考えて、それで……思いついてしまったんだ。

 ボクだったらエッチなやつどこに隠すか?って考えると、ベッドの下はまずない。だって『エッチなものを隠すところとしては』定番だし、ブラフを狙うとしても、ちょっと覗いただけでバレそうなところじゃあやっぱ不安じゃない?
 ……だから、もしかしたら、あのケース自体が、AVそのものがブラフで、本命はあの中に――

 …………。いや、なんでもない、気にしないで。なんにもないんだ、きっと。

 ――あぁ、そうだ!

 ボクたちが歌うときは、マスターの部屋に呼ばれるんだ。当然だよね。PCも機材もマスターの部屋にあるんだから。
 ボクも、これからマスターの部屋に行って歌うんだ。

 だから、あの散らかった部屋でボクが踏みしめたモノの下に何があったとしても、ボクは、ボクたちは"それ以上"知っちゃいけないんだ。