roku
2025-01-21 08:11:51
3022文字
Public SD夢💤
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最強のライバル【松本夢】

夢主のライバルが一之倉という話
※あくまで夢なので腐の要素はほぼない
※2024.8.6にX夢垢であげたものを再掲

夢野夢野夢野夢野夢野夢野夢野『松本〜』
休み時間。隣のクラスを訪れた私は、廊下側一番後ろで一之倉と仲良く喋る松本に声をかける。
「どうした?」
『教科書貸して
夢野なぁいい加減自分の持って来いよ」
それはご尤もです。はい。だけどこれには深〜い訳があって
善処しまーす』
「次はねぇからな」
呆れてそう言いながらも毎回机の中から教科書を出してくれる。きっと私じゃなくたってそうするだろうけれど、私は松本のそういう優しさが好き。
「松本、夢野のこと甘やかしすぎじゃない?」
「そうか?」
「そうでしょ。もう貸さなくていいよ。ね?」
最後の“ね?”は視線とともに私に向けられた。その鋭い眼光は間違いなく“全部知ってるよ”と言っている。
『いや、それは、その
「それだと夢野が困るじゃねぇか」
「いや、困らない。でしょ?」
頬杖をつき、目をすぅっと細め、唇に綺麗な弧を描いて、わざと言葉を短く切り疑問形で終わらせる。松本はどういうことだ?と頭の上にハテナを浮かべているけれど、私には一之倉の言わんとしていることがわかりすぎる。このままここに居てはあの瞳に殺される。そう判断した私は松本にお礼を告げ逃げるようにして教室へ戻った。

「借りれた?」
『何とか』
「何それ」
『バレてる。絶対バレてる!』
そう言って鞄から取り出した教科書は、今しがた松本から借りてきた物と全く同じ。そう。本当は忘れてなんかない。松本との接点が欲しくて、私を意識してほしくて、嘘をついている。万が一貸してもらえなかった時の為に自分のはちゃんと持っている。さらに毎回だと怪しまれるので数回に一回と調整していたはずなのに。
「松本ってそんな勘鋭いっけ?」
『違う。一之倉
「あぁ、そっち!!」
目の前の友人はそりゃ大変だね〜と私の置かれた状況を楽しんでいる。

一之倉と松本は三年間、クラスも部活も寮の部屋まで一緒の親友だからか、松本に関する情報を一之倉に聞きに行く女子がやたらと多いらしい。ラブレターを渡してほしいとか仲を取り持ってほしいなどとお願いされることもあるようで、そのせいか、松本のことを好きな女子に随分と辛辣だ。



『松本。いつもありがとう』
借りていた教科書を返しに行くと昼休みだったこともあり一之倉はそこにいない。これはチャンスだ。
「これは?」
教科書に添えたパックのカフェオレ。
『ん?いつも教科書貸してくれるからお礼』
「気、遣わなくていいのに」
『ほんの気持ち』
「ならありがたくいただく」
束の間の平和な時間に割って入ってきたのは……
「カフェオレいいなぁ。オレには?」
教室に戻ってきた一之倉は机の上のカフェオレをサッと手に取る。
『え?』
口止め料として準備した方がよかったかもしれない。そんな思いが頭を過るも時すでに遅し。ないと素直に伝えると、松本が「やるよ」と譲渡の言葉を口にした。
「ありがと。じゃあ遠慮なくいただくね」
待って!それは私が松本にあげたカフェオレなのに!知ってるくせに!
なんてこと言えるはずもなく一之倉をジト目で見る。そんな私のことなど一切気にせず“遠慮なく”の言葉通りストローをパックに差して咥えた。ゴクゴクと勢いよく喉を上下させみるみるうちにパックはぺしゃんこになってしまった。空のパックをゴミ箱へ投げ捨てこちらを見た一之倉は勝ち誇ったようにフッと嗤った。

『ねぇ、勝てない……
「ははっ!めっちゃ強力なライバルだよね〜」
……ニヤニヤしないで』
友人の言う通りとても強力なライバル(?)であることは間違いない。だけど松本のことは好きだから、あいも変わらず隣のクラスへ足を運んでいる。
もちろん一定の間隔をあけて。



「松本いないよ」
そっと覗いた隣の教室。松本を探すも見あたらずどうしようか悩んでいると、気配なく後ろからかけられた声。
『わぁっ!!いっ、いっ、一之倉!!』
「失礼だね。オバケでも見たかのようじゃん」
『だっ、だって、気配ないから!!』
「で、何?また教科書?」
………
「そんな回りくどいやり方じゃ鈍感な松本は気づかないよ」
そんなこと言われなくたってわかってる。だけどほんの少し接点がほしい。好きな人と話をするぐらい許されたっていいじゃない。
「お、夢野またか?」
頭の上から降ってきた、同じ“また”でも一之倉とは全然違う優しい響きに振り返る。
『あえっと「今日はオレが貸すからいいよ。ね?」
『えっ!?』
「おぉそうか、よかったな!」
無邪気に笑う松本と、そそくさと自分の机から教科書を持ち出してきた一之倉。何だか全部噛み合ってない気がして切ない……
「はい、どーぞ」
『あっ、ありがとう

「どーした?」
『見てこれ』
教科書裏側、名前の欄。
一之倉聡
「え?なんで?」
『わかんない……
そこにわざとらしく貼られた付箋。嫌な予感しかしないのにの開いてしまったのは何故?後悔してももう遅い。そこには挑発的な彼からのメッセージが丁寧に綴られてあった。
【松本は渡さないよ】
は!?何よこれ!!
「あははっ!!やるねぇ、アイツ!」
脳内にチラつくフッと嗤った得意気な顔を消すように頭を左右に振る。
もう回りくどいことはしない。

『一之倉、これありがとう』
「どういたしまして」
『ご丁寧なメッセージありがとう』
「見てくれてよかったよ」
『あからさまだったからね。それで決めたの。私もうまわりくどいことしないから』
そう宣言すると、ふーんと楽しそうに綺麗な弧を描いた唇。
『一之倉って松本のこと好きだよねー』
「当たり前でしょ」
間髪入れず返ってきた返事にさすが一之倉と感服してしまう。
『松本は?』
強引に話を振ると、松本は額を押さえながら「……お前ら何言ってんだよ」とため息混じりに漏らした。そのくせ「まぁ好きだけどな」と真面目に答えてくれる。そういうところが松本らしくて、思わず一之倉と顔を見合わせ笑ってしまった。
『じゃあさ、私のことは?』
机の上に両手をついて乗り出す形で問いかける。
まぁダメもとだけど。
「なっ!?えっ?夢野!?」
徐々に赤みを増していく痩けた頬。
これ、もしかしてもしかする?
『うん、そう、私』
「いや、それは、そのえっと……
「もう。松本はっきりしなよ」
今まで私の邪魔ばかりしてきた一之倉が、松本の煮えきらない態度に痺れを切らせたように言う。
『一之倉?』
夢野はいい女だよ。ねっ?」
『は?』
聞き間違いかと思った。だってずっと牽制されてたから。
松本に近づく為にオレを使わなかった子は初めてだからね
耳元で内緒話のように囁かれ、咄嗟に耳を塞ぐも鼓膜を揺らした低い声に心臓が跳ねた。
『なっ、何!?近い!!』
「なぁ、一之倉は夢野のことが好きなのか?」
眉間に皺を刻んで険しい表情の松本。それとは対照的に、一之倉は普段は切れ長で涼し気な瞳を大きくさせて驚いたあと、いつものように笑った。
「オレはね、松本が好きだよ」
『もぉ!やっぱりライバルじゃんかぁ!』
「どういうことだよ?」
『私も一之倉も松本が好きってことでしょ!鈍感なんだから!』
「なっえっ?いや、ちょちょっと待ってくれ」
あたふたする松本に追い打ちをかけるように一之倉が言う。

さぁ、どっちを選ぶ?