茶ツキ
2025-01-20 19:45:45
5560文字
Public CP無
 

すまスクももたろパロ物語

CP無しド健全文です。我が子の寝かし付けで披露した即興朗読劇を文字に起こしたもの。

 昔々あるところに、すまない先生とミスターブラックがサバイバルをしていました。
 ある日のこと。すまない先生は山へ芝刈りに、そして川へ洗濯にも行きました。
すまない先生が川で洗濯をしていると、川上から大きな桃がどんぶらこ、どんぶらこと流れてきました。
「おお、これは! 大きくて美味しそうな桃! いただきます!!」
 すまない先生はそう言ってその場で桃を食べ始めました。
 するとその桃の中から、元気な男の赤ん坊が誕生したのです。
「えええっ!? な、なんか、桃の中から赤ちゃんが出てきたんだけど!?」
 驚いたすまない先生は、その赤ん坊をミスターブラックの待つ拠点へと連れ帰りました。
 そして先程のことを説明し、ミスターブラックへ意見を求めました。
「すまない先生。桃から人の赤ん坊なんて生まれません。非科学的です。嘘はやめてください」
 しかしミスターブラックはキッパリとそう言い、信じてくれませんでした。

 すまない先生は「うーん、本当なんだけどなあー」としょんぼりしてしまいましたが、赤ん坊をそのままにはしておけないので、このままサバイバルをしながら育てることにしました。
 桃から生まれたので名前は桃太郎がいいかと考えていたところ、その赤ん坊は急に立ち上がりました。
「俺の名前は、ミスター赤ちゃんだ!」
 さらには喋りだし、自分の名前まで教えてくれたのです。
 これにはミスターブラックも驚いてミスター赤ちゃんのことをよく観察しました。見たところ一歳にも満たない赤ん坊でしたが、自分で立って歩くことも、会話も出来るようです。
「よろしくミスター赤ちゃん! その成長スピードなら、あと数ヶ月前もすれば立派な大人になってそうだね!」
 すまない先生はそう言ってミスター赤ちゃんと握手をし、共にサバイバルをしていく仲間として彼を歓迎しました。

 ミスター赤ちゃんは頭こそ悪いものの、その腕っぷしは熊にも負けない程でした。ところが、彼はどんなにたくさん食べても、ぐっすり眠っても、いつまで経っても全く大きくならなかったのです。
「どうやらミスター赤ちゃんの体は、一切の成長がストップしているようです」
 ミスターブラックが直接調べてみたところ、ミスター赤ちゃんは永遠に大人になれない体質であることが分かりました。
 それを気の毒に思ったすまない先生は、ふと、ここから数km先に離れた地に存在する、鬼が居ると噂される島のことを思い出しました。
「よし、ミスター赤ちゃん! これから鬼ヶ島へ行って、何でも願いを一つかなえてくれるという伝説の宝玉を手に入れてくるんだ! それを使えば、きっと君も大人になれるだろう!」
 そして、ミスター赤ちゃんへ試練とも呼べる課題を与えるのでした。
「よく分かんねーけど、分かったぜ!」
 ミスター赤ちゃんはそう言って、お弁当として渡されたきび団子を持って、出掛けていきました。

 ミスター赤ちゃんが鬼ヶ島へ向かっていると、よく一緒に遊んでいる犬のミスター銀さん、猿のミスターマネー、バナナのミスターバナナが彼を見付けて駆け寄って来ました。
「ミスター赤ちゃん、どこ行くんだ?」
 ミスター銀さんが尋ねると、ミスター赤ちゃんは「ちょっと鬼ヶ島に行くんだ!」と元気よく答えました。
「ええっ!? そんなちょっとコンビニ行くみたいなノリで行くところじゃねーだろ! 何しに行くんだよ」
 間髪入れずにミスター銀さんはそう指摘しつつさらに尋ねましたが、ミスター赤ちゃんはよく分かっていません。というか用事も忘れているようです。
「ハァーッ! 鬼ヶ島といえば、なんでも願いを叶えてくれるという伝説の宝玉があるとされているが」
 ミスターマネーがそう言うと、ミスター赤ちゃんも思い出したようにそうだそれだと頷きました。
「だが、鬼ヶ島は文字通り鬼の居る島だ。そんな裸同然の姿で行くのは危険すぎる」
 ミスターバナナも先のミスター銀さんの指摘を補うようにミスター赤ちゃんへ忠告しました。
 するとミスター銀さんは「じゃあ俺達もついて行ってやるよ!」と自分達が仲間になることを提案しました。しかしミスターマネーがすぐさま「勿論、タダでとはいかないがな」と付け足します。
 ミスター赤ちゃんは「お、一緒に来てくれるのか!?」と喜びましたが、自分は一銭も持っていません。ミスター銀さんは「別になくても仲間になるけどな」と優しく言いましたが、ビジネスに関しては特に煩いミスターマネーがそれを許しませんでした。
「ところでミスター赤ちゃん、その手に持っているのは何だ」
 ミスターバナナがミスター赤ちゃんの手に握られた袋を指差してみると、彼は思い出したようにそれを開きました。
「そうだそうだ、弁当にきび団子を持たされてんだった! こいつで仲間になってくれるか?」
 袋の中から取り出したきび団子をひとつずつ三人へ渡すと、ミスターマネーも「いいだろう」と了承しました。しかしミスターマネーはそのきび団子を一口食べた瞬間、腹痛を起こした上にあらゆる状態異常にかかって気絶してしまいました。
 ミスター赤ちゃんは「何でだあ!?」と驚きましたが、実はこのきび団子はミスターブラックが作ったクソマズ闇団子だったのです。
 しかしミスターマネーが気絶している間に、ミスターバナナが美味しいきび団子を作ってくれました。意識を取り戻した後記憶をやや失っていた彼に改めてそれを渡すことで、問題なく三人を仲間にすることが出来ました。

 そして一行はついに鬼ヶ島へやってきました。
 そこでは赤鬼のミスターレッド&青鬼のミスターブルーの兄弟がゲームをして遊んでいました。
 ミスター赤ちゃん達に気が付くと、弟のミスターブルーが寄ってきて話し掛けます。
「何だ何だ、お客さんか? 鬼ヶ島に一体何の用だ?」
 鬼とは思えない優しい応対でした。
「客か……だりぃ……
 一方で兄のミスターレッドは、面倒くさそうにゴロゴロしています。
 二人共、全く敵意はありませんでした。
「用は━━━……! 何だっけ?」
 しかしミスター赤ちゃんは、ここにきた理由をすっかり忘れていました。
「おいィィイ!! 宝玉を取りに来たんだろ!?」
 その横でミスター銀さんがすかさずツッコみます。
「宝玉って……ああ、あれのことか。別に持ってっていいけど」
 ミスターブルーはそう言いました。
「なんだその言い方は。まるで価値がないもののようだが」
 しかしミスターブルーの許可の仕方がまるで不用品に対するもののようだったので、ミスターバナナが本当にこちらの狙いの宝玉のことを言っているのかと疑います。
「あれは兄貴がどこかの賊が持ってたのを盗んできちまった物なんだけど、俺らには使い方も価値も分かんなくてさ。あそこでただ飾ってるだけなんだ」
 ミスターブルーが指差した先では、光り輝く玉が岩の隙間に挟むように置かれていました。
「間違いない。あれは本物の、伝説の宝玉だ」
 宝石に詳しいミスターマネーは、そう言いました。
 目的の宝玉があると分かったのは良いですが、その宝玉までの道のりはマグマが敷き詰められ、一応通れるような足場はあるものの、とても難しいアスレチックになっているではありませんか。
「よっしゃあ! なら、俺が速攻取ってきてやるぜ!」
 ミスター赤ちゃんは威勢よく飛び出しましたが、アスレチックに辿り着く前にカチリと何かを踏むと、そのまま爆発に巻き込まれて倒れてしまいました。
「赤ちゃんーっ!?」
「ああ。言い忘れてたけど、あそこトラップも結構張ってあるんだよな」
「いやそれもっと早く言って!!」
 暢気なミスターブルーにミスター銀さんがツッコミを入れます。

 さて、そこからが大変でした。二番手で意気揚々と向かったミスターマネーはアスレチックの第一関門へ挑む辺りであっさりと脱落。ミスター銀さんも半分程は頑張って攻略しましたがやはり鬼畜アスレチックにより脱落。ミスターバナナは宝玉の手前まで尽力しましたが、最後に張り巡らされた初見殺し的なトラップにより脱落。
 なんとミスター赤ちゃんチーム、全滅してしまったのです。
「なんか、可哀想になってきたな」
 マグマで黒焦げになって倒れる皆を見て、ミスターブルーは気の毒に思いました。このアスレチックは運動神経に自信のある自分でも少し難しいものでした。宝玉のところまでは行けても、それを抱えて戻ってくるとなるとまた難易度は跳ね上がります。
 アスレチックは鬼ヶ島に元々設置されていたもので、攻略出来るのはこの場には一人しかいません。
「おい兄貴。あの宝玉、とってきてやってくれないか?」
「あ? 何で俺が。面倒くせぇ」
 それがミスターレッドです。彼の運動神経は弟よりもさらに優れていて、この鬼畜アスレチックを金庫代わりに使えてしまう希少な鬼でした。
 しかし、極度の怠け者。自分に興味もメリットもなければ、そう簡単に立ち上がってくれません。
「なあお前ら、何か兄貴をやる気にさせるアイテムとか持ってねーか?」
 ミスターブルーはミスター赤ちゃんに尋ねましたが、ほぼ身一つでここに来たのでミスターレッドの喜びそうなものなんて持っていません。
「きび団子くらいしかねーぞ」
「きび団子かぁ……。食い物なら辛いものが好きなんだけど」
「なら、こいつでどうだ」
 すると、ミスターバナナは持っていた唐辛子の粉の入ったビンをミスター赤ちゃんへ渡しました。
「なるほど! こいつで辛いきび団子を作ればいいんだな!」
 そしてそのビンの中身を一本丸ごときび団子の入った袋の中へぶっ掛けたのでした。
「おいィィイ!? 掛け過ぎだろ赤ちゃん!」
「そうか? おいミスターマネー、ちょっと味見してくれ」
「何を言っ……ゴホぁ!!」
 ミスターマネーの口にきび団子を放り込むと、彼は火を吹くとまた気絶してしまいました。
「やっぱ辛過ぎるんじゃねーか!」とミスター銀さんは心配しましたが、「いや、いけるかもしれねえ」とミスターブルーは確信します。そしてミスターレッドの元に受け取ったきび団子をひとつ持っていきました。
「兄貴、これどうだ?」
「ん? ………こいつはうめーな。もっとないのか?」
「やったぜ、兄貴が食い付いたぞ!」
「マジかよ。どうなってんだあいつの味覚」

 やる気を出したミスターレッドはついに立ち上がると、アスレチックに向かいました。
 そして彼はアスレチックを華麗に攻略━━━は、することなく、このアスレチックに度々存在する抜け道的なものを上手く利用し、所謂ズル攻略であっさりと宝玉を手にして戻ってきたのでした。
「ってそんなんアリかよっ!?」
 ミスター銀さんが思わずツッコみますが、「攻略出来りゃ何でもいいだろうが」とミスターレッドは怠そうに言い返します。
 まあそれはともかく宝玉は手に入ったので、報酬として激辛きび団子は残りも全て渡しておきました。
「よっしゃー! そんじゃ、すまない先生達のところに帰るぜ!」
 こうしてミスター赤ちゃんの鬼ヶ島への旅は、無事終了したのでした。

 帰宅してすぐ、すまない先生達が出迎えてくれました。
「おかえりミスター赤ちゃん! 本当に伝説の宝玉を手に入れてきたんだね!」
「ああ! で、こいつをどうするんだ?」
 ミスター赤ちゃんはすまない先生に宝玉を渡しましたが、これはミスターブルー曰く使い方も価値も分からなかった物です。一体どうすれば願いが叶うというのでしょうか。
「実はこれ……あと6個必要なんだよね!」
「何だと!?」
 願いを叶えるには全部で7個必要だという事実に、何故か脳裏に「掴もうぜ」という歌詞から始まるアップテンポな音楽が流れ始めました。
 しかしなんということでしょう。苦労して手にした宝玉でしたが、まだあと6個も足りていないというのです。
 すると、そこへミスターブラックが愛用のパソコンを持って宝玉に近寄りました。
「それについてはご安心を。私がチートコマンドを駆使すれば━━━カチカチカチ」
 ミスターブラックがそう言ってパソコンをひと弄りすると、宝玉がコピーされたかのように7個に増えたのでした。
 果たしてこれで良いのか疑問でしたが、なんと宝玉の輝きはさらに増し、巨大な蛇が現れたのです。
「こ、こいつが願いを叶えてくれるってのか?!」
 ミスター赤ちゃんが尋ねると、蛇は「その通りだ。何でも一つ叶えてやろう」と肯定します。
「じゃあ言うぜ! 俺の願いは━━━」

「ああーっすまないっ!!!」

………へ?」
「あ」
 しかし次の瞬間、すまない先生は剣で蛇をぶった斬り倒してしまいました。「僕、蛇嫌いなんだよね!!」と、そんな理由でした。
「ちょいちょいちょいすまない先生!! 何やってくれちゃってんですか!! 俺今せっかく、ミルク1年分を頼もうとしたのに!」
「いやー、すまない。蛇がそこにいたものだから。蛇はね、⚫️さなきゃならない存在なんだよ」
どことなく黒い笑顔を浮かべたすまない先生とお怒りモードのミスター赤ちゃんは言い争いを始めました。そんな二人を眺めながら、ミスターブラックは溜息を一つ。
「てか、願い事をミルク1年分にしちゃダメでしょう」
 ミスター赤ちゃんが今後成長出来るように宝玉を持ってこせたはずなのに、彼はまるで覚えていないようでした。というか、初めから分かっていなかったのでしょう。
 まあなんやかんやで、彼は彼なりに幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。