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chiri_onigiri
2025-01-20 12:37:38
1385文字
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玑灵
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もしもの話
「もしも俺が女の子になっていたらどうしてた?」
突然そんな馬鹿げたことを尋ねてくる宣璣に盛霊淵はゆっくり瞬きを返した。
場所はベッドの中。さあ寝ようと布団を捲った瞬間の問いかけは、まるで寝物語を強請る子供のように純粋な声色をしていた。
「なぜ?」
意図が読めなかった盛霊淵が尋ね返すと宣璣はスマホの画面を見せてくる。そこには「前世の親友が絶世の美女になって、えちおね風に迫ってくるんですが〜目が覚めたら三千年経っていました〜」と書かれた電子書籍の表紙が表示されていた。盛霊淵が最近得た知識が正しければ、「ギャルゲー風」に描かれたイラスト付きだ。嫋やかに微笑む黒髪の女性と彼女に迫られている赤髪の男性が主役なのだろう。
盛霊淵はそれをまじまじと見つめ、宣璣が全話購入していることに気がつくと僅かに目を眇めた。昔から奇想天外な物語を思いつくとは思っていたが、今やこういう物語を好むようになったのか。
「もし、もしさ。俺がナイスバディなお色気ムンムンな女の子になっていて、それで霊淵と再会していたらって考えて」
「ふむ」
歌うように語る宣璣を頭の天辺からゆっくりと見下ろして顎を撫でる。盛霊淵が思うに、宣璣はそこまで肉感的な女性にはならない気がした。
戦闘時に鋭く煌めく瞳はくりくりとした杏眼になり、薄紅色に染まった肉の少ない頬は丸みを帯びて、長い睫毛の影が落ちている。伏せ気味だったそれが盛霊淵に気がつくと星が瞬くようにパッと輝き、甘く蕩けた。そうして小鹿のように長く細い華奢な脚であっという間に二人の距離を詰めると、「霊淵哥哥!」と勢いよく抱きついてくるものだから、咄嗟に腕を伸ばして抱き留めた盛霊淵の胸板に控えめながらも柔らかい膨らみが
……
「俺が思うに霊淵はスレンダー美女になると思うな。でも脱いだらすごい!みたいな
……
」
なるほど。それなら宣璣ももっと肉感的でもいいのかもしれない。いや、宣璣ならば豊かであろうと控えめであろうとその美しさは損なわれるどころか、より輝くだろう。そもそも魂が宣璣のものであれば、見た目はどう足掻いても美しくなるに決まっている。今の姿も盛霊淵が想像していたよりも遥かに美しかったのだ。盛霊淵の脳内で想像することなど不可能なほど美しくその命の光を放っているに違いない。
「ああ
……
でも霊淵が女の子になっちゃったらライバルだらけになっちゃう。老若男女狼になっちゃうだろうから一人で出歩かせられないかも」
それを言うなら、宣璣の方が危険だ。彼はそのくるくると変わる表情で周囲の人間を魅了する。盛霊淵もその愛嬌に何度心癒され、胸をときめかせたか。背中で羽ばたく翼も相まって、まるで天使のように
……
「小璣は女人になっても翼を出すと服を破るつもりか?」
「えっ
……
さあ、どうだろう。俺だって破りたくて破ってるわけじゃ
……
まあ、そこは変わらないんじゃないか」
「危険だ」
「なにが?」
今でさえ骨張った肩甲骨がチラチラと見え隠れする度、女性局員たちが熱い視線を送っている様子が見られるのだ。女人となった宣璣が同じことをしてしまえば
……
!
「小璣。お前は今のままで十分美しい」
「さっきからずっと表情変わってないし、また俺の話聞き流してるのかなって思ってたんだけど、もしかして霊淵の脳内で壮大ななにかが繰り広げられてたりした?」
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