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倉木
2025-01-18 19:29:00
4830文字
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他🐢
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RL+JD
Batman×TMNT 赤青ペア
一応RLよりですがほぼ+です
身に漂う甘い匂いはふわふわしたクリームを纏ったように漂っている。
こんなことになったのは初めてで、レオナルドはなんだか変な気分だった。
上着に沁みついているのか自分の身体なのか、自分の手首を嗅ぐレオナルドの横で朗らかな会話が聞こえる。
「仕事の途中だったのだろう?わざわざ案内してくれてありがとう、バーバラ」
「こちらこそ。鼠と亀を案内することなんて今後ないと思うもの、いい経験になったわ」
心なしか足取りの軽いスプリンターに、軽やかな笑いを返す女性は以前見かけた黒いコスチュームとは違い、ベージュ色のジャケットにジーンズと普段通りの恰好をしていた。
そんな彼女が歩くのが良く似合う街並みのど真ん中。
レオナルドの良く知るニューヨークよりはどこか閑散としているように感じられたが、それは今まで案内された道から今まで人通りが全くなかったせいだ。
レオナルドも見た目上あまり公には出たくない、バーバラが事前に人払いをしてくれたらしい。
正確には彼女の父親の計らいらしいが、バーバラはそれ以上は教えてくれなかった。
「たまには甘えてみせないと父親って拗ねちゃうんだもの」
それだけ言って笑うのみだ。
バットマンと次元を超えて交流するようになってからレオナルドの興味は専ら彼の行う経験豊富は体術とそれに準ずる仲間との鍛錬ばかり。
見かねたスプリンターがバーバラと共に誘いをかけ、渋々ながら外に出たものの日の出ているうちから外を歩き、彼女のおすすめと言うカフェにいるとは案外悪くなかった。
レオナルドはいつになく穏やかな時間を過ごし、少しだけ気分が高揚した状態で拠点となる場所に戻ってきた。
日が陰る地下を抜け、レオナルドは途中でふたりと別れることにする。
「では、修練所に行ってきます」
「くれぐれも無理はしないように」
「ディックも後から行くって言ってたわよ」
笑顔で手を振るふたりから別れ、レオナルドは複雑な道筋を描くバットケイブ内である程度把握した道を移動する。
少しでも覚えていないところに行こうものなら迷宮入りは必死、それで収まればいいが侵入者向けのトラップだって存在している。
ある程度のものであれば避けられる自負がレオナルドにはあるが、折角仕掛けた罠を自分のせいで稼働させるのは流石に申し訳がなかった。
何度か訪れているバットマン所有の鍛錬場は広さも頑丈さもレオナルドが良く使うところより数倍も優れていた。
疑似的に作られた障害物にはじまり、仮想で作られた敵を相手にすることもできる(この点についてはレオナルドよりドナテロの方がずっと興味津々になっていた)。
それに何よりバットマンを含む戦闘経験豊富な仲間と手合わせする機会も増えたのがレオナルドより何よりも僥倖だった。
自分や父とはまた違うスタイルを取る相手と相対するのは勉強にもなり刺激にもなる。
彼との時空を行き来するようになり、各々活動する家族の中でレオナルドの居場所は専らこの場所だった。
ようやく着いた場所でしかし、防音な筈の修練場の向こうから地響きに近い振動が走った。
レオナルドが重厚な扉を開くと同時、轟いた爆音とともに吹きつけた硝煙で目の前が真っ暗になる。
礫が目に入りそうになり手で覆いつつ、やがて開けてきた視界に最初に映ったのは地面に横たわる弟の姿だった。
「ラフ!」
激突したらしい壁には大きな凹みがあり、パラパラとまだ破片が落ちてきている。
呻き声をあげながら起き上がろうとしているが地面についた手はずるりと滑り叶わない。
レオナルドが駆け寄るより先、ラファエロの前に人ひとり分の影が落ちる。
右手に見えた銃器が真っすぐ彼に向けられたのを見た瞬間、レオナルドは背の武器に手をかけ走り出した。
「やめろっ!!」
撃鉄が落ちる直前刀身によって弾かれた銃口が跳ね上がる。
天井を撃ち抜いた銃弾はめり込み黒い穴を開けた。
降りぬいた踵は後ろに飛んだ相手に届かないず、体勢を整えた男が再度銃口を向けた先はレオナルドに。
トリガーに引っ掛かった指が飛び出す瞬間、蒼い閃光から伸びた腕が凶悪な手を握り捻りあげた。
「やりすぎだジェイソン!」
明後日の方に向いた腕を痛む様子もなく、相対した赤の男は怒鳴られても気にした様子はない。
その隙にようやくラファエロの前に辿り着いたレオナルドは後頭部に手を差し込み助け起こした。
目立った出血はないようだが衝撃が効いているのだろう、吐く息は苦しそうだ。
「本番通りにってオーダーしたのはソイツだろ、なぁ?」
赤い覆面の男は顔が見えずともわかるくらい大げさな仕草で笑った。
ジェイソンと呼ばれた男は初めて次元が交差した時に確か共闘したことがあったのは記憶している。
しかしレオナルドが何回か此処に訪れるようになってからは顔を合わせることが無かった。
いないことに誰かが口を出すこともなかったし、あまり気にもしていなかったのが本音だ。
まさかこんなことになるとは思わず、レオナルドは傷ついた弟に代わり背の高い男を睨みつける。
言い返すよりも早くレオナルドを押しのけたのは力強い腕だった。
荒い息の中相手を見上げるラファエロの目は爛々と輝いている。
「ああ、全力で相手しろって言ったのは俺の方だからわるかねぇよ」
「そういうことだ。親切で優しい兄貴が煩いからな、俺の勝ちってことで終わりにしてやるよ」
勝ち誇ったように言い捨て、ジェイソンは握られていた手を振り払うと銃をホルスターにしまう。
ラファエロはまだ何か言いかけていたがその口を塞いで止めた、手合わせにしてはやりすぎなのは事実。
眼光鋭くなったラファエロの視線を静かに受け止めると、ラファエロは迸っていた殺気を消した。
一応は納得してくれたらしい。
レオナルドは隣の男、ディックと顔を見合わせ、互いにこれ以上の戦いはないのだと判断する。
「じゃあな、ちゃんと手当してやれよオニーチャン」
「ジェイっ!おい待て!」
大股で去っていくジェイソンを追いかけていくディックは一瞬だけこちらを向いたが、すぐに背を向けて後を追った。
静寂が訪れた修練場で改めてラファエロを診る。
「大丈夫か?怪我は」
一度振り払われた腕を再度握り直し脈を計るが少し早い以外に気になるところはない。
うっすらとした目でレオナルドを見ていたラファエロは、やがて静かにその眼を閉じた。
本来であれば昏倒してもおかしくない衝撃だったのだろうが、意地で起きていたのだろう。
仰向けだと首が後ろに倒れ過ぎてしまうから、横に倒して腕を投げ出す体制にする。
少しだけ落ち着いた呼吸音とは別、近付いてくる足音はひとり分。
思わず武器を構え振り向いたレオナルドはすぐにその体勢を解いた。
戻ってきたディックの手に持っているのは救急箱だ、気を利かせて持ってきてくれたのだろう。
「本当にすまないね、もっと早く止めるべきだった。大丈夫かい?」
「気絶してるだけだ、しばらくは動かさない方がいいと思う」
簡易版というには随分と手厚い救護道具からところどころできた擦り傷を治療した。
部屋の隅にある足の短い簡易ベッド(最初は何故こんなところにあるのかと思っていたのだがようやく用途を理解した)にディックと一緒にラファエロを寝かせると、僅かに動いた身体はその中でも瞳が開くことはない。
その前に座り込んだレオナルドは、ちらりと隣で壁に佇む青年に目を向ける。
視線にすぐ気付いたらしいディックは、人懐こい笑みを浮かべた。
「なんだか熱烈な目を感じたからね。何か話したいことでもあるのかなと思って」
そう言ってウインクされるとレオナルドは思わず顔を赤くした。
「そんなつもりでは
……
ただ、ちょっと聞きたいことがあって」
成人男性にしては身の引き締まった身体は、ブルースとはまた違うしなやかな身体つきをしている。
人間とは本来空を飛べないものだ。
しかし重力等ないかのように空を翔ける様は飛翔と呼んでも大差ないと言えるくらい大胆で軽やかだ。
ブルースとは離れヒーロー業をしているらしいカレにレオナルドはどうしても聞きたいことがあった。
「ひとりだちというのは、どういうものだろうか
…
」
レオナルドは兄弟がいて、大事な父親がいる。
見た目こそ一般的な人とは違うものだし暮らしもまた奇抜に映るだろうが家族を思う気持ちは人と同じかむしろそれ以上であると自負していた。
ひとりで行動することはあれど還る場所にはいつも家族がいる、そこからひとりになるということを全く思ったことがないわけじゃなかった。
他の兄弟達に比べレオナルドはあまり人付き合いが得意ではない。
兄弟達が形成していく家族以外のコミュニティ、それ等を見ているといつかひとりになることもあるのだろう、そんな漠然とした未来をレオナルドは予期していた。
漠然とした不安となっていたのだろう、口に出た問いは思ったよりも切実な声色となってしまった。
そのせいか口元に手をあて、真剣に悩んだ様子のディックにレオナルドの方が焦ってしまう。
「あ、いや
…
すまない、忘れて欲しい」
いくら気の許した相手とはいえ不躾すぎたかもしれない、レオナルドはこういった相手の気持ちの起伏を計るのがどうにも苦手だった。
しかし慌てるレオナルドをよそにディックは穏やかに首を振った。
「ひとりだちって言ってもチームで活動することも多いし、ブルースとは良く協力しているからね。最近ははねっかえりの弟分ができて大忙しさ」
そう苦笑しているディックの表情は困った口調に反し随分と嬉しそうだった。
そういえば彼はブルースたちとは違い別のヒーローチームでもリーダーを務めることもあるという、複数のチームを掛け持ちするなんてレオナルドにとっては想像もつかない。
目の前の兄弟達を守るだけで精一杯だ。
「だからレオの言うひとりだち、というのがひとりで生きていくということなら答えられるものはないかな。ジェイなら何か言えるかもしれないよ。まだどこかにいるだろうし呼んでこようか」
「いや、十分だ。ありがとう」
最近奇特な運命で触れ合うようになった相手であっても、彼等の事は良く知らない。
しかし先ほどのふたりの様子からもレオナルド達兄弟の関係とはまた違う複雑さを垣間見えた。
それにラファエロをここまで傷つけた相手にすぐに頭を下げて請う気持ちは流石になれない。
「ああでも、僕等にはひとつ大事な共通点があるよ。レオナルド」
レオナルドと違い細く長い5本の指。
うっすらと傷痕の残る指先がレオナルドの頬を飛び越え、指先を彩るのは青い。
「青ってやっぱりかっこいいと思うんだ。オシャレのセンスがあるよ」
青と黒を纏った青年の言葉に、レオナルドもまた小さく笑いを零した。
そんな時コンコン、と言う音と背にちょっとした衝撃が走る。
叩かれた後ろを振り向くと、うっすらと目を開いたラファエロがレオナルドを見ていた。
「
……
どっか行く予定でもあんのか」
震える瞼からまだ本調子ではないのだろう、そんな中紡がれた言葉は低く、そして細やかなものだ。
睨みつけるとも等しい目つきに、レオナルドは労わるよう頭に手を乗せる。
「行かないよ、ずっとみんなと一緒だ」
自分よりも体温の高い頭は力強く振られて逃げられた。
そうかよ、と聞こえた声は随分と小さなもので、背けた顔と同じ方向に身体の向きも変わる。
レオナルドから背を向けたが、剥き出しの首元はうっすらと赤くなっているように見えた。
「仲が良いね、うちもこれくらいみんな素直だといいんだけど」
笑い交じりの声に被せるように大きく響いた咳払い。
レオナルドはディックと顔を見合わせつい笑い声を零してしまったのだった。
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