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倉木
2025-01-17 20:34:52
4868文字
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他🐢
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MD+DT
Batman×TMNT 末っ子×ジーニアス
一応MDよりですがほぼ+です
ひんやりと冷たい筈の無機質な機械は、今はほんのりと熱を持っていた。
それはドナテロが何度も触れているせいでもあり、過負荷が続いた回路が限界を越え始めたせいでもある。
けたたましく鳴り響いたエラー音はつんざくように耳に響き、ドナテロは思わず持っていたレンチを置いて耳を塞ぐ。
同じく耳を塞ぎつつスイッチに踵を振り下ろした青年によってエリア内は静寂を取り戻した。
「また失敗か。理論は合ってる筈なのに、おかしい」
耳にかかる黒髪をかきあげ、そのままかきむしる。
目の前に映し出されたモニタには今まで組み立てた複雑だけど洗練された回路。
その中で爆発マークが浮かんでいるのは全部で18カ所だ。
「どこかで見落としがあるんだろうね。ティム、もう一回やってみよう」
手前の回路に手を伸ばしたドナテロに代わり、反対側に回ったティムはまるで示し合わせたかのようだった。
お互い効率を考えた最善で動いているからこそだ。
こういったことは兄弟とはまた違う心地よさでドナテロはつい顔がにやけるのがやめられなかった。
「何か楽しいことでもあった?」
不思議そうな顔に浮かんだ大きな瞳がドナテロを捉える。
「同じレベルで動ける人と作業できる楽しさを噛み締めただけだよ。あと、やっぱり設備が整っていると凄く楽しい」
メインシステムと違い仮想環境でテストする為のエリアに充てがわれたエリアは、ドナテロの家の広間よりもずっと広い。
壊れてもいいと言われているシステムもドナテロの知識にはない最新鋭揃い。
次元の共有はしない方がいいと言われている以上それならずっとここにいたい、ドナテロの科学者としての本能がそう告げていた。
そんなドナテロの熱意が伝わったのだろう、ドナテロのものより一回り小さいレンチをくるりと回したティムは穏やかに首を振る。
「科学者は頭脳だけじゃ何もできない、万全の設備を整えるには潤沢な金がいる。僕も最初は驚いたし神にだって感謝したさ。でも、あるもの『だけ』で最善を作る方が難しいのは科学者なら誰だって知りえるところだよ。だから君はすごいと思う、ドナテロ」
突然の誉め言葉に不意打ちで頬が熱くなる。
まだ出会って日が浅いが、ティムは皮肉はあれど称賛を惜しまない性格であり信頼できる人間だ。
それゆえにその言葉に嘘がないことが理解できる。
褒められたことがないわけではないが、同じ技術を武器とする立場の相手から褒められるのは、またちょっと違った気恥ずかしさを覚えた。
お陰で手が滑ってレンチが手元を滑り落ち、回線と響いて火花を立てた。
「早く終わらせようか、あまり時間もないし」
慌てて回路を確認するドナテロに、ティムはそう告げて小さな頭が機械の向こうに消えた。
至るところで配線が剥き出しになっている機械はメインモニタに映し出されているシルエットと同じ形。
先程の爆弾マークがひとつ消えるのが見える、機械の向こうでティムが修復をかけたらしい。
ドナテロはゴーグルをかけると同じく機材に向かった。
奇しくも深い縁となったバットマンの世界を行き来するようになってそれなりに経つが、滞在時間はバットマンが定めた時間内を厳守するよう言われていた。
当初次元の負荷により身体に負担がかかったこともあり、万が一があってはいけないからだ。
しかしいる間はそれなりに自由が許されており、回数を重ねるごとに兄弟は各々別行動になった(外は危険だから誰かと同伴必須だと言われた時ラファエロはそれはそれは嫌な顔をしていたけれど)。
そしてその限られた時間でドナテロが行っていることと言えば、ブルースの装備品や設備を吟味することに時間のほとんどを使っていた。
街ひとつ守る為のテクノロジーは初めてみた時からドナテロの興味を引いて止まず、その内容は日に日に増幅していって衰えを知らない。
「今どれくらい終わった?」
「あと3つ」
キラキラとした目でそれらを見ていたドナテロに共同製作を持ちかけてきたのがこのティモシー・ドレイクだった。
ブルースが仲間だと紹介された中では小柄な方である彼は、実際筋力の話でからかわれたもの。
「別に何でもかんでも装備にこだわらなきゃいけないわけじゃないよ、直感で動かなきゃいけないことはたくさんある」
「でも、備えられるなら備えておいて損はない、だろ?」
そう言って笑ったティムにファーストインプレッションで、この人とは気が合いそうだと思ったのだ。
それはティムも同じであったと思う。
気が付けばお互い作業や議論に没頭し、気を遣ってアルフレッドが置いていったマグカップから湯気が消え、冷え切って時間切れでそのまま片付けられる。
ここにいる時間は時間軸すら違うのでは?そう思えるくらいにドナテロは短く感じた。
「よし、これで最後だ」
最後のネジを締めて起き上がるとティムは既にメインモニタの前に立っていた。
複雑なボタン操作をドナテロは隣で眺める、先に着手していた分最後の仕上げはティムの仕事だ。
「じゃあ、押すね」
ドナテロが頷くとティムはボタンを押した。
作業エリアの半分を侵食する球体はエリアの中央に置かれていた。
管でつなげられた鋼の球体は大型トラックをゆうに飲み込むくらいには大きく、そんな個体が僅かに動く。
孵化前の卵のように揺れ、ゆっくりと宙に浮かび上がった。
重力に反した球は上部についていたケーブルが取り外され、更に上に昇っていく。
固唾をのんで見守る中、それは唐突に動きを止めた。
ずん、と重たい音を立てて地面に沈んだ球体はフェール装置が働き再度ケーブルに繋がれた。
試行錯誤を初めていた機器も完成まであと1%、その最後が越えられないもどかしさ。
「
…
少し休もうか」
溜息交じりに呟かれた言葉に、ドナテロもまた頷く。
装置からすぐ傍に置かれていたテーブルには軽食一式が取り揃えられていた。
いつのまに整えられていたのかわからない。
「マイキーとダミアンはまだ帰ってこないね」
手前にあったチーズビスケットを齧りながらドナテロは時計を見た。
帰りの時間まではあと1時間ほど。
ドナテロと違って好奇心旺盛な弟の興味関心は、外に向けられていた。
ブルースも一緒だったからまさか時間に遅れるなんてことはないだろうが、何かと騒ぎを起こすミケランジェロは早めに確保しておくに越したことはない。
「どうせなにか問題でも起こしてんだろ」
どこか棘のある言い方をしながら、ティムはすました顔でアルフレッド手製のエッグタルトを頬張っていた。
ドナテロと彼はまだ会って日が浅い。
ドナテロ達同様それなりに彼等とて色々と問題を抱えているのだと思うが、あまり首を突っ込み過ぎるのは無粋と思う。
「ティムはダミアンと仲悪いの?」
でも、やっぱり気になるには気になるわけで。
素直な疑問にティムが苦虫を噛み潰した顔を返した。
「だってあいつ生意気なんだよ、見てたらわかるだろ」
力が入ったのかタルトの端が零れテーブルに転がる。
ティムはそれを丁寧にナプキンで拭きとり、横に置いた。
「可愛げのひとつでもあればご褒美にキャンディのひとつでもくれてやるさ」
そう思わない?ティムの目はそう同意を促していてドナテロは苦笑いを浮かべるほかない。
確かに初めて会った時から何かと暴言を吐いてラファエロを怒らせていた。
しかしそれは何かと熱くなりやすいラファエロのせいでもあるし、どちらかと言えばミケランジェロ相手に辟易してるのを良く見る気がする。
ミケランジェロからしてみたら新しい友達ができて嬉しくてしょうがないのだろう、今日とて迷惑そうな顔をしているダミアンを引っ張って出て行ったのだから。
ミケランジェロがいつも楽しそうにしているし、帰ってくるといつもぐったりとした様子なダミアンを見ているとどうにも悪い子には見えない。
「憎まれっ子世にはばかる、ってことかな」
「なにそれ」
「遠い国の格言だよ」
しかしティムの様子を見るにそれだけではないようだ。
もう少し話を聞きたいとドナテロが口を開いた時、唐突に機械が悲鳴を上げた。
立て続けに響いた音に動き出した球体。
手に持っていた食料をテーブルに叩きつけ機械に飛びつくと、同じく移動していたティムと肩がぶつかった。
ケーブルの外れた球体は宙に浮き、ゆらゆらと揺れている。
ゆっくりとした調子で回転した球体が地面に掠ることなく、180度回転しやがて止まった。
地面から浮いてる高さは推定5cm、初期位置が地面と隣接していて動作が成功すると表にくるようになっていた蝙蝠のマークがはっきりとドナテロの目に映っていた。
メインモニタにはオールグリーンの画面、今までエラーを吐き続けていたとは思えない。
一瞬の後、ティムとドナテロは顔を見合わせ両手を合わせ歓声を上げた。
「やった!!でもなんで動き出したんだ!?ドナテロ何かした?」
「まさか!あの時僕の手に握られていたのはチェダーチーズのクラッカーだけだよ!」
「だよね、じゃあどうして」
ティムが続こうとした言葉は重厚な音にかき消された。
否、それから続く騒がしい声の合唱に全て持っていかれたと言っても過言ではない。
「ほらちゃんと捕まってないと落ちちゃうよ!」
「いいからおろせってんだよバカ!!」
「足怪我してるんだから大人しくしててよね、痛いの痛いのとんでけーってしてあげようか?」
「いらねぇ!!なんでガキに子ども扱いされなきゃいけねぇんだよ!!」
肩に担がれた少年のばたつかせた足がガンガンと甲羅を蹴っているが、ミケランジェロは全く気にした様子もない。
細い足首からは白い包帯が見えた、きっと簡易的にブルースが応急処置をしたものなのだろう(ミケランジェロだったら多分もっと巻き方が汚い)。
「
…
はぁ、まったく」
隣で呟いた声。
溜息を吐いて立ち上がったティムは迷いなくぎゃあぎゃあと煩い彼等に向かっていった。
「油断は命取りだって何度もブルースが言ってただろ」
「ちげぇ!こいつが勝手に飛び出したのが悪いんだよ!」
「それはいっつもお前がやってることだよ」
軽口の応酬はどことなく既視感があった。
ミケランジェロの肩口で騒ぐ相手に何か言い聞かせているがミケランジェロの声とトリオは聞き取るのは難しい。
それよりも、目の前の機械よりも優先している後姿に、大事な友人の優しさと慈愛が垣間見えて、思わず笑みが零れた。
ドナテロは装置の電源を落とす、どうせすぐに戻ってくることはないだろう。
遅れて近づくと、暴れるダミアンに叩かれているミケランジェロの頬に赤い汚れが見えた。
「マイキーじっとしてて」
手を伸ばして拭うと血だと思っていたものはトマトソースだった。
そういえば鉄臭い匂いもしないし、特に怪我をしたわけでもないようだ。
それなら良かったと息を吐いたところで、目を輝かせたミケランジェロと視線が合わさる。
星空が浮かぶ大きな瞳にあ、まずいと思ったのが最後、気が付いたら重たい衝撃とともに地面から足が浮いた。
ふたり分の体重を受け止めた床はずん、と重たい音を立てる。
「うわぁっ
…
!いったぁ!!」
「~~~てめぇマイキー!勝手なことばっかすんな!」
ミケランジェロがとびついた時に弾き飛ばされたらしいダミアンに巻き込まれたティムも同じように地面に転がっている。
文句を言われている筈の弟はドナテロに飛びついたまま、随分と嬉しそうにすり寄ってきていた。
心配されたのが嬉しかったらしい、懐く姿は猫みたいに可愛いのに図体が何も可愛くない。
そんな時扉の奥から現れた黒衣と執事服を着た男が現れる。
「仲が良くて何よりですな」
目の前の光景にぴたりと動きを止めたブルースに代わり、執事の朗らかな声に怒声が返ったのは言うまでもない。
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