ようこそお越しくださいました。もう少ししたら、主人の元までご案内させていただきます。それまではこちらの部屋でおくつろぎください。何か不自由がございましたら、私にお申し付けください。
……申し訳ありません。時間通りにお越しいただいたのに。その、前のゲストが少々部屋を汚してしまいまして。その後始末に手間取っております。
それに関わることでもあるのですが、お時間まで少々お話をさせていただいてもよろしいですか。
退屈凌ぎの余興とでも、思っていただければ良いのです。手品師のあなたが見せるプロの技と比べれば、こんなもの余興にもならないことはわかっております。
我々の主人は、あまり外に出ない生活をしておりまして、人と話すことに慣れておりません。世間知らず故に、少し子供っぽいところが残っております。
少し前に、余興の芸人として異国の蛇使いを招きました。彼は我らが主人の瞳の色を、蛇のようだと言いました。
……。
無礼でしょう?
彼にしたら褒め言葉だったようです。蛇を扱う者ですからね。主人もそれを喜ばしく感じているようだったので、私たちは咎めませんでした。
しかし、その一言で我らの主人は蛇に想い入れてしまったようなのです。芸の最中に、その蛇たちが苛まれたり戦わせたりされていることに、大層心を痛めました。
やめてほしいと嘆いたのですが、蛇使いはそれを金持ち特有の悪趣味ではしゃいでいるのだと解釈した。彼は蛇を殺して見せました。
その結果、どうなったと思います?
そこの敷物を見てください。蛇柄の立派な敷物です。蛇でないところは、件の蛇使いの革です。どうにも趣味も悪いし使い心地もイマイチなので、遠からず捨てることなるとは思いますが。
改めて、重要な話をお伝えさせていただきます。
我々の主人は、世慣れておらず繊細で子供らしいところのあるお方です。
あなたも、よくよく気をつけてくださいね。
どうか、悪戯に驚かせたり傷つけたりしないと約束してください。
私たちも、部屋の掃除を何度も掃除したくはありませんから。
よろしいですか。ああ、ようやく前のゲストが片付いたようです。
それでは、ご案内いたします。
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