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くこ
2025-01-17 04:38:15
3382文字
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勇者パーティー(王最)
https://privatter.net/p/3626432
王最ワンドロを勝手にやっていこう企画
総統はRPG得意そうだよねって
「しばらくその画面だけど、どうしたのそれ」
3人はゆうに腰掛けられるソファへ身を沈めた王馬が、ホットミルクをすすりながら、さして興味もなさそうに問う。その態度を気にした様子もない最原が、ああ、と答えた。
「七海さんに借りたゲームだよ。初心者におすすめ、って言われたんだけど
……
」
そこで最原は眉を下げた。
初心者におすすめ、とはいえ、超高校級のゲーマーである七海視点である。たしかに、チュートリアルが丁寧で、あまりゲームに触れてこなかった最原でも、ストーリーを進めることが出来ていた。しかし、中盤、途端に敵の体力ゲージが増えたタイミングで、ろくに探索も出来なくなり、敵へ挑んではゲームオーバーになってしまっている。その繰り返しに少し嫌気が差してしまい、ゲーム中のミニゲームばかりをクリアしているというわけだ。
いつぞやに参加していた恋愛番組でも、時折カジノへ足を運んでいた最原は、シンプルなゲームは昔から好んでよくやっている。いわゆる、ポーカー、スロット、ルーレット、そのあたりの単純な駆け引きや運を要求されるものは、不得意でもないと自負している。
一方、電子ゲームと称せばよいのであろうか、ゲームセンターにあるような、はたまた、家庭用ゲーム機で出来るようなゲームは、それらと比べると、ルールが複雑に感じてしまう。日進月歩、切磋琢磨している業界の努力の賜物で、なるほどよく考えられているな、と、唸るギミックや仕様も多い。それはそれでおもしろいのだが、こうして詰まってしまうときなどは、まどろっこしい気持ちにもなってしまう。
尋ねた王馬は、ふぅん、と、これまた興味がなさそうに返す。自分から問いかけてきたわりに、と、思わないでもないが、二人でいるときの王馬小吉は、いつもこんなものである。クラスメイトたちといるときと比べると、まるで別人かと思うくらいに、静かだ。もちろん、同じか、それ以上にうるさいときもあるが。
テレビに映ったミニゲームも、ちょうどキリの良いタイミングだったので、最原はセーブをしてそのRPGを切り上げることにした。ゲームの主目的は少しも進まなかったが、かといって、また、その苦行に戻る気分にはなれなかった。
「クリアする気あるの?」
「え?
……
うーん。どうかな。せっかくおすすめしてもらったから、クリアしたい気持ちはあるけど」
最原が言葉を濁す。敵の一撃で瀕死になってしまう仲間たちを、何度も見るというのも、それはそれで精神的に良いものでもない。
「オレが続きやってあげようか?」
「続き
……
って、このデータでやるってこと? 最初からやらないと、仕様とかわからなくない?」
「なんとなく見てたからだいじょうぶ」
最原がゲームをしていた時間すべて、とまでは言えないが、ほとんどは横目で見ていた。古典的ゲームより複雑とはいえ、さほど難しくもない、一般的なRPGのつくりである。
王馬が返すと、「じゃあ」と、最原がコントローラーを手渡した。
これがセンスの差なのだろうか、最原はあっけにとられながら、まるで見違えた画面の中の勇者パーティーを見つめた。
時間にすると、30分程度であろうか。そんなに経っていないようにも思う。その倍以上の時間、パーティーを全滅寸前まで追い詰めることしか出来なかった自身を思い出し、いったい何が起きたのだ、と、しげしげとステータス画面を眺める。
いや、起きたこと
……
というか、王馬がやっていた作業は、横で見ていた。本を読みながらではあったので、細かいところまで把握していないが。
特別なことはしていなかった、ように思う。最原がプレイしていたときと、同じような動きをしていたはずだ。レベル上げかな、と、思った記憶はある。ただ、敵を倒さないと、経験値がもらえない仕様だ。瀕死になって逃げてばかりだった最原は、ろくに経験値を稼ぐことが出来ていなかった。来た道を戻って、パーティーレベルより弱い敵を倒し、こつこつと経験値を貯めるのが正道と気づきながらも、面倒で、少しそれをやったきりになっていた。
「どうやったの?」
何か効率的な攻略法でも編み出したのかと、最原が問いかける。画面は、次のボス直前まで来ていた。
「最原ちゃんが面倒くさがってたことを、やっただけだよ」
「前の街に戻ったの?」
「まあ、そんなかんじ」
しかしそれだけで、あんなに手こずっていた敵が、こうも簡単に倒せるようになるものだろうか。
顔を見て、何を考えているか、すぐさま読み取った王馬が、呆れたようなため息をついた。
「ゲームって性格出るよねー」
「
……
どういう意味だよ」
明らかに誉められていない言い方に、むっ、と最原が王馬を見やる。
そのままの意味、と、視線も返さず王馬が答えた。
ボス戦前に、解説をしてやることにする。
「まず、装備ね。弱すぎ。いやわかるよ? 敵が倒せないから金もなくて買えなかった、ってことは。にしても、換金するなり、やりようはあるでしょ」
「だって、ほとんど数値変わらなかったし
……
」
もごもご、と反論する最原に、王馬が装備画面を開いて見せる。変更前の装備と比較することができるので、わざわざ、それも開いてやる。
たしかに、数字は2、3しか変わらない。それでも、実戦においては、馬鹿に出来ない差があるのだが。それを差し引いても、決定的に異なるのが、耐性である。
「知ってた? 敵の攻撃に属性があるの」
「お、覚えてるよ。火とか水とかあって、互いに相性があるんだよ」
「そう、それね。物理攻撃にもあるのは理解してる?」
「え?」
「ここ、武器のとこ、斬撃とか打撃とか書いてあるでしょ。これにも相性があんの。このへんの敵は防御タイプで、打撃系しか効かないことが多い。多少数字が落ちたとしても、こっちの方が攻撃が通るんだよ」
「な、なるほど
……
」
たしかに、敵によって数字が変わるな、とは思っていたが、それはランダム性によるものかと思っていた。今までは、大きな優位がなかったのである。
「それと、数字を平均に寄せすぎ。なんのためにパーティー組んでると思ってるんだよ。一撃死さえしなければ、僧侶役に回復させればいいんだから、一番いい防具はタンクか僧侶に渡しなよ」
さいあく僧侶は蘇生もできるんだから、と続ける。な、なるほど。またしても最原は頷くことしか出来ない。
「パラメータ振りも同じね。主人公はともかく、仲間のやつは特化させた方がいいでしょ。器用貧乏が多くても、戦いには勝てないんだよ」
「なんか、バランス悪いと、きもちわるくて
……
」
ついつい、足りない数値に割り振ってしまっていた最原は、もはや口を挟むことを諦めかけていた。
性格が出る、たしかに、そうかもしれない。
「ま、最原ちゃんらしい甘々育成だったとも言える」
「だって、こんないきなり旅に出されて
……
よくしてあげたいじゃないか
……
」
もし自分だったら、と置き換えると、ぜったいに魔王を倒す旅になど出たくない。最原は首を横に振った。
「なら、ちゃんと勝てる策を与えてあげないとねー」
言いながら、王馬が、キャラを動かして中ボスへ話しかける。
前回のボスに、最原は数十分単位で悪戦苦闘していた記憶があるが、なんと、王馬の育てたパーティーは、10分足らずで難なく倒してしまった。魔道士が耐性解除魔術を使い、戦士が力を溜め、タンクがパーティーの前に立ち、僧侶が強化魔術をかける。同じようなことを最原もやっていたはずだが、それよりも迷いがなく、「これぞ連携プレイ」と手を叩きたくなる華麗さだった。
バフもデバフも重ねがけされたボスは、あっけなく地に沈んだ。
「これでしばらくは負けないでしょ。はいバトンタッチ」
「あ
……
ありがとう」
コントローラーを再度王馬から受け取り、最原が気の抜けたお礼をする。
ふんと鼻を鳴らした王馬が、べろりと首筋を舐め上げた。
「っ!!???」
「お礼は体でいいよ☆」
「あ、後出しはダメだろっ
……
むぐ」
文句を言う最原の口を、王馬の口が塞ぐ。
まったく、どこまでが総統の掌の上なのか。思いながらも、悪い気はしないので、最原はコントローラーを置いた。
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