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マエバ・セイボスキー
2025-01-16 22:52:12
1789文字
Public
パーバソ
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モブ農夫ですが、領主様が悪魔と噂の海賊準男爵と結婚したようです
2024/1/12インテ無配
モブ視点。パーバソになろう!
本名上山田芳子(46)、女性向け二次創作を楽しむ元気な独身女。
最近の悩みと言えば、そろそろ家を買って猫でも飼うかと考えているコトくらいの幸せな日々。
些か体重と肝機能は気になるけれど、健康面もいたって問題ない。終活はまだ遠い、はず、だった。
それがあっさりと死んだらしい。
階段から落ちる瞬間、あ、終わったと目を瞑り、目が醒めると見覚えのない高い天井があった。
コレっていわゆる流行の異世界転生、どこの悪女かヒロインかと鏡を見ると、そこにはどうみても五十がらみの立派なおっさんがいた。
あたりを見回す。木製の大きな歯車と、山と積まれた麻袋。じわじわと記憶が蘇る。ここは、粉挽きの風車の中だ。
自分がしがない農民ロベルト(独身)であることを思い出す。昨晩、領主様の婚約パーティが開かれ、盛大に飲んだくれてここに転がったのだ。
そうだ、ここは生前推していたBL小説の中だ。
それも、メインカプには全く絡まないモブ領土。本編にちらっと出てくるのが、ここの領主様だ。
描写も殆どない、巨躯の白い槍使いということしか印象がない。
領主、どんな人物だったか。農民の自分が悪感情は抱いていないようだから良い領主なのだろう。
ファンブックに故郷で婚約者と結婚、とだけ書いてあったような気はする。
昨晩領主様もその婚約者とも会っているはずだが、記憶が靄がかっている。飲み過ぎだ。
重たい頭でのろのろと外にでる。陽射しが黄色い。
丘の上に朝日が差し込んで、まるで海原のようにきらきらと輝いていた。
唐突に記憶が蘇る。領主様の婚約者。海賊だ。
いや、そんなことある?あるんだよな、昨日大々的に紹介なさっていた。
こんなモブ領土で、本編にほぼ関わらない領主様の婚約者を海賊にすることがあるだろうか。
情報量が多過ぎではないか。私の死後スピンオフがでているのかもしれない。読みたかった。
すごい馴れそめがあるはずに違いない。谷に囲まれ海からは遠いこの地と海賊が出会うなんて、それだけでドラマにならないわけがない。
ぐっと背筋を伸ばし、丘を眺める。そうすると、徐々に記憶が復活してきた。
灰色の立派な毛皮を着た領主様の隣に立つ、健康的な肌をした美しい
……
青年。
やっぱりBL小説だこれ。絶対スピンオフだ。
彼はクセの強い髪をなで付け、領主様の隣で艶やかに微笑んでいた。
黒い髪は上品に波打ち、たっぷりとしたひだの柔らかなドレスシャツ。
胸元には先代の奥様も結婚式につけてらした気品溢れるルビーのペンダント。長い指には目映いブルーダイヤが煌めいていた。
面映ゆそうに、領主様に寄り添う姿はとてもお似合いだった。
領主様の伴侶を見つめる瞳といったらもう
……
!
はちみつよりも甘やかなその視線は、とろけるとはまさにこのことだろう。
愛おしいという気持ちが、眼差しから滴るようだった。
それを見た私は、今まで独り領地経営を行い戦争に行き、孤独に戦っている心優しい領主様に連れ合いが出来たことが本当に嬉しく、
泣きながら酒を飲んだのだった。早くに先代様を亡くし、ご立派になりあそばした領主様を、幼い頃からこのロベルトは影ながら見守って──
「ロベルト!」
丘の上から清々しい声がする。私ははっと顔を上げた。
そこには、愛馬に跨がる領主様の姿。黄金色の朝日に彩られ、まばゆく光り輝いている。
「昨日はありがとう!」
手を振る彼の胸の中には、照れくさそうに微笑む奥方様(?)がいる。
「これから彼に私たちの街を案内に行くんだ」
それは良い、ここは豊かな街だ、きっと気に入ってくださる。
そう言えば、領主様は嬉しそうに笑う。彼のこんな無邪気な笑顔を見るのは随分と久しぶりだ。
「君も、顔を洗って早く城へ。残り物だが、昨日のプディングを配っているから」
それじゃあ行こうかバート、と。領主様は春の陽射しより柔らかく笑った。
年のせいか涙もろくていけない。
良かった、本当に。あの海賊は悪魔とかなんとか前評判だった気もするけれど、
領主様があんな風に笑うのであれば相応しい相手に決まっている。
私は胸がいっぱいになりながら、去って行く二人の後ろ姿にいつまでも古びたキャスケット帽を振るのだった。
終
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