三毛田
2025-01-16 13:41:56
4170文字
Public 穹丹
 

年の初めの独占欲は

第1回穹丹ドロライ企画
お題:【正月】【はじめて】

 カウントダウンの後、ちょっと遠くで花火の音。
「丹恒、あけましておめでとうございます」
「ああ、おめでとう。今年もよろしく、穹」
「よろしく!」
 まだ除夜の鐘の鳴る境内。
 甘酒の入った紙コップを両手で持ち、丹恒は頭を下げる。
 ちゃんと防寒対策をして、二人で二年参り。
 お参りを終え、二人で甘酒を飲む時間。他の人々は思い思いに話しているのが耳に入っては、すぐに消える。
 俺的に、丹恒と過ごすのが一番大切だから。
『穹、丹恒。出かけても構わないけど、ちゃんと朝ご飯は食べに来るのよ?』
 年越しそばを食べ終え、神社に行ってくると言った俺たちに姫子が。
 姫子を除くみんなで作ったり、買いそろえたおせち。
 材料を切って入れて、後は火を入れるだけのお雑煮が待っている。
『三人にはお年玉を用意してある。なのかには、まだナイショだ』
 と言いながら、俺と丹恒の財布のお札を小銭に変えてくれたヨウおじちゃん。
「この甘酒は美味いな」
「だね。丹恒、おみくじはどうする?」
「人が多い。後日、空いている日にみんなで来た時に引こう」
「なるほど。俺、初詣って初めてだからさ。作法とかある?」
 こそっと訊ねると、ちょっと首を傾げ。
「いや。聞いたことはないな」
「じゃあ、姫子とヨウおじちゃんに聞いてみよっか」
「そうだな。そうした方が、確かだろう」
「甘酒飲み終えたら、帰る?」
「帰ろうか」
 甘酒を零さぬよう気をつけながら、端に寄り。
 二人で、今年の目標をぽつぽつ話し合いながら甘酒を飲み切る。
 俺は、カフカのところにいた以前の記憶はない。
 そして、その頃も初詣に行ったこともなく。
『宗教上の理由ね』
 訊ねたら、そうバッサリ斬られた。
 まあ、行かなくても困らなかったから気にしてなかったし。
「穹、帰ろう」
「うん。丹恒、手」
 紙コップをごみ箱に入れ、手を差し出す。
 人の流れに若干逆らいつつ、境内を抜け、鳥居をくぐり、公道へ。
 神社へ向かう人とすれ違う。
「コンビニ寄る?」
「どうした。眠いのか」
「ちょっと。何か食べてから、コーヒー飲みたい」
「そうだな。甘酒で少々温まったが、まだ寒い。俺も何か買おう」
 神社から離れたというか、そこから最寄りのコンビニを探し、二人で入る。
 時間が時間なので、商品数は少ない気が。まあ、仕方ない。
「これ」
「後は、コーヒーか」
「ココアも良いなって思う」
「お前はそちらの方がいいだろうな」
「で、丹恒は?」
 かごの中を覗き込むと、おにぎりが三つ。
「丹恒?」
 顔を見ると、ぐぅと音が。
 笑いそうになったのを堪え、固まってしまった丹恒の手からかごを奪って会計。
 俺はココア。丹恒にはコーヒー。紙コップを受け取り、サーバーにセットしてスイッチを押す。
「きゅう」
 心細そうな声。というか、恥ずかしそうな小さな声で俺を呼んで。
「はい、これ」
「ありがとう」
 紙コップに蓋をして、外に出る。
「丹恒、お腹空いたんだ」
「駄目か」
「ううん。まあ、お蕎麦って、すぐおかな空くよ。いただきます」
 追加したおにぎりの包装を外し、かぶりつく。
 温めてもらったので、美味しい。
「いただきます」
「いただきます」
 丹恒も袋からおにぎりを出して、もそもそと食べ始め。
 小さな口で、もそもそと食べる姿が結構好きだったりする。
 大きく口を開けて食べる姿も好きだけど。
 コンビニ前で静かに食べて、飲み物も飲んでから歩き出す。
「お年玉、何に使う?」
「貯めておこうとは思っている」
「偉いな~。俺は、買いたいゲームにちょっと足したいかな」
「それでいいと思う。どう使うかは、個人の自由だ」
「そっかぁ」
 丹恒に言われると、それでいいのか。って納得できてしまう。
 彼の言葉には、そんな力がある。
「丹恒」
「どうした?」
「一緒にいられる間は、一緒にいたい。いいか?」
「それは」
 急にそんなこと言われても、困るよなぁ。
 断られるのを覚悟で告げたんだ。断ってくれて構わない。
「答えはすぐにくれなくていい。丹恒の中で、色々まとまったらでいいんだ」
「すまない」
「謝らなくていいよ。難しい話だ」
 俺は、できることなら自分が死ぬその瞬間まで彼と一緒にいたい。
 そんなわがまま。
 姫子とヨウおじちゃんは、気づいている。だから、たまに釘を刺される。
『穹。あまり自分の考えを押し付けては駄目よ? 相手の意見を尊重しないと』
『そうだな。考えは、人それぞれだ。生死観も、だ』
 若干色々なことを見透かされた気も。
 まあ、二人とも俺より大人だから。
 手を差し出すと、そっと重ねられ。
 二人で夜道を歩く。
 もっと知り合いに会うかと思ったが、そうでもなくて。
「知り合いに会わなくてよかった」
「そう?」
「お前と一緒にいられるのは嬉しいが、あまり見られたくない」
「えー。俺は、丹恒と一緒にいるのを見せびらかしたい。お前は、俺のだって」
「こら」
 舌を出すも、丹恒はちょっと怒った顔。
 彼が思うよりも、俺は独占欲が強いんだ。でも、それは表に出さない。
 けど、丹恒を狙う奴らに牽制するくらいは許されるよな?
「ただいまぁ」
「ただいま」
 みんな寝てる様子なので、静かに入って手洗いうがい。
 それから、部屋に行って上着を脱ぐ。
「丹恒、眠れる?」
「体が温まっているから、このまま眠れそうだ」
「じゃ、一緒に寝よう」
 実は、俺のベッドはダブルベッドなのだ。だから、いつでも丹恒と二人で眠れる。
「ああ、いいぞ」
 寝間着に着替えた丹恒は、先に寝転がった俺の横に潜り込んできて。
 抱きしめようと、そろそろと背中に腕を回すと抱きしめ返してくれる。
「抱きしめるなら、抱きしめろ」
「はい」
 抱きしめると、心臓の鼓動が伝わってきた。
「好き」
「俺も好きだ」
 温もりと、その言葉で泣きそうになる。
「丹恒は、俺を喜ばせる天才だ」
 肩に顔を埋め、泣きそうなのを悟られないように。
 でも、ポンポンと優しく背中を撫でられてポロッと涙が。
「穹、寝よう」
「うん、寝よう」
 キスをして、眠るために目をつぶり。
……
……
 アラームが聞こえ、目を覚ます。
「二人ともおはよ! そろそろ朝ご飯だって!」
 ドアの向こうで、なのの声。
 丹恒の顔を覗き込むも、まだ寝ていて。
「丹恒、ご飯だって」
「ん……
 今日は眠りが深いのか、逆に浅いのか小さく唸って。
「みんなに挨拶しないと」
「も、あさ?」
「うん、朝」
「おきる……
 舌足らずな声で、起き上がろうとする。でも、俺の腕が背中に回っているのですぐに起き上がれずに睨んできた。
「きゅう」
「ごめんって。丹恒がすぐに起きるとは思わなかったから」
「おきるっていった」
「そうだったな。ごめんごめん」
 腕をどかすと、起き上がって伸びをして。
「おはよう」
「ああ、おはよう」
 体を倒して、何をするのかと思ったキスしてくれた。
「わぁお」
「なんだその声は」
 呆れたように言われてしまった。でも、仕方ない。
 丹恒からキスされるとは思わなかったから。
「それじゃあ、ご飯食べに行こうか」
「ああ」
 とりあえず顔を洗ってから、ダイニングキッチンへ。
「おはよう、みんな!」
「おはようございます」
「おはよー!」
「手伝わなくて悪い」
「ううん。いつもより早く起きたから、用意しただけ。姫子に触らせたくなかったから」
 俺たちの前に来て、コソコソと。
 その姿に、俺たちは苦笑するだけ。
「さ、二人とも。座ってご飯にしましょう」
 促され、いつもの席に。
「それじゃあ、食べる前に。明けましておめでとう。今年もよろしく」
「明けましておめでとう。今年もよろしくね」
「「「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」」」
「それじゃあ、いただきます」
「いただきます!」
「いただきます」
「いっただきま~す!」
 お雑煮、おせちと順番に食べていく。
「う~ん。美味しい!」
「ああ、美味いな」
「美味しいわ。来年は、私も手伝うわよ?」
「姫子はいつも仕事で頑張ってるんだから、料理は任せて!」
「そうだよ! まだ学生の俺たちが、出来ることはやりたいんだ」
「そう?」
「ああ。姫子さんは、こうして俺たちの面倒を見てくれている。それだけでも十分だ」
「そう言われると照れるわ」
 箸を置いて、照れたように口を手で隠す姫子。
 うん。何とか誤魔化せた。
「そうだ。三人とも。これを」
 ご飯を食べ終え、片付けているとヨウおじちゃんから封筒を渡される。
「ポチ袋じゃないんだ」
「新札だったから、折り畳むのがもったいなくて」
「ありがたくいただきます」
「ほら、丹恒も」
「あ、ありがとうございます」
「なのか」
「ありがとう、ヨウおじちゃん!」
「ふふ。みんな、よかったわね。こっちは私からよ」
 ヨウおじちゃんよりも厚い封筒を渡され、丹恒と二人で引く。
「二人とも?」
「姫子もありがとう!」
 なのは素直に喜んでいる。その純真さが羨ましい。
「今日はゆっくりするの?」
「俺と丹恒はゆっくりする予定」
「ウチも家に居ようかな~。福袋を買いに行こうにも、混んでるし」
 と、頬に指を当てて。
「じゃあ、俺たちは部屋に行くんで!」
 丹恒の手を取って、部屋に戻る。
「穹」
「あそこにいたら、余計な事まで口走りそうだったから」
「そうかもな。こら。シャツに手をかけるな」
 貰った封筒を机に置き、丹恒のシャツの裾に手をかける。でも、怒られた。
……元旦は、そういうことをしない方がいいと聞いている」
「じゃあ、明日」
 首に顔を埋めてそこにキス。
 キスマークもつけちゃう。
「こら」
「じゃあ、俺にもつけていいよ」
 襟を開けると、若干躊躇いを見せつつキスマークをつけてくれ。
「ふふ」
「嬉しそうだな」
「丹恒がキスマークをつけてくれたのが、嬉しかったんだ」
「そうか」
「丹恒は嬉しくない?」
「悪くはない」
 そっぽを向いて答える彼の耳は、赤く染まっていた。