表紙:魅帆様
今年の最高記録を更新する暑さが、窓一枚で隔てられていた。窓の外、向こう通りまで一直線に伸びる環状道路には逃げ水が見える。
クーラーの効いた部屋の中で、ぱちぱちとキーを叩く音だけが響く。署内の空調は一括管理のため、ドラルクにとっては少し冷え過ぎのきらいがあった。衣替えを超えると今夏は直ぐに訪れて、皆サマーシャツに着替えていく中ドラルクだけは今尚長袖のシャツのままで、少し冷えた肩をさする。
不意に、鍵が開けっぱなしの背後の窓がガラリと開けられた。中の冷気が溢れ出て、代わりになだれ込んだ熱気が背中を温める。
「ドラ公~」
次いで聞き慣れた声が響く。今日はこちらからか、と顔を上げ、声色からして涼みに来たであろう彼に、冷たいカルピスでも入れてやろうかと立ち上がり、ゆっくりと振り向いた。
「ロナルド君、暑かったんじゃない? おいで。今飲みも
……」
「あっちいー!」
じゅわ、とキッチンでよく耳にするような、肉が焼けるような音がして、ドラルクの鼻先に気配臭ではない、香ばしく、それでいて不快な匂いが掠めた。ロナルドはいてて、と膝でも擦りむいた時にするようにして、腕にふうふうと息を吹きかけて冷まそうとしている。
「
…………それ、」
ドラルクは目を剥いて、言葉を失った。何故なら、匂いを発しているのは、ロナルドの肉体だったからだ。ちょうど昨日、体を重ねた後に、手ずから清めた身体だった。白磁のような肌に、散らした痕をぬるま湯で温めて、柔らかいタオルで撫でて汗を落とした滑らかな肌の感触を覚えている。その腕や、顔がまるで火事現場にでも飛び込んだかのような、火傷を負っていた。
「すげぇ! なんでこんなシンヨコってあっついんだ? はぁ、ここ涼しいなぁ」
その焼け爛れは、額や頬、首周りなど広範囲に渡り、今なお煙すら上げていた。よく見なくとも、ドレスシャツには血が滲んでいる。服の下にも目に見えるほどの傷が広がっているだろうに、不死の吸血鬼は平然といつもの如く陽射しのような笑顔をドラルクに向けた。
「はー! めっちゃ焼けちまったー。ちょっと天気良すぎて流石に痛ぇ
……あ、ドラ公! 俺かるぴす? ってやつ飲みたい!
……ドラ公?」
「
……っっバカかああああああ!」
「ひんっ」
署に響きわたん限りのドラルクの声に、軽く宙に浮いてロナルドは身を縮こませた。
「今すぐ病院だバカ!」
「えっ、えっ」
「いや応急処置か?
……しかしこんな熱傷の処置など
……ええい、すぐVRC行くぞ!」
「隊長、どうしました?
……あら、ロナルドさん
……ちょっと
……痛そうですね」
声を聞きつけて顔を出した希美は、口元に手を当てて、ロナルドの惨状とドラルクの慌ただしさで全てを理解した。
「希美君、氷嚢持ってきてくれ! あと、私今からVRC行ってくるから!」
「えっ、あ、あのっ、待ってドラ公?」
「待たん!」
行くぞ、とドラルクはロナルドの手を取る。ドラルクの血相と、思いの外強い力に引っ張られたことに驚いて、ロナルドはそのまま引き摺られる様にVRCへと直行した。
「人間で言えば、重度の熱傷ではありますけれど
……きちんと血液を接種して十分冷やせば、痕も残らなそうですね」
他にも言いたいことがあるだろう研究員は、それでもドラルクの「余計なことはしなくていい」という一言を忠実に守って、一応の処置と塗布薬を処方した。明日には治る、と言いかけたロナルドを一瞥して、ドラルクは薬を受け取り、ロナルドに補給として血液を飲ませる。ロナルドが血液を飲み干すのを見て、そして意識的に直様それを身体回復に回し新しい皮膚を再生させるのを確認したが、今日中に全身の赤みは取れそうもない。
帰りの車中でドラルクは終始無言で、「今日はこのまま自宅に戻る」とまで電話して、本当に直帰した。後部座席に乗ったロナルドは、窓から降り注ぐ日差しを避けるために身体を小さく畳み俯いていた。
確かに、長らく太陽光を浴びると、死なないとはいえ熱傷を負うことを確認していなかったことは、職務怠慢にも思える。しかしそれよりも、そんなことよりも、ロナルドを見て最初に浮かんだのは、焦燥と憤怒だった。
マンションの地下駐車場に入って、ロナルドがおずおずと畳んだ体を伸ばして車外に出たところで、すぐにその手を取る。部屋までずっと、ドラルクはいつもより熱い手を掴んでいた。
玄関に入って、ドラルクはいつもならば綺麗に揃えるはずの靴も揃えずにリビングに向かって、部屋の真ん中でロナルドの手を漸く開放した。何も言わずに電気とエアコンをつけて、手を洗って。ロナルドもそれにならって、言われる前に手を洗って再びリビングに戻ってくる。ドラルクがネクタイを弛め、上着をソファーにかけたところで空いた手が、今度はロナルドに掴まれた。
「あ、あの
……びっくりさせて、ごめん」
「
……」
再び、ゆっくりとドラルクはロナルドへ振り返って、視線を向ける。ロナルドはう、と言葉を詰まらせた。一歩後退して離れそうになる前に、くる、と掴まれた手を返して逆に腕を掴んだことで、ロナルドの足は止まる。そのまま引き寄せて、真っ赤な痕が広がるロナルドの腕を持ち上げ、きっと視線を鋭くした。
「
……どうして言わなかったの」
「え、えっと
……忘れてた」
「
…………」
淡々として冷たいドラルクの声色にびくびくとしながら、ロナルドはしょぼくれ、俯きながら、ちらちらとこちらを伺っている。でも、とか、だって、と口から出そうになるのを堪えているのだろう。
「
……ごめん」
「
……はあ
……」
ドラルクが溜息を吐きながら、空いた手でがしがしと頭を掻き乱した。ロナルドがもう一度、ごめん、と呟く。その下瞼から涙が溢れそうになるのが見えて、ドラルクは手袋を外しテーブルに置いてから、親指の腹で涙を拭った。触れた肌からは普段よりも随分と高い体温が伝わってくる。VRCで検温した時は、確か人間と同じくらいの体温になっていた。
「
……ドラ公
……?」
まるで地図か何かのように身体中に火傷痕を残すほどの怪我をしても、ロナルドが気にかけるのはドラルクの機嫌だけだ。以前はそれすら無かったので、マシなのかもしれないが。
「
……怒ってないのか?」
「君に対して怒ってたわけじゃないよ。ただ少し、驚いただけ」
涙を拭った手で赤い頬を撫でると、ロナルドは猫のように顔を擦り付けて来る。
不死であるロナルドは、怪我や損傷が自らの死に繋がらないことを誰より嫌がっておきながら、それに甘んじる悪癖がある。そんなロナルドの生き方について、ドラルクは言いたいことが、山ほどあった。
「
……薬塗るから、お風呂入ろうね」
ドラルクは、それを今全て伝えることはしない。この吸血鬼を愛してから、いつだってそうしてきたように。
「ふは、くすぐったいっ」
ソファーの上にタオルを敷き、その上に裸のままのロナルドを座らせ、身体中に薬を塗布していった。風呂に入れさせて確認したが、赤い痕は残っているものの爛れや出血は全くなくなり、確かにほとんど治癒し薄い皮膚がしっかりと再生しているのが分かった。ただ、再生途中の皮膚は薄い分敏感なようで、先ほどからロナルドは薬を塗るたびにくすぐったさに身を捩って逃げてしまうので、作業が一向に進まない。
「こら、動くんじゃない」
「んふ、だって、あはっ」
「こら、反省してるのか」
「してるよお、ふふ、あはは」
だってくすぐったいんだ。そう答えて、ロナルドはくると振り返った。その顔にもまだら模様のように赤みが残っている。まだ半分も終えてないというのに、ロナルドはすっかりドラルクが許してくれたのだと気を緩めている。
「ごめんな、ドラ公。そんな顔しないでほしい」
ちゅ、とロナルドの方から唇を寄せてくる。薬臭い幼いキスは、まるで子どもの駄々をあやすようなそれで、ドラルクは眉根を顰めた。実際にドラルクの方がロナルドよりも随分と年下なのは事実ではあるが、納得がいかない。
「でもなあ、どうしよう」
「何が?」
「夏の間、昼間は外に出られねえなぁって」
「
……ああ」
一応、どうすべきかをロナルドなりに考えていたことに、ほんの少し溜飲を下げておく。ロナルドの生活リズムは、今や殆どドラルクに合わせられていた。ドラルクも基本夜型の生活を強いられる仕事であるため、日中眠ることが多い。太陽の下でも活動できるとはいえ、ロナルドも吸血鬼なので基本は夜の行動を主としている。夜間であれば一緒に来た仲間たちもいるため、基本的に昼間はドラルクと一緒に寝ることが多くなっていた。
しかしどうやらロナルドは、新横浜に来る以前から太陽が平気であるという特質故に、昼も夜もお構いなしに、好きな時に活動していたのだそうだ。その生活から得られたのは、昼の時間帯に起こるものに対する好奇心だ。今日ほど日差しの強くなかった日はドラルクが寝ている間に時々外出をしており、まさかこんな大火傷をしてくることがなかったので放っておいたところ、今やロナルドはご近所でおこなわれる朝の奉仕活動にまで参加しているらしい。隣の老夫婦やら、十階の遊び友達(小学四年生男子)の母親から貰ってきたというお菓子に、そういえば、まだお礼のケーキを焼いていないので、時間がある時にやらないとなあ、とドラルクは頭の中でタスクを一つ追加しておいた。
「
……夏は火傷すること、今までもあったの」
「あった。けどすぐ治るから気にしてなかった」
「
……」
「でも、ドラ公がそんな顔するから、やめるって
……ホントだぞ」
そうじゃあないんだよなあ。ドラルクは、この吸血鬼は本当にわからん子だな、と内心で独り言ちる。ロナルドは決して、局所的なこだわりや執着があるわけではないため、説明をして理解できない訳ではない。吸血鬼の多くは何を置いても自身の好むもの、執着するものを最優先にして、気の赴くままに行動する性質がある。それがないロナルドは、むしろ飛び抜けて賢く、相手を慮ることの出来る子だ。故に、一つ一つ、きちんと教えていけば大概のことは理解し、生活に取り入れていく。
しかし事自分のこととなると、飲み込ませるまでに時間がかかるのも事実だ。そもそも体を大切にするなどと、不死の吸血鬼にそんな感覚が無いのは当然だろう。だから、ロナルドの周りには、いつもロナルドの動向を気にかける者がいたようだった。兄妹や、仲間たち、そして現在のドラルク。そう言う意味ではバランスが取れているのも確かではあるが、結果として外的なものに頼っていては、あまり意味がない。ロナルドが不死であることも、再生能力が秀でていることも、怪我をしていい理由にはなり得ない。
ただこれは、表面的な「自分を大事にしろ」などという陳腐な話ではなく、ドラルクの考えることはもっともっと、根本的なことだった。ロナルドにそれを理解してもらうのと同時に、ドラルク自身も様々なことを考えて、決めなければならない。
だから二人にとって大事な話は、まだもう少し先になる。なのでドラルクは、ひとまずここでの着地点を探ることにした。
「火傷、痛いんでしょ?」
「うーん
……今日はちょっと痛かった」
「痛いと君が感じることは、あまりしてほしくない。私やギルドの仕事のお手伝いもありがたいし、君を不自由にしたいわけじゃないけどね」
そう、自由であることが、この吸血鬼の何よりの美徳なのだから。
「
……わかった」
こんな貧弱なダンピールの云うことに対して、素直に頷く死にたがりのノスフェラトゥ。そんな、なんとも冗談のような、奇跡のような存在に、薬を塗る馬鹿馬鹿しさにドラルクはひっそりとほくそ笑んだ。分かってて、それでもドラルクはやたらと大きく育ったロナルドの体に薬を塗り続ける。
「俺、薬塗ってもらうの、はじめて」
「そうなんだ」
そうだろうね。ドラルクが指先に薬をつけるとロナルドは、ん、とキスを受け入れるように顎先をあげ、無防備に顔を差し出した。頬や額にそれを柔く塗り込んでいく。柔らかなテクスチャのそれはすぐにロナルドの新しい皮膚に馴染んでいった。
「なんかドラ公の手、冷たくてきもちいい」
「君が火傷してるからだよ。熱があるんだ」
「そっか
……なんか人間みたいだ。火傷した時に触ってもらったことないから、知らなかった」
「
……まったく」
ロナルドが火傷をした理由は至極単純だった。吸血鬼は人間で言うところの色素欠乏の状態に近い肉体を持っている。吸血鬼の肌の色も人間同様様々で、皮膚が透けるように白かったりいっそ血色が悪かったりするが、どの吸血鬼も一様に太陽光線に弱く、元の体温が低いためにすぐに熱傷を起こすのは共通事項だった。その点はロナルドも例外ではないというだけの話だった。
更には、塵になる。身体の構成要素が、太陽の熱線に含まれる紫外線によって
……と細かな説明を、ドラルクはいつだかの研修で聞いた覚えがあるが、とにかく彼らの肉体は容易に焼け焦げて塵になるのだ。吸血鬼は人間以上に個体差の大きな生物であるため、一瞬で塵になってしまう者もいれば、数十分かけて塵になってしまう者もいる。ロナルドは後者に当たるのだろうが、恐らくその中でもずば抜けて太陽に耐性を持つという性質と、再生能力の高さが、死ぬことのない原因になっているのだ。
しかしドラルクは、それでもこの吸血鬼には、こうやって薬を塗ってやらねばと思う。怪我をすれば手当をするという、当たり前のことを。
「まあ、いいか
……夜にサテツたちと遊べばいいし
……あっ」
「ちょっと。変な声出すんじゃないよ」
「だって
……あっ、ん
……そこ、くすぐったい
……」
ドラルクは構わず薬を塗りたくっていく。ドレスシャツの生地が薄かったために、ロナルドの火傷は体全体に及んでいる。胸元にべっとりと薬をのせて、再生したばかりの薄い皮膚に塗り込んでいくと、ロナルドは段々と艶っぽい声を上げ始めた。
「んんっ
……」
「
……」
ドラルクは黙々と手を動かす。無心を己の胸中に重石として乗せて、薬を塗り続けた。一方でロナルドはやたらと鼻につく声を漏らしながら、びくびくと身体を震わせる。その度に手元が狂いそうになるため、一層指先に神経を集中させた。
やがて指で塗るのも面倒になって、手のひらを使った。ロナルドは形のいい腹筋をひくつかせて、声を抑えようと唇を噛む。
因みに、ロナルドは全裸だった。
「
……今日はしないからね」
「ええー
……コイビトをこんなにしといて、ドラ公いじわる
……」
「怪我人とはしないよ。いいから今日は早く寝なさい」
やがてロナルドは、火照った身体を持て余し、ひどいひどい、とぐずぐず泣き出してしまった。薬の塗布を終えてから、それを宥めて寝かしつけるところまで、固い意志でもってして全てを終えたドラルクは深い深い溜息を吐き出す。最後にやるべき事をこなすために、スマートフォンを手に取った。
「
……まあ、これと
……これでいいか」
画面を見ながら、ぶつぶつと独り言を呟いてある種の疲労を伴った頭を働かせる。たしたしと画面を叩く指も重くなっていきながら、実質半休とはいえ思いがけないことで疲労してしまっていることを自覚した。
決済画面を確認した後にスマートフォンをテーブルに置いて、くたくたの身体でロナルドが眠っている寝室へと向かう。
今日は薬を塗っているから、とロナルドに寝巻きを着せてあった。先ほどあれほどめそめそと恨み言を言っていたのが嘘のように熟睡しており、毛布も蹴り飛ばしている。ドラルクはそれを手にとってかけ直しながら、自分もベッドに横たわった。
「
……んぅ」
寝返りをころりと打って、ロナルドの顔が眼前に迫る。暗い寝室の中で、綺麗な顔立ちに浮かぶ火傷の痕に触れる。寝惚けたロナルドはむにゃむにゃと口元を緩ませたが、起きることは無い。
今日はいつもよりも暑い夜だった。隣の熱を抱き寄せてじんわりとかく汗を感じながら、ドラルクもその重たい瞼を閉じていく。
「
……なに、これ? 傘?」
「日傘と、麦わら帽子と、日焼け止め」
「
……えっと?」
届けられる日に在宅出来ないことを考えて吸対に届けられた段ボールをロナルドに開けさせると、先日注文した品が揃いで届けられた。ドラルクはそれらからタグなどを外して、もう一度ロナルドの手に返す。
渡された物を両腕で抱えながら、尚もロナルドは首を傾げていた。どうにも事態を飲み込めないという具合のため、そこにドラルクは仕方なく再び手を伸ばし、ロナルドの手の中にあった麦わら帽子を取って頭に被せてやった。
「日差しがこの間くらい強い日は、日傘も使ってね」
顎の下にゴムを通して、ピアスに引っかからないように耳の後ろに回してやる。ロナルドは視線を自分の頭の上に向けて、蛍光灯の灯りを遮る鍔を指でつついた。
「
……これつけたら、昼間も出ていいの?」
「いいよ。あとこっちは、ボタン押せば開くやつで
……っ!」
次いで、手の中の日傘を取りあげて、ドラルクが使い方を教えようとカバーを外したところで、勢いよくロナルドが体当たりのように抱きついてくる。
「ありがとーどらこーっ!」
「っ
……!」
「あ、ごめん」
背骨が軋む音を立てたことに気がついたようで、ロナルドの腕が緩む。ドラルクは手放しかけた日傘を掴み直して、体に巻き付いたロナルドの腕を解いていった。
「
……お出かけするとき、持って行ってね」
「うんっ!」
使い方を一通り教えると、ロナルドは室内で帽子を被り、傘を差してくふくふと小さく笑いながら歩き回った。今はまだ夜で、夜明けまではまだ数時間はある。待ち遠しさにスキップし始めるのも、時間の問題かもしれない。
ロナルドは、まるで陽光を反射させたように瞳を輝かせて、ドラルクにくるりと振り向いた。
「なあ、ドラ公」
「ん?」
「今度、ドラ公と昼に出かけたい」
「
……そうだね」
「どこに行く?」
「どこがいい?」
「えっ? えっと
……どうしよう? ドラ公といっぱい行きたいとこあって選べねぇ
……うーん」
うんうんと頭を捻って悩むロナルドに行き先は一先ず任せて、ドラルクは執務机に座りながら、今日の仕事に取り掛かることにした。しかし任せる、と決めておきながら、ドラルクの脳裏には、ふとある場所に立つロナルドの姿が思い描かれていた。
昔、ドラルクが幼少の時に母親に連れて行ってもらった、広大なひまわり畑。それはそれは、美しい場所だった。
「どうしようかなぁ、ドラ公と行きたい場所
……うーん
……」
くるくると回る日傘を眺めながらドラルクは、日差しの元、麦わら帽子をかぶってはしゃぐロナルドを想像して、ひっそりと口元を綻ばせた。
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