enoki181
2025-01-15 23:02:39
1222文字
Public ごだが如く班
 

あいこは(せとこは)返歌

現コンあいこは(せとこは)の星野くんの話の続きを勝手に補完しました。

「ところで、あの“友達”というのは……

 言葉が途切れた。
 自分でも何を聞きたいのか、まとめられなかったからだ。

「星野君のことですか?」

 頷く。この名前は先程も呼んでいた。

「どういう友達なんだ?」
「どういう……

 んー、と小春が唸る。何か考えているようだった。
 答えを待って黙る。静かな時間が流れるが、俺の心はそうとはいかない。映画のチケットのプレゼントに、小春の反応に一喜一憂していた表情。あれを見てしまったら、平常心でいられるわけがないのだ。
 ただの友達に向ける顔か? 同性でなく異性だからなど関係ない。むしろ余計に怪しい。
 差し出されたチケットは二枚。余った一枚だけを譲るではなく。そもそも余っていたのか? わざわざ用意したのではないか? 映画なんてデートの定番じゃないか。デート……異性との友情を否定はしないが、あの顔はどう見たって……

……さん、アイザイアさん……ジークさん! まってくださいって! はやい!」
「あ」

 小春の声で我に返る。
 考え込みすぎていつの間にか速足になっていた。小春は一生懸命ついてきてくれていたらしい。
 悪い、と言いながら足を止めた。
 コートのポケットの中、手の力を少し緩める。こちらも気がつかないうちに力がこもっていたようだ。小春の手を痛めたいわけではない。
 ふうふうと小春が息を整えている。そうだよな、頭ひとつぶん以上の差だ。あの、星野、という奴となら、ここまで苦労して追いかけることもなく隣を歩けるんだろう。歳も近そうだった。

「そうそう、星野君のことなんですけど」
「ああ」

 なんでもないように相槌を打った。きゅっと、ポケットの中の手を繋ぎ直す。

「同じ学校の同級生なんですけど。なんとなーく、前から知ってるような……
「それは……

 身を屈め、耳元に唇を寄せる。

「“前世”から?」

 これは俺たちだけの秘密だ。周りに聞かせるものではない。
 こくり、と小春の頭が縦に揺れたのを感じて離れる。

「ワインレッド殿の店には集まるものだなぁ。あの顔、隊長の誰かである覚えはないが……

 ふと気付けば、見下ろす耳元が赤く染まっていた。

 ……これだけでもうどうでもよくなってしまったな。

 あんなにわかりやすい相手からの好意には気付かないか気にも止めていないか。それなのに俺の些細な行動にわかりやすい反応を示す。
 嫉妬したのが馬鹿みたいだ。そんな必要はなかったのに。

「冷えるな、早く帰ろう」

 もう一度優しく手を握り直し、ゆっくりと歩き出す。
 ポケットの中は温かかった。小春が熱を発しているようだった。
 まだ耳は赤い。こんな顔を知るのは俺だけのはずだ。
 先程とは別の理由で心の平常を失いつつも、まだ余裕ある大人ぶっていたい。
 考え込んで足が早まらないよう気を遣いながら、ゆっくりと冬の帰り道を行くのだった。