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えなが
2022-12-21 19:27:34
3506文字
Public
レノフィ
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朝釣りに行くレノフィの話
全年齢ですが肉体関係におわす描写あり
「フィガロ先生、起きてください」
着替えをすませ、フィガロのぶんまで荷物を準備し終えたレノックスが、いまだベッドの中で目を閉じてるフィガロを揺り起こす。
朝の支度をすませたレノックスと対称的に、まだ下着しか身につけていない男はぼんやりと目を開く。
昨晩見つめた真摯な赤い瞳が真っ先に視界に飛び込んできて、ねぼけまなこでよろよろと体を起こし、大きなあくびをした。
「かいがいしいねえ、おまえ
……
」
相手を起こさぬように身支度をととのえ、すべてを終わらせて、残りのタスクはフィガロを起こすのみ。そんな段階になってようやく声をかけてくるのだ。
ぎりぎりまで眠っていたいフィガロへの気遣いに感心しながら、呪文を口にして怠惰に衣服を呼びつける。眠さが魔法にもあらわれて、緩慢な動きで漂ってきたシャツやズボンがフィガロの体に引っかかり、そしてそのまま重力通りに力をなくした。
それをレノックスが取り上げて、ひろげて、軽く持ち上げたフィガロの腕に袖を通す。子供じゃないんだから、と思ってぼんやりしているうちに着々と世話され、手際よくボタンが留められる。
「やめにしましょうか?」
「ううん、行くよ。俺がついて行きたいって言ったんだから」
日の出の一時間前にレノックスは朝釣りに行く。
それに同行したいと口にしたのはフィガロのほうだ。昨晩までは行く気満々だったのに、そこから始まった行為と寝起きのベッドの誘惑が熱烈すぎて、ついそちらに体を預けてしまいそうになる。
「フィガロ先生」
「ん」
レノックスからコップ一杯の水とシュガーを数粒さしだされ、素直に受け取る。
胃が驚かないように人肌より少し低い温度で調整されたぬるい水が喉を潤す。控えめの甘みを持つシュガーを舌のうえで転がし、徐々に眠気が覚醒していくのを感じた。
昨夜散々啼かされたせいで嗄れてしまった声に対するほどこしだろう、フィガロは微かに苦笑しながら喉を鳴らして水を嚥下した。
レノックスがよく朝釣りに来るのは、広大な湖の中心にある離れ小島だった。立地が非常に悪く、この湖自体、四方を崖に囲まれた土地にあるので、空を飛べる魔法使いでなければ来れないだろう。長くのびた桟橋はレノックスが釣りをするためにこしらえたものらしい。
木枠の椅子を並べて座り、フィガロは道具を用意するレノックスの手を見つめていた。手際よく針に生餌がかけられ、あとは水面に投げ入れるだけの竿が渡される。
「釣れるかな」
白い息が口から漏れて風の向くままに流れていく。朝の空気が冷たくて、少しだけ風が強かった。人の気配がまったくなくて、人工物もレノックスが作った桟橋ぐらいだ。
そんな場所だからか、自然のざわめきをより一層大きく感じる。精霊の気配も色濃く心地いい。
「この時間は結構釣れますよ。賭けますか」
「何に賭けるの? 俺が魚を三匹釣れるか?」
「いえ、ああ、賭けというか勝負だな。俺とあなたでどちらが多く魚を釣れるか」
ははは、とフィガロの哄笑があたりに響く。
「そんなの勝負にならない、俺がおまえに釣りで勝てたことなんてあるっけ? 俺が身ぐるみ剥がされて終わりじゃないか。レノックス、何か俺にして欲しいことでもあるの?」
「はい」
周りに人は誰もいない。二人っきりだというのに、気遣うように声をひそめてレノックスはぼそりと呟いた。
「今夜もあなたを好きにしていいですか」
フィガロはちら、と横に座る男の顔を見た。
照れるでも恥じらうでもなく、水面の浮きを見つめながらいつもと変わらぬ声のトーンで夜の誘いをする。
少しはいじらしい表情でもしてくれたら焦らした甘い返事をしてもいいと思えるのに、彼はどこまでも真っ当に至極真面目だ。
かわいげのないやつ、とフィガロも再び水面に視線を戻す。
「なんだ。本当に身ぐるみ剥がす気なんだ。昨日あれだけしたのに、元気だね」
「まあ
……
はい」
「足りなかった? 別にいいけど。割とおまえの一回は重いよ」
「なるべく体重をかけないようにはしているのですが」
「そういう物理的な重さじゃなくてさ
……
。重いっていうか、濃厚っていうのかな。挿れたあと、俺が「いい」て言うまでレノって絶対動かないだろう。なのにずっと硬いままで、正直すごいと思う。絶対に萎えたりしないし」
「興奮してますから」
「ならなおさら動きたくて仕方ないんじゃないの」
「動きたいですが、苦しそうなお顔は見たくないので」
「嘘お、苦しんでる俺を見ておまえは悦んでるんじゃないの」
「苦しかったんですか? ならそうおっしゃっていただければ
……
。強く拒絶もされないので、てっきり気持ちがいいのかと」
「
…………
」
「
…………
」
フィガロは押し黙ってしまい、レノックスもまたそれ以上は追求しなかった。
沈黙がなによりレノックスの言葉を肯定してしまってることは両者とも重々承知していた。
薄ら白んでた空が、日の出と共に明るく照らされていく。太陽の光を求めて水面に浮き上がる微生物を狙い、小さな魚も水面へと誘われ、その魚を狙ってさらに大きな獲物が食らいつく。
だから朝はよく釣れる。その話をしたらフィガロが興味を持ち、レノックスの釣りに同行したいと言い出したのだ。
「気持ちいいよ、レノの体温が俺のと馴染んで、俺の様子をきちんと観察して、気持ちいいところを突いてくれるから」
「ならよかったです」
熱っぽく語るフィガロに反してレノックスの調子は変わらない。それが面白くなくて、体を傾けて寄せ、昨夜の情事を思い起こさせるように色づいた吐息を漏らす。
「腹の奥もだけど、おまえの這い回る手も、熱心に吸い上げてくる口も、俺は、えっ、
……
わわっ、うそ、引いてる!」
「頑張ってください、フィガロ先生」
「ちょっとレノ、手伝ってよ」
「俺も今っ、手が離せなくて!」
見るとレノックスの釣り糸もぐいぐい引かれていた。あのレノックスがそんな声をあげるなんて、結構な大物に違いない。
思いながらもフィガロは自分の竿が持って行かれないようにしっかり掴んでリールを巻き上げた。魔法で簡単に引き上げることも出来たが、あまり魔法を使わない男の隣でそれをやるのは格好がつかない。
静かな朝の湖に、二人の男の声が響いた。
「それでは、おやすみなさい」
「うん」
灯りを消して、同じベッドに潜り込む。
二人は体をくっつけあっていた。だが、ただそれだけだ。そのまま何もせず、少しも触れてこようとしないレノックスを「ちょっと」とフィガロは軽く小突いた。
「本当に何もしないつもり?」
「
………
」
「寝付きがいいな、レノ。レノ!」
揺さぶるも、ガンとして動かない。いつだってフィガロの施しを受け入れ、お返しにと同じだけの熱を返してくれるくせに。口を重ねれば舌を絡ませ、両腕で抱きしめれば包み返してくれるのに、こういうときは妙にかたくなだ。
薄目を開いたレノックスは怪訝に、ぼそっと呟いた。
「
……
、俺は勝負に負けたので」
「もしかして拗ねてる? かわいいところあるじゃない」
何度数えてもフィガロのバケツに入った魚のほうが多かった。こんなことは初めてだった。
釣り勝負などほぼ意味なんてなくて、今夜も閨を共にするただの口実だったはずなのに。
フィガロは不満げにレノックスの足に自分の足を絡め、いやらしく股間を擦り付けた。
「どうされました?」
「どうもしないよ」
「
…………
」
「どうもしないけど、俺は曖昧にはぐらかされるのは好きじゃないんだ」
「肩でも揉みましょうか」
「今はどこも凝ってないんだよねえ」
フィガロは苦笑しながら身を起こし、レノックスの腹をまたぐようにして乗り上げた。
相手の寝間着のボタンをひとつひとつ外していく。
「レノ、やる気はないけど抵抗もしないよね」
「あなたがその気にさせてくださるのを待ってます」
はは、とフィガロは笑った。朝、あんなにかいがいしく世話してくれた男が夜のベッドでは生意気な口をきく。それが、何よりのスパイスになっていた。
顔を寄せて口づけ、舌と唾液をからませる。性感を煽るように熱のこもった濡れた吐息を漏らした。
柔らかくてくったりした雄芯を気に入りの強直に育てるために、腰を揺らめかせて肌を手のひらで撫でまわす。
衣服を脱ぎ去りどちらともなく身をすりあわせて体温を求めるころには、釣りの勝負の行方など、もうどうでもよくなっていた。
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