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えなが
2022-10-26 08:42:17
2450文字
Public
革命軍組
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パラロイ軸の革命軍組
スタジオ収録を嫌がるガルシア博士を引っ張り出して付き添うファウストとレノの話。カプ要素なし
「あれのどこがいいんだろうな
……
」
控え室にあつらえた壁かけモニターを眺めながら、ファウストとレノックスは椅子に並んで座り、コーヒーを啜っていた。
スタジオの様子がうつしだされた画面は「よそいき」の顔をしたフィガロを中心にとらえていた。
音声は流れていないものの、身振り手振りを加えて、絶え間なく口を動かし、ウィンクまでしてみせている余裕がある。
数時間前までラボを出たくない、人間となんて会いたくない、スタジオになんか行きたくないとさんざん駄々をこねていた人物と同じだとはにわかに信じがたかった。
「なんとかセクシーランキングでしたっけ」
「それの2位だか3位だぞ。1位じゃなかったことだけ覚えてる。いったいどこの票を集めてるんだろうな」
「見目はいいですからね」
「外面に騙されすぎだ。今日も直前まで襟がよれよれのシャツを着てたぞ」
「髪もボサボサでしたね」
番組関係者の共同控え室は人の出入りが多く、室内には何人もの見知らぬ人、マネージャーや番組スタッフがあわただしく行き来して、それなりにざわついている。
ニュース番組の1コーナーでコメンテーターをしてるフィガロが司会者や他の出演者と言葉を交わし、スタジオで愛想を振りまいている間、彼の付き添いで来たファウストとレノックスは何かの間違いで声かけられぬよう、隅っ子に陣取りなるべく存在感を消していた。
入口に背を向けて座り、声のトーンは最小限につとめる。どうか話しかけてくれるなよという陰気なオーラを出しながら、持ち込んだタブレット端末に視線を落とした。
軽い連絡事項や部下への指示など、簡易的な業務ならできるが、セキュリティの都合上、込み入った内容のものはラボでないと扱えない。
早く帰りたい、と思っていた。それはスタジオで笑顔を作っているフィガロも同様だろう。戻り次第アシストロイドのスノウに泣きつき、弱音を吐く姿がありありと浮かんだ。
原則、インタビューやテレビ出演といった芸能活動は極力ラボで収録するという契約を結んでいるが、他の出演者やスタッフ、機材の都合で融通が利かないことが多々ある。
月に1度あるかないかの頻度で呼び出されるたびにセクシーな知的人物ランキング2位を冠するフィガロ・ガルシアは子供のように嫌がって、スノウに尻を叩かれ、同研究者であり腐れ縁のファウストとレノックスに引きずり出されてようやく外の空気を吸う。
スタジオ入りしてしまえば諦めからかスイッチが入り、研究者の仮面をつけてカメラにご機嫌な笑顔を振りまけれるが、そこまでもっていくのに時間がかかる。
撮影のたびに「次は断る
……
」とげっそりしながら言うものの、結局頼みごとをされたら断れない。
「レノ。きみの仕事の進行は大丈夫そう?」
「結構まずいです。実は明日更新プログラムのリリース予定が
……
」
「あー
……
ご愁傷様。もしかして昨日から寝てないんじゃないか、目の下のクマがひどい
……
」
ちらっと顔を見て、ゴーグルの中をのぞきこもうとして、互いによそよそしく視線を外した。ファウストもレノックスも、この場にいないフィガロも、上司・
部下といった単純な仕事仲間以上の気心しれた仲ではあるものの、直接的に人とかかわることが苦手だった。
仕事がオフの日は遊ぶこともあるが、もっぱら通話をつないでのオンラインゲームが主で、直接顔を突き合わせることはめったにない。
同じ職場の壁一枚隔てた向こうにいても、連絡事項や会議や打ち合わせはリモートで済ませてしまう。
面と向かって言葉をかわしたのもいつぶりだろう。それこそスタジオ収録の時ぐらいしか、会う機会などないのだった。
「もう芸能活動やめようかな
……
」
「いいんじゃない。僕は賛成」
「俺もです」
「満場一致だなあ。これでも頻度を下げてるんだけどね。最近はよくわからないバラエティ番組にも出演交渉が来るんだけど、絶対嫌って断ってるし」
「そのまま全部断れ」
「代わりの生贄がいればね。そうだ。当番制にしようよ。俺とファウストとレノで持ち回りでさ。ディレクターさんとの打ち合わせは俺がするし、台本は書いてあげるから」
「は? 嫌だけど」
「嫌です」
午前のスタジオ撮影でどっと疲れた日の昼食は、帰りにジャンクな外食をして帰る。
そういう習慣が三人の間で出来ていた。
前回は量産バーガーと油のたっぷりしみこんだポテト、今回は白濁の濃厚スープのこってりラーメンとニラがたっぷり入った餃子。
対面で会話ができないので、三人横並びでカウンターに座る。
インドア派ながら筋トレを欠かさないレノックスは、二人よりいつも多めに食べるが、今日ばかりは徹夜のせいか、控え目の量を注文していた。
早くラボに戻りたいところだろうが、撮影という一仕事を終えたフィガロをねぎらい付き合っている。
「まあでも、おまえのおかげでシステムのイメージ向上にはつながってるから、よくやってると思うよ」
「そうですね」
「お。二人にしては珍しく褒めてくれるんだ。替え玉追加する?」
「いらないよ」
「俺はいります」
「はは、足りなかった?」
「最初は無理かと思いましたが、結構いけました」
「おいレノ
……
ほどほどにしなさい、寝てないんだから」
「え、そうなの?」
「はい。AMプロジェクトの件で」
「あ。ああ~
……
。そうか明日か。よし、それも俺が手伝ってあげよう。レノはちょっと寝てから業務に戻るように」
「ありがとうございます。でも、大丈夫ですよ。あらかた承認は終わってるので、最終動作確認をするだけですから
……
」
「
……
フラグのにおいがするな。景気づけに味玉とチャーシュウもつけてあげよう」
「
……
僕も手伝おうか?」
ずるずるラーメンをすすりながら目を合わせない三人の会話がとんとん進む。
スタジオ撮影の受難は序章に過ぎない、プログラムリリースまでの長い一日のはじまりだった。
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