紫輝
2024-06-22 13:11:41
1750文字
Public リオヌヴィ
 

【リオヌヴィ+フリーナ】「数日後には番いたがると思うよ」【原神】

ヌ様にお付き合い始めました報告されるフリちゃまの話です。幸せいっぱいふわふわモードなので格好良いヌ様はいません。いません!!!ヌ様の名誉のために申し上げておくといつもはちゃんと凛々しい最高審判官です。フリちゃまは身内なのでうん

 ふわふわ、キラキラ。虹色の小さな泡が漂い、パチンと弾けて空気に溶ける。以前旅人に連れられて訪れた海祇島で見たような幻想的な風景、いや光景?が、見慣れた執務室に広がっていた。
「リオセスリ殿とお付き合いを前提に結婚することになった」
 その幻想的な光景を作り出している要因である旧知の水龍が、恐ろしいほどに整ったその容貌を とろかして笑う。彼のこんな顔初めて見た。これはふわふわを通り越してなんと言うか、ふやふやと言うのだろうか。ふわふわで、ぽやぽやな微笑みだ。うん、ふやふやで間違ってない、多分。
「ヌヴィレットさん、逆逆」
「む?」
 全人類を虜にしそうな微笑みから繰り出された頓珍漢な台詞にすぐさま入った訂正に小鳥のように傾ぐ首。破壊力がすごい。こんな反応見たことないんだよなあと言うか、彼こんな反応できたんだなあと、何よりも驚きが先に立つ。水龍がぴったりと寄り添う偉丈夫の手腕、怖い。すごい。沈着冷静と泰然自若と四角四面が服を着て歩いているような彼がこんなにふやふやになるなんて想像もしていなかった。
 偉丈夫の手で丁寧に淹れられた、ドゥボールにも引けを取らない美味しい紅茶を一口頂いてこちらも首を傾げる。
「お試し期間設けるのかい? あそこまでやって?」
 水龍と偉丈夫の恋愛譚――と言うかもうあれはラブコメに括っていいと思う。詳細を伏せて新作の歌劇に仕立てたいくらいだ。丸く収まった今だから言えるけれど――は自分を含め彼らの周りにいるたくさんの、それはもうたくさんの人を巻き込んだちょっとした騒動になった。主に被害を被ったのは共通の知り合いである自分と共通の友人である異邦の旅人。水龍のことが大好きな可憐なる隣人たちが二つの背を体当たりする勢いで押し、ようやっとこの形に落ち着いたのだ。次は結婚式の招待状が届くかもね、なんて旅人とお疲れ様会をしたのは記憶に新しい。それから程なくしての「話したいことがある」なる呼び出しにこうしてやってきてみれば聞かされたのは『お付き合い宣言』で、正直意外だった。水龍の前のめり感がこれでもかと伝わってくるから余計に。
 前のめりな水龍にくつくつと肩を揺らしていた偉丈夫が、その笑みを残したまま口を開く。
「殆どのカップルは恋人づきあいを経て結婚に至るだろ?」
「うん、概ねそうだね」
「ヌヴィレットさんがその過程も経験したいって言うから」
「あー、なるほど」
 虹色の泡をお供にふやふやと笑いながらカップを傾ける水龍の前へ一口サイズのパウンドケーキの乗った皿を滑らせてやりながらのそんな返答に納得の首肯。そういえば彼は好奇心はそれなりに旺盛なのだった。そもそも偉丈夫とこうなるに至ったのも、彼が示したちょっとした興味に都度懇切丁寧に対応していた偉丈夫にじわりじわりと彼が懐いていったのがきっかけで――うん、この話は今はやめよう。収拾がつかなくなる。というかその辺りを思い返そうものならせっかくのお菓子が喉を通らなくなってしまう。あんな甘酸っぱい話、舞台の上や本の中だけで充分だ。
 目の前にやってきた皿と隣の偉丈夫を交互に見た水龍の瞳がきらと輝く。ぱか、と開いた口に軽く天を仰いだ偉丈夫の氷色 ひいろの瞳がこちらを向くのに笑顔で指を揃えた手のひらを差し出した。どうぞどうぞ。
 フリーナさんの前だからって気が抜けすぎじゃないか、なんて呟きつつもその要望を汲んで偉丈夫が差し出すフォークを――正確にはその先に刺さったケーキを――迎える水龍は見たことがないくらいご機嫌だ。もしこの感情を空に映したなら、三重 みえの虹とかそういうものになるかもしれない。いやまあいい事ではあるんだが、と続いた美声に彼がふやふやになった理由の一端を垣間見た気がした。多分この偉丈夫は、水龍を甘やかすのが滅茶苦茶に上手なのだろう。
 求愛給餌のおねだりなんてあるんだなぁ、と以前読んだ書物のことを考えていてふと、『龍』の生態についての研究書に必ずと言っていいほど載っていた、龍種の代表的な性質を思い出した。
「公爵、あのね」
「ん?」
「僕が調べた範囲での情報ではあるんだけど、『龍』って独占欲がすごく強いらしいんだ。だからね、」


数日後には番いたがると思うよ