紫輝
2023-09-23 09:51:42
975文字
Public レオヴィル(ツイステ)
 

【レオヴィル】砂糖とゼラチンは控えめで

マスシェフ修了したレ様に料理を貢がれるヴィル様の話です。エンディングで有能な人しか言えない台詞しれっと言っててほんとレ様~~~~ってね、なりましたね

 皿の上でパンナコッタがふるりと揺れる。今日はオレンジソースらしい。とろりと輝く橙が美しかった。
 『単位稼ぎ』という、「らしく」て呆れた理由でマスターシェフを受講したレオナは、何故か時々こうしてデザートや軽食を持って現れるようになった。アレンジすら覚えたようで、もう寄越されるのが何回目かになるこのパンナコッタはヴィル好みの甘さと固さが絶妙だ。外でパンナコッタが食べられなくなりそう、なんて思っているが口には出さない。絶対に。
 料理は魔法薬の調合と似ているとレオナは言っていたらしい。何か彼の興味を惹くようなことが料理にあったのだろうか。であればこの男のことだ、「検証したいことがある。実験台になれ」くらい言いそうなものだけれど。
美味しいわ」
 美味しい料理には、必ずそれに関わってくれた人がいる。その人に感謝しながら食べるんだよ――尊敬する父の言を、ヴィルは大切にしている。心にも無い賛辞を口にするのはごめんだが、レオナの作ってくる料理が美味しいのは事実だ。であればそれをフィードバックするのは当然で、「そうか」なんて気のない返事をするレオナの尾が機嫌良さげに揺れるのを目にできると思えばなんとも言えない羞恥も若干は薄れる。
 それはそれとして、食事しているところを観察されるのは居心地が悪い。レオナが作ってくるものはいつだって一人分だけで、自分はティーカップ片手に皿を空にするヴィルを見つめているのが常だった。一度どうして一人前なのよと聞いたことはあるけれど、「面倒くさい」の一点張りだ。二刀流なら二倍強い、みたいな思考回路なのかもしれない。腑には落ちないが。
 ヴィルを見つめるエメラルドは粗を探している風でもなく、何かを探ろうとしている風でもない。それどころか慈しみの色が見え隠れすることすらあって、だから余計に居心地が悪いのかもしれない。
「アンタが急に料理に目覚めるなんて意外だったわ」
 取り繕うように言葉を紡ぐ。せめて会話をしていた方が気が紛れると、そう思った。のだ、けれど。
「別に目覚めた訳じゃ無いが。そうだな、」
 エメラルドをまたたいたレオナがゆうるりと笑み。
「俺の手を介したモンがお前の血肉になるのは悪くねえ気分だ」
 はたりと、尾が揺れる。
 喉を滑り落ちるパンナコッタの甘さが、数倍になった気がした。