紫輝
2017-12-25 20:40:41
1744文字
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【露紅】現代式クリスマスのススメ【文アル】

クリスマスの露紅(ちょっとだけ逍先生)です。

 カップの中の紅茶が細い湯気をゆるりとのぼらせる。この時期らしく華やかな装飾に彩られた焼き菓子を供に少し早い八つ時を過ごしていた紅葉は、はたと気づいて無意識に胸元を撫でていた手を止めた。
 注意深くゆっくりと、その手の下にあった物が取り出される。それは手のひらに乗るほどの大きさで、細長い形をしていた。
 硝子を通して入り込んでくる陽光に向かって翳されきらきらと光を放つそれを見つめる紅葉の新緑の瞳もまた同じように輝く。まるで宝物を見るように。
「綺麗な万年筆だね」
「逍遙殿」
 不意にかけられた声に、紅葉は室内へと目を戻す。春色の和装を纏った同胞は、紅葉の向かいへ腰を下ろすと同じようにそれ――万年筆を見つめて微笑んだ。
「持ち手が透明だなんて、珍しいデザインだね。おや、紅葉の模様が入っている。君らしいね。どこで見つけたのかな?」
 小首を傾げられ、紅葉は肩を揺らす。
「サンタクロースにもらったのだ」
 声を潜めて答えると、オレンジトルマリンが丸くなり、そして細まった。
「おやおや」
 密やかな笑みが空気を揺らし、だからいつにも増して機嫌がよさそうなのだねと、ここではあまり向けられることのない年下への微笑みを向けられて、紅葉は思わず口元を手で覆う。
「・・・それほど浮かれて見えるか?」
「いやいや。幸せそうに見えるよ」
 仲が良くて何よりだね。言葉にされずともそんな声が聞こえてくるようで、それが妙にこそばゆい。この人と接する時だけは常のようにはいかぬと密かに思っている紅葉だ。
 不意に響く鐘の音に二人、顔を上げる。
「君のサンタクロースが帰ってきたようだよ」
「・・・そうだな」
 冷めてしまった紅茶を干して足早に食堂を後にする秋色の背を、逍遙はやわらかな微笑みで見送るのだった。

 労を労いながら、三人の仲間とすれ違う。今回の潜書、露伴は会派筆頭であったから最後までその場に残っているのだろう。そう当たりをつけて潜書室のドアを開くと、予想通り鉄色の羽織の背中が目に入った。司書の姿はない。これは好機と、その背にぺたりと張り付く。ついでに両腕も回してやると、瞬間強ばった身体が脱力し、指先に体温が触れた。
「ふふふ、サンタクロースを捕まえたぞ」
「サン・・・まあいい。どうした。急ぎの用事か?」
「うん? いや・・・急ぎというか・・・善は急げというやつだ」
「さっぱりわからんのだが」
 疑問符を飛ばす露伴の背で、紅葉はふふふと笑む。
「今朝保留にした、お主へ贈る物が決まったのでな」
 起き抜けに枕元に置かれた小箱を見つけたときの驚きはいまだに胸に残っている。同時に現代におけるクリスマスがどのようなものなのか、文献を前に話をしたことも思いだした。ほんの一週間ほど前だ。それからの期間でこんな風に「それらしい」ことをやってのけるとは考えもしなかった。やはり露伴は生粋の誑しだと、そう思ったことは内緒だ。
 予想外の贈り物に対する返礼を紅葉が用意しているわけもなく、俺がやりたくてやったと予想通りの事を言う露伴に時を請うて約半日。
 思いついた『贈り物』は我ながら良い考えだと言えるそれで、決まってしまえば言わずにいられなくなった。
「なんだ、宣戦布告か」
「人聞きの悪いことを言うな。楽しみにしていろと言いに来ただけだ」
「宣戦布告じゃないか」
「ひどい拡大解釈だな」
 紅葉につられるように露伴の声が笑い、重ねられていた指先が手の甲をゆっくりと滑る。
「さて、ひとまずいいか。司書殿に報告をしなければならん」
「ああ、そうだな」
 拘束を解いてやると、向き直った露伴にさらりと髪を撫でられた。
「ただいま、紅葉」
「うむ。お帰り露伴。無事で何よりだ」
 忘れていたとばかりに帰還の言葉を交わして潜書室を出る。
 紅葉が件の万年筆でしたためた恋文(と言って差し支えないであろう手紙)が露伴の文箱に大切に仕舞われたのは、それから数日後のことだった。

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「自分の贈った物で」「物語を綴ることを生業とする人が」「自分のために書いてくれた恋文」はとてもいい物だと思うのですという夢を見ているので「紅葉先生自信満々かw」って笑ってあげてください