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紫輝
2017-10-04 22:07:34
2767文字
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【露紅】夜食の話【文アル】
紅葉先生にお夜食作ってもらう露伴先生のお話です。※紅葉先生の平服バレを含みますのでネタバレを回避したい方は閲覧非推奨です
※紅葉先生の平服バレを含みます
※ゲーム内システム等の解釈はこの図書館だけのものです
補修室のベッドの上でその身を起こし、露伴は一つ溜め息をつく。
霊薬を用いた短期集中潜書を終えたところだった。司書がそれなりの苦労をして精製する霊薬には不思議な力があって、よく目にするのは緑色のそれと、赤色のそれ。今回使ったのは後者で、どうやら探索能力が向上し各種魂を発見しやすくなるらしい。にわかには信じ難い話であるが、実際のところ文豪たちが皆そこそこの効果を実感しているとなれば、少なくとも使わないよりはマシ、なのだろう。
霊薬の効果は短時間しか続かないため、ある程度の成果を出すためにどうしても、常とは比べものにならない周期で潜書することになる。相応の疲労が溜まるのは道理であまり歓迎できることではないが、すみませんと申し訳なさそうに頭を下げられれば仕方がないと肩を竦めるに留められるくらいには、司書は文豪たちに信頼されていた。
首を回すと、強ばっていた関節が悲鳴を上げる。無事に霊薬の効果時間いっぱいまで走りきった会派メンバーは当然ながら疲労困憊で、皆よたよたと自室へ引き上げていった。補修が必要と判断された露伴だけが、こうして今までベッドに転がっていたわけである。
「腹減ったな・・・・・・」
誰もいない補修室に呟きが落ちる。『補修』は侵触者によって汚染された精神を浄化してくれるが、疲労や空腹感までは通常の状態に戻してくれないらしい。不便だと、先に転生を果たしていたライバル兼同志兼恋人が唇を尖らせていたことを思い出す。
嘆いていても空腹が満たされることはないし、疲労も残っている。とりあえず早く自室に帰って寝たい。面倒だが良質の睡眠のためには小腹を満たすことは必須だと二度目の溜め息をついて、露伴はベッドを降り、食堂へと歩を進めるのだった。
光量の絞られたランプの明かりがぼんやりと廊下を浮かび上がらせる。この時間だ、起きている者がいるとすれば原稿用紙に向かっている者や研究熱心なアルケミストくらいだろう。館内はしんと静まり返っていた。
薄暗い食堂の中では、整頓されたテーブルと椅子が朝食の時間を待っている。その奥、調理場へと続く入り口の向こう側からぼんやりと漏れだしている明かりに気づいて、露伴は首を傾げた。執筆というのは思ったよりも腹の減る作業だ。誰かが冷蔵庫でも漁りにきたのだろうか。
誰かいるのか、と、口にしかけた言葉は音にならずに喉奥に消える。淡黄の髪の持ち主はこの図書館に一人しかいないし、そもそも露伴が「彼」を見間違えるはずはない。
長い髪を三つ編みにまとめ、割烹着などという珍しい服をまとい、これも珍しく鍋の前に立つ、
「おお、露伴。目が覚めたか。・・・ふふ、そろそろ来ると思っていたぞ。我の勘も捨てたものではないな」
「紅葉・・・・・・」
つい先ほど脳裏で眉を寄せていた男の名を、露伴は半ば呆然と音にする。三つ編みを揺らした紅葉は、一歩露伴へと近寄って小首を傾げた。
「短期集中潜書に出ていたと聞いた。ご苦労様、だな」
労いの言葉とともに頬に触れ、疲れた顔をしていると小さく笑う紅葉を抱きしめたのはほとんど無意識だった。細身の背が軽くのけぞり、おおとどこか気の抜けるような困惑とおぼしき声が耳元で響く。ややしてから子どもを宥めるように背を撫でられるのが、不思議と悪い気はしなかった。
「そういえばおまえ、なんでここに」
「そうだ。忘れるところだった」
ぼそりと呟くと思い出したように痩身が身じろぐ。腕をゆるめると紅葉はいそいそとコンロの前へと戻り、鍋をのぞき込んでよしとうなずいた。
「夜食を作ろうと思ってな」
「腹減ったのか」
「であれば棚の饅頭で済むが。病み上がりで起き抜けの胃にはちと重かろう?」
さらりと聞き捨てならないことを口にして、紅葉は冷蔵庫を開ける。ラップのかかった仕込み皿とボトル容器を取り出すと、露伴に向き直って一度またたいた。
「腹が減っておるのではないか?だからここに来たのだろう」
「まあ、それはそうなんだが」
紅葉と料理がいまいち結びつかず不明瞭に返じた露伴に、心配するなと紅葉は笑う。
「ここで過ごしはじめてそこそこの時が経っているからな。少しくらいなら、料理もできるのだぞ。まあお主とは比ぶべくもないが」
だから危ない橋は渡らぬと紅葉が揺らしたボトル容器はどうやら濃縮和風だしのそれで、確かにそれなら分量さえ誤らなければ惨事にはならないなとぼんやりした頭で考える。座っていたらどうだと促す言葉に首を振って壁に寄りかかると、そのまま珍しい装いの背を眺めた。
鍋に入れられた和風だしはすぐによい香りを放ちはじめる。紅葉はそこに小さく切った蒲鉾と溶き卵を加え、ひと煮立ちさせてから火を止めた。調理台の上の椀には白米が控えめに盛られている。そこへ即席の吸い物が注がれると、白米に色を添えていた三つ葉がふくよかに香った。
「できたぞ」
「あ、ああ・・・ありがとう」
思いの外手際が良い、などと、知られれば確実に機嫌を損ねられるだろうことを考えながら急かされるように食堂の片隅に腰を下ろす。手を合わせ、一口。少し薄めのやわらかな味わいが舌に優しい。夜食にはもってこいの一品だった。
「美味い」
「そうか。それはよかった」
わざわざ自分のために夜半に調理場に立ち、ありふれた(勿論心からのそれではあるが)賛辞に嬉しげに笑む割烹着の想い人というシチュエーションは、疲れきった脳が処理するには少々荷が重い。
「・・・・・・嫁にこないか」
空にした器の前でもう一度手を合わせため息をつくように口にした露伴を、丸くなった新緑の瞳が見つめ。
「・・・もう行ったつもりでいたがな」
くすくすと、楽しげな声音がしじまを揺らした。
抱き枕ぐらいにならなってやるという申し出をありがたく受け取ってしっかりと休養をとった露伴がうっかり覚えていた夜半の言動に頭を抱えることになるのを(そしてそれを受けた紅葉が盛大に笑い転げるのを)、二人はまだ知るよしもない。
紅葉先生の平服ヤッター!!からの、か っ ぽ う ぎ
…
!!!!という衝撃がどうにも逃がしきれなかったのでパッションをぶつけてみました。いやまさか割烹着とは思わなかったですほんとに。平服 #とは って感じですけどこういう予想外のところで露紅に出会ってとても幸せになれましたありがとう文アル。
ちょっとしたお夜食くらい作れる紅葉先生もとても素敵だと思いますが旦那様のお手伝いがしたくて形から入ってみる紅葉先生も可愛らしくて好きです。露紅素晴らしいですほんと。紅葉先生が割烹着着るだけでここまで盛り上がれる。
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