紫輝
2016-12-25 22:47:19
1550文字
Public しょくんば(刀剣乱舞)
 

【しょくんばお絵描き文字書き真剣勝負第61回目 お題:クリスマス】*現パロ

遅刻ですが参加させていただきました。とても斬新なプレゼントの渡し方をする国広君のお話です

*現パロです

 冬の青空の端を夕暮れが淡く染める。呼気の作る薄雲を横目に、足は目的地へとせわしく動いていた。待ち合わせ時間には余裕がある。このペースで歩いては少し早く着いてしまうだろうけれど、立ち止まって落ち着くことはどうにもできそうになかった。
 二週間ぶり、になる。彼と会うのは。今年の三月に光忠の手から無事巣立っていった、優秀で可愛い教え子――兼、大切な想いびとだ。『秘密の』の三文字は、彼が高校生から大学生になった時に溶けて消えた。
 予想できていたことではあれど、それまで週五日、労なく会うことができていた相手と互いに連絡を取り合い予定を合わせなければ顔を見ることも叶わない日々はなかなか寂しいものだ。彼は大学入学後アルバイトも始めたようなので、週末がそのまま約束の日にならないことも多かった。今日はそんな毎日の中奇跡的に訪れた機会で、だからこそ光忠の心は逸る。
 彼の家の前で待ち合わせ、少し離れた駐車場に停めた愛車で食材を買い込んで、ささやかなパーティを開くのが今日のプランだった。ケーキは予約済みだ、品切れる心配もなかった。
 さて何を作ろうか。今日は冷えるから、シチューなんかがいいかもしれない。彼はまだ未成年だから、アルコールはご法度だ。濃い目に出した紅茶を炭酸水で割ればそれらしいドリンクになるだろうか・・・そんなことを考えていれば、彼が住む、住人曰く「家賃の割に洒落た外観のアパート」は目の前だった。廊下に並んだドアの一つ、彼の居るだろうそこを何気なく見上げると、同時に。
 バタン! と音が響き、想いびとが姿を現した。若者に人気のカジュアルブランドのダウンジャケットに身を包み、こちらは見慣れた藍色のマフラーを巻いている。施錠の音が落ち着きなく響き、返った彼の、肉眼では遠すぎて判別できないが光忠はその色をよく知っている湖の瞳が大きく開かれた。
「先生・・・!?」
 やあ、の二文字を聞く間も惜しいと言わんばかりの足音が、彼を光忠の元へ連れてくる。立ち止まった彼は、形良い眉を下げて早口に言った。
「すまない、突発でヘルプに行かなきゃならなくなった」
「ああ・・・そうか。クリスマスはどこも掻き入れ時だものね」
 繁盛しているみたいで何よりだよと浮かべた笑みに混じる苦さに彼が気づかないはずはないけれど、残念なものは残念なのだ。仕方がない。すまないと二度謝罪をくれた彼が横をすり抜け、少しばかり進んだところで振り返る。
「絶対に三時間で上がるから、帰らないでくれ。絶対戻る!」
 そしてそんな言葉と共に何かを投げて寄越して、変わらぬ俊足で走り去っていった。
「待って、国広・・・!」
 上げた声が届くはずもなく。
 肩を竦め、反射で受け止めた「何か」の存在を確かめるべく手を開けば。
 西日に輝く、鍵が一本。
 キーホールにはすでにクリスマスを祝う言葉が筆記体で記されたタグと、アンティークゴールドのチャーム(燭台の形だった。どこで見つけたのだろう)が収まっていて。
「・・・・・・」
 もしかしなくてもこれは、もしかするのではないだろうか。
 彼が残していった『暫定プレゼント』を見下ろして、数秒。
「・・・ほんと・・・呼吸するように格好いいことするよねぇ、あの子・・・」
 呟いて、苦笑。これを打算なしにやってのけるのだから恐ろしいことだ。
「さて、と。三時間で何ができるかな・・・?」
 恋人の部屋への道しるべを指先で撫でつつ、思案に暮れる待ち時間は短そうだった。


部屋の合鍵を格好良く投げつけて去る(語弊)国広君の図が浮かんだので形にしてみました(なったとは言ってない)
きっちり三時間で帰ってきた国広くんは「お帰り」って迎えられて多分パンクします可愛い