紫輝
2016-12-20 21:54:15
2093文字
Public しょくんば(刀剣乱舞)
 

【しょくんばお絵描き文字書き真剣勝負第60回目 お題:指輪】

大遅刻ですが参加です。伊達三人と恋人から指輪をもらう意味を知らなかったポンコツ忠さんのわちゃわちゃです。ほんとにそれだけです。格好良い光忠さんはいません。たまには察しの悪い光忠さんもいいかなって。

 下段から上段に向かって襲った斬撃に切り裂かれた装束が風圧に揺れる。ちっ、と、普段は表に出さないよう努めている舌打ちを漏らして刀を握りなおすと、巡る血が燃えているように全身が熱いのに頭の芯だけが冬の朝に似た冷たさを宿した。研ぎ澄まされた感覚が道を示す。突けば屠れる、その一点を。
「このままじゃ・・・格好つかないんでね!」


 気合を込めた一太刀は違わずそこを捉え、異形は悲鳴と共に崩れ消えていく。一間ばかり離れた場所でも同じような断末魔が聞こえていた。仲間たちが同じように遡行軍を退けたのだろう。
「いやー、派手にやったな、みっちゃん!」
「全くだぜ。男ぶりが上がっちまって」
「・・・見た目ほどひどくはないようだな」
 集まってきた知己たちが口々に言葉をかけてくる。軽い調子の二人にはやめてよ格好悪いと頬を掻き、さらりと己の全身を見聞して呟いた一人には心配してくれてありがとうと口角を上げて、それぞれの無事を確認した。
「・・・あれ」
 そんな中ふと声を上げたのは貞宗で、じっと向けられる視線に光忠は首を傾げる。
「みっちゃん、いつからそんな洒落たモンつけ始めたんだ?」
 貞宗の指がとんとんと彼自身の胸を叩いたことで『それ』の存在を思い出した。遅まきながら傷などついてはいないかと、手のひらですくい上げて目を眇める。今は風を受けて冷たい感触を伝えてくる、銀色の指輪を。
 一通り眺めて息をついた光忠に、鶴丸が笑う。無事みたいだなと。
「で、どうしたんだそれ? 俺たち刀持つだろう。お前さんが嵌められないと分かってる物を鎖に通してまで持つとは思えないんだがな。そんなに気に入る意匠だったのか?」
 次いで貞宗よろしく小首を傾げられる。並んでそうしている様はまるで兄弟のようだなと、付喪神としての実年齢を脇に追いやって考え小さな笑みが漏れた。
「貰ったんだ。『輪』は不変や回帰の象徴だそうでね。あの子が「今がずっと続くなんてあり得ない話だけど、どこへ出陣してもちゃんと僕たちの本丸に帰れるように」っていう願いを込めてくれた、大切な指輪だよ」
 湖面の瞳に静かな輝きを灯し、囁くように『輪』の持つ意味を教えてくれた愛しい打刀の姿を脳裏に描きつつ相好を崩した光忠とは対照的に、話を聞いていた三人の顔は驚いたような表情から呆れたようなそれに変わっていた(大倶利伽羅が目に見えるほどに感情を表すのは稀だ)。
 溜め息が響く。奇しくも同時に。ご丁寧にも三つ。
「鶴さん・・・俺、みっちゃんがこんなにポンコツだとは思ってなかった・・・」
「俺もだが、まあ言ってやるな貞坊。昔と今とじゃ、変わってることも多いからな」
「・・・伊達男が聞いて呆れる」
「みんな何気にひどくない!? 今の会話だけで君たちの中の僕に何があったのかな!?」
 心外な評価を立て続けに浴びせられた光忠は悲鳴を上げる。鶴丸がすらりとした人差し指を天に向けて立て、あのな、と前置き。
「確かに『輪』という形にはそういう謂れがある。だがな、『指輪』となると大体においてそれ以上の意味を持つものだ。お前さんと山姥切の関係を鑑みれば尚更な」
「・・・?」
 先の二人の如く傾いだ首に、貞宗が焦れたように両手で髪をかき混ぜる。うああ!・・・なんて、あまり格好良くはない叫び声を上げながら。
「みっちゃん数百年の間にボケたんじゃねぇの? 俺の知ってるみっちゃんこんなにニブチンじゃなかったぞ!!」
「貞、わかった。光忠のこれは察しが悪いんじゃない。おそらく天然だ」
「なにそれめんどくせぇ!」
 ついに静観していた大倶利伽羅までもが諦観のありありと漂う溜め息と共にそんなことを言い始める。気心知れた間柄故の容赦のない言葉の数々に、割と冗談抜きで泣きそうになった頃。
「あのな。『輪』ってのはお前さんが言った通り、不変の象徴だ。だからそれにあやかって、想い人へ贈る『指輪』には変わらぬ愛情を捧げるって意味もあるのさ」
「・・・・・・」
 長い長い沈黙が落ちる。金眼を見開いて文字通り硬直してしまった光忠を横目に、鶴丸の「ネタばらし」を聞いた貞宗はウンウンとしたり顔で幾度もうなずく。「『束縛』の意味にとる者もいるようだが」などといらぬ補足を口にしかけた大倶利伽羅の向こう脛を軽やかに蹴り飛ばして。
「・・・嫌だなぁ。知らなかったとはいえ、僕最高に格好悪くない? ないよねぇ。あり得ない」
 硬直から復帰すると同時に、光忠はいっそ胡散臭いほどに朗らかな笑みを浮かべる。それは静かに激怒している時の雰囲気にも似ていた。背後に竜すら見えそうだ。
「こうしちゃいられないや。早く帰って、城下に出ないと。鶴さん、悪いけど報告頼んでいいかな? 倶利伽羅、夕餉の当番代わってもらっていい? 埋め合わせはするからさ。貞ちゃんは買い物付き合って?」
 流れるようにそう告げた光忠に、三人は肩を竦めて苦笑(約一名は嘆息だったけれど)する。手入れは済ませてから行けよ、という鶴丸の声が、青空に吸い込まれていった。


この後フルオーダーとかし始めます多分