紫輝
2016-10-17 23:01:46
1033文字
Public しょくんば(刀剣乱舞)
 

【しょくんばお絵描き文字書き一本勝負51回目 お題:花丸】

遅刻もいいとこですがせっかくなので。本丸が立ち上がって間もない頃の、酔っぱらい国広君に振り回される光忠さんのお話です。未満なのか出来上がってるのかだいぶあやふや

「やっぱりこっちにいたのか」
 きしりと鳴いた床板に振り返れば、白い布が揺れていた。同時にかけられた声に小さく笑う。
「ああ。予想以上にみんなよく食べてくれるからね。腕の振るいがいがあるよ」
 言いながら持ち上げたのは輪切りの胡瓜と塩昆布の和え物の盛りつけられた皿だった。簡単な割に美味しいと、安定した人気を誇る定番の副菜兼つまみだ。
 広間からは楽しげな声が漏れ聞こえてくる。小さなものではあるけれど、今日はこの本丸が立ち上がって初めての宴らしい宴だった。仲間も増えてきたし、この辺りで親睦会も兼ねて一席どうかなと笑った今代の主に一も二もなく同意した結果だ。初めの準備こそ皆でわいわいとやったのだけれど、始まってしまえば皆人の身を得て初めての宴席にはしゃいでしまい、気付けば裏方の雑務は全て光忠が担っていた。不満はない。作ったはしから料理が平らげられていく様は見ていて気持ちがいいし、楽しげな顔を見ているだけで自身も充分楽しめたから。
「何か取りに来たのかな?」
 お酒? それとも料理のリクエスト?
 首を傾げれば、何故か彼はやれやれと肩を竦めた。どうしたの、と問う前に、その唇が開く。
「面倒見が良すぎるのも考えものだな」
「うん?」
 するり、と。思いの外近くまで寄ってきた痩身からは仄かに甘い香りがした。主の時代の酒だろうか。よくよく見れば布影から除く白い肌は常より血色が良い。彼も少し酔っているのかもしれない――そんなことを考えていると、つと手を取られた。
「本丸の皆のために力を尽くしてくれるあんたには花丸をやろう」
「は? え、」
 くるくると、手のひらの上で白い指が渦巻きを描く。見えない渦巻きの周りを見えない波が囲むように一周。呆然と予想外の行動を起こしてくれたその頭を見下ろしていると、どうやら花丸を描き終えたらしい彼の、少しばかり融けた湖と目が合った。
「助かっている。いつもありがとう」
 そしてふわりと笑みを零すことでこちらの息を鮮やかに止めた彼は、流れるように器をさらい。
「あんたの知己を喚ぶことは出来ていないが、あんたと話をしたい奴も大勢いる。ほどほどにして、あんたもこちらに合流するといい」
 待っている。
 最後の爆弾を落として、厨を出て行った。
 非常に情けないことではあるけれど、熱を持った頬とやかましい心臓をなんとか取り繕う頃には、彼の足音どころか気配すら消えていた。


歌仙さんとかがやっと来た頃のイメージでした