紫輝
2016-07-30 23:03:52
683文字
Public しょくんば(刀剣乱舞)
 

【しょくんばお絵描き文字書き一本勝負第41回目 お題:真夏日】

参加させていただきました。暑さ負けした光忠さんの面倒を見てあげるまんば君のお話です。

 ひと、という生き物は、内からだけでなく外からも熱の影響を受けるらしい。本丸内に設置された温度計が黄の域を越えて赤の域に針を合わせたこの日、常は太陽のごとく笑みを振りまきながら本丸内を動き回っている恋人はぐったりと畳に伏していた。七分袖の内番着すら煩わしいらしく、今の彼はTシャツを身につけている。接触冷感、という特殊な製法で仕上げられているらしいそれも、あまり効果は出ていないようだった。
 ぱちり、ぱちり。緩慢にまたたく瞳は、宿した陽炎のようにぼんやりとどこでもないどこかを見つめている。熱に浮かされている時に似た揺らめきが色合いと相まって綺麗だった。
 とはいえ進行形で暑さに苦しむ恋人を黙して見つめていることなどできるはずもなく、借り受けた団扇で風など送ってみる。他の男士たちが集まっている空調のある部屋にこんな状態で行きたくないと彼が駄々をこねたのもあったし、扇風機は空調が苦手な者に提供してしまっていたからだ。かっこつけめ、と苦笑して手を動かせば、恋人は芯の抜けた顔で笑み、呟いた。「ごめん。ありがとう」。
「気にするな。・・・こうしていてやるから、寝てしまえ。陽が落ちれば暑さも和らぐだろう」
 む、だかん、だか、判別のつかない呻きを漏らして、陽炎の瞳がまぶたの内へと隠される。うすらと浮いた汗を冷やした手巾で拭ってやって、ゆっくりと背後へ視線を流した。
「・・・・・・見なかったことにしてやってくれ」
 人差し指を立て、無意識の内にゆるりと浮かんだ笑みをそのままに囁いた言葉に、麦茶の揺れる玻璃の器を手にした短刀は楽しげに忍び笑ってうなずいた。