目の前でキビキビ動く、頭一つ小さい背。洗いカゴに並べられる食器。手製の晩御飯はとても美味しかった。忙しさにかまけて放置してしまっていた洗濯物は畳まれて箪笥の前にある。目の前には湯気の立つコーヒー。仕事に忙殺されるたび察したようにやってきてくれる腐れ縁の彼を、帰したくないな、とふと考えて呟く。
「ねえ、国広」
ここに越して来ない?
水を止めた彼は、碧い瞳をこちらに向けて肩を竦めた。
「…あんた煩わしいの嫌いだっただろ。それで何人フったか知ってるぞ」
それが何度か家に足を踏み入れて、知らぬ間にカップやら歯ブラシやらを増やしていた女性たちのことを指しているなら何も反論できない(ペアカップを見たときは戦慄した)。彼女たちとの付き合いはバッサリと断ち切ったけれど。
「きみとなら、楽しいかなぁって。同じ家で目覚めて、お揃いの食器で一緒に食事してさ。…うん、きっと楽しい」
国広とならそれもいいかと思ったのだ。何より帰る家にいつでも彼がいるなんて、考えただけでわくわくする。ふふと漏らした笑みに本気を感じ取ってくれたらしい彼は、少し血色のよくなった顔をふいと逸らして
「…考えておく」
そう、呟いた。
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