紫輝
2016-05-28 23:16:02
1619文字
Public しょくんば(刀剣乱舞)
 

【しょくんばお絵描き文字書き一本勝負32回目 お題:宴】

参加させていただきました。野原でお茶しながらいちゃいちゃ(当社比)してるだけ、です

 足下に露草。傍らに躑躅。目を上げれば紫陽花が、寄り添い合って花を咲かせている。渡る風は涼やかで、鼻を抜ける緑の香りが心地良い。
 天気は快晴。自然の気まぐれが作り上げた花々の宴の中心に、二人はいた。
「よかった、雨降らなくて」
「そうだな。あいつらには感謝しないと」
 敷物の上に腰を落ち着けて空を見上げる光忠に、国広が微かに笑いながら答える。彼が口にしたのは今も本丸で健気に揺れているてるてる坊主達の事だろうと思われた。空が雲に覆われる度に短刀達が作っては増やす小さな祈りの結晶は、雨期が近付くにつれまだまだ数を増すのだろう。
 持ってきた包みの封を解けば、軽食と何種類かの甘味が顔を出す。時間が時間なので飲み物は酒ではないが、鶯丸が二人のためにと直々に用意してくれた冷茶だ。文句などあろうはずもない。
 本丸は山を一つ、越えたところだった。何度目かになる大阪城地下の調査を終えたばかりなのだ。今までの感覚からすれば「浅い」と思えるような場所に高練度の敵がひしめいていた今回の調査は最近は本丸で待機していることが多かった三日月を初めとする高位の太刀が揃って刀装を犠牲に戻ってくるような過酷なもので、手入れや刀装の作成に必要な資材の調達や出陣組のための種々諸々でばたついていた。久しく長兄のそのような姿を見ていなかった各刀派の弟刀たちは悲愴な顔を覗かせながらも気丈に振る舞っていたので、今頃は揃って一息ついていることだろう。
 調達組への指示や待機組の(主に精神面での)世話に走り回っていた二人もようやく息をついたところだった。全ての事後処理を終え、一つ溜め息をついた光忠がうっかり漏らした「・・・どこか行きたいな」という呟きを拾った国広が、行くか、と答えてくれたことでこの外出が成ったのだ。
 連れだってやってきたのは光忠が偶然見つけた花の群生地で、時期もあって様々な色のあるその場所は目に楽しい。いそいそと包みをほどき中身を敷物の上に並べる作業をしている国広に微笑を向けてから、冷茶のポットを手に取った。紙コップを探すのに手間取っているうちに彼の準備は終わってしまっていたらしい。ポットを傾けかけたところで横合いから差し出された団子に苦笑する。
「今両手塞がってるから、後でもらうよ」
 ね、と片手にポットを、片手に紙コップを持った状況を示してみせると、国広は何かを考える素振りをしてからゆるりと瞳を細めた。
「まあ、問題ない。ほら、あーん、だ」
「・・・・・・君って子は・・・もう・・・」
 彼は知らないのだろう。こういった方面で時々見せる男らしさがどれほど自分を揺さぶるのかなんて。それが顔を出すのは二人きりの時だけなのだから尚更始末に負えない。
「じゃあ、有難く。いただきます」
 両手にお茶セット、というかなり格好のつかない状態で噛みついても歌仙手製の団子の味は格別だ。――串を持つのが国広の手なのだから、出来合いの団子でも美味しく思えるだろうけれど。
 空や花を見、ぽつぽつと会話をしていれば持ってきた肴は全て胃袋に収まってしまった。うっすらと橙に染まり始めた空を見上げれば、留守居をしてくれている同胞達の顔が過ぎる。
「付き合ってくれてありがとう、国広。・・・今度はみんなで来たいね。お花見・・・って言い方は、ちょっと季節外れかも知れないけど」
 青空の下、皆で弁当を囲むのはきっと楽しいだろう。ふふと笑み混じりに口にした提案に。
「・・・・・・ここじゃない、ところなら」
 勿体ない気がするから、なんて、青空に似た瞳に花々を映し小さな声でそんな風に答えられては。
「・・・・・・。わかった。いいところ探しておくよ。こことは別の、ね」
 そう応じる以外の選択肢なんて、光忠にあるはずもなかった。

-・-・-・-・-・

みんなでわいわいするのもいいけど、二人だけでゆったり静かに張る宴もいいなって思っただけでした