紫輝
2016-04-21 23:10:06
1164文字
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【SN】偵察能力:局地的SS【ルヴァイオ】

ルヴァイド様がイオスにデレデレ。あとうちのイオスはお菓子作れる子です


 騎士団が本拠を構える聖王都・ゼラムには、様々な国や地域から物や人が集まってくる。人々で賑わう市場通りは多種多様な体格や髪色の民や旅人が行き交い独特の華やかさを醸し出していた。
 そんな大通りで、金の髪は決して珍しいものではない。以前肩を並べて戦った仲間たちの中にも数名。通りを歩く金髪の持ち主は容易には数え切れないほどだ。
 金髪は珍しくない。そのはずなのだけれど。
 雑踏の中であっても、不思議と見つけ出せる存在がある。
 二つほど店を隔てたその向こうにある、すらりとした立ち姿。店の前を彩る果物の前で店主と何かやり取りをしているのは、部下でもあり恋人でもある青年だった。正装兼戦装束であるマントを羽織っていないところを見ると、休憩の折にでもこちらへ降りてきたのだろう。
 一見女性と見紛うほどの線の細さと色の白さ。目を惹く美貌の持ち主ではあるがこういった場所では容易く人混みに紛れてしまうはずのその存在を、己の目は違わず視界に捉えるのだ。
 この人混みの中でよく見つけられますね、と、騎士見習いの少年にはよく言われる。人探しのコツでもあるんですか、などと問われるが、答えは否だ。目、だけならば、件の少年の方がよほど優れている。
 話したところで信じてはもらえないだろうが、己には輝いて見えるのだ。彼のいる場所が。それはぼんやりとした光だけれど、太陽の光に負けることはない。彼を包んで静かに、力強く輝くその不思議なひかりは、どんな場所にいてもその存在を己に伝えてくる。彼を見つけ出すことならば国中の誰にも負けないだろうなと少々浮ついたことを考えながら大股に踏み出した。
 縮まる距離に、彼は気づかない。店主の話を真剣に聞いているらしく、小さな頭が時々うなずいているのがどこか幼げに見えて愛らしかった。
「・・・イオス」
「っ! ルヴァイドさま」
 店主が店の奥へ消えたのを見計らって名を紡ぐと、ぴくりと肩を跳ね上げた青年のラベンダー色の瞳が己を捉えすぐにほころぶ。
「目に敵うものがあったか」
「はい。帝国産の林檎が」
 つい金髪に伸びそうになった掌を制して首を傾げれば、嬉しげな声が返って。
「ケーキにしますね」
「そうか。楽しみだな」
 近く休憩時間を彩るだろう菓子への期待にくつりと喉を鳴らすと、青年はぱちりとまたたき、そしてうつむく。はにかむ時の青年の癖だ。こんな場所でなければ顔を上げさせるなり覗き込むなりしてやるのだけれどと残念に思いつつ、戻ってきた店主の持つ紙袋をさらう。
「さて。戻るぞ、イオス」
「え、あ、ルヴァイドさま! 僕が持ちますから、」
 踵を返せばすぐさま追ってくる焦ったような声が耳をくすぐる。やはり戻ったらその金糸に触れようとそう決めて、己にだけ視える美しいひかりにそっと目を細めた。