紫輝
2015-06-06 20:58:59
1636文字
Public しょくんば(刀剣乱舞)
 

【しょくんば】喫茶店で運命の出逢いをした話【現パロ】


*リーマン光忠と喫茶店アルバイトのまんば君の現パロです



 目についた。それだけの理由で入った店で、胸踊る出逢いをした。

 チリリン、と古風なベルの音に迎えられ、足を踏み入れた店内は抑えた照明が心地好い空間だった。時間のせいなのかいつものことなのか、店内には数人の姿しかなく、また皆一人で訪れているらしく話し声もなく。空気を揺らすのはクラシックのピアノ曲で、都会の真ん中とは思えないなとこのある意味ファンタジックな店内を見回して考えた。
 お好きな席にどうぞ、と、店員らしき青年の声が飛んでくる。目に付いた席に腰を下ろすと、水の入ったグラスとメニューがそっとテーブルに置かれた。今時紐綴じファイルのメニュー表とは珍しい。しばらく時代錯誤なそれを凝視してしまってから開いたそれの中身はコーヒーと紅茶、軽食と何種類かのケーキ。典型的な喫茶店だ。
 ふと上げた視線に、先に出迎えてくれた青年の姿が映る。暖色の証明に柔らかく光る薄茶の髪と、青色の瞳。遠目でもわかる現代的に整った顔立ちは、失礼ながらこのような店で店員をするには似つかわしくない。どちらかと言えば居酒屋とかコンビニとか、その辺りにいそうな青年だった。
 彼はカウンターの横、店内が見渡せる場所に立っている。伸びた背筋と、少し固い表情。あまり接客向きの表情じゃないなと心中で苦笑する。
「・・・すみません、」
 手を上げて声をかけると、彼はぴくりと肩を震わせてからおずおずとこちらへやって来た。
「アイスコーヒーをお願いします」
「・・・ミルクとガムシロップはご利用ですか?」
「いいえ」
「・・・少々お待ちください」
 軽く頭を下げて離れていく青年を見送って、小さく笑った。今度の笑みはプラスの感情に起因するものだ。
 自分を見た、彼の瞳。随分と真剣だった。注文の聞き逃しがないようにだろうか。底まで見通せそうなほど澄んだ青だった。あんな色の瞳に真正面から見つめられると、少し気恥ずかしささえ覚えるほどだ。
 一連の動きを観察していて、「接客向きではない」という印象を「接客慣れしていない」に上書きする。もしかしたらアルバイトそのものが初めてなのかもしれない。ますます彼がなぜここを選んだのかが謎で、沸き上がる興味は尽きない。
「・・・お待たせしました」
 コースターと、グラス。それからストロー。それらを置く指は少しだけ震えていて、別にとって食べたりしないんだけどな、などと思いながら見守る。
「ごゆっくり」
「ありがとう」
 一仕事終えたかのように、微かに息をついて彼は戻っていく。ほっとしたのか下がった眉が可愛い、などと思ってしまってから、何を考えているのやらと誰に見られているわけでもないのに口元を隠した。


 店内も古風ならレジも古風だ。細い指が釣銭を取り出すのを見つめ、感熱紙でないレシートを受け取る。さらりと揺れる前髪。間違いなく睫毛は標準より長いな、とつい考えてしまう自分に苦笑するのは何度目だろうか。
「ありがとうございました」
 触れた指先は冷たい。緊張しているのだろうなと、ここまで来れば想像がついてしまう。
 呟いてしまっていた。思わず。
「・・・頑張ってね」
 見開かれた青。俯きがちだった顔が驚いたように上がって。
「え・・・あ・・・ありがとう、ございます」
 上ずった声が、たどたどしく礼を告げる。淡く染まった頬の色が目に焼きついた。
 ベルの音に見送られ、店を出る。心を映したような快晴だった。
「・・・偶然に感謝だな」
 ぽつり呟いて、意気揚々と帰路につく。午後も頑張れそうだ。


「・・・なんだ光忠、機嫌良さそうだな?」
「いいお店をみつけてね」
「へー、お前の眼鏡に叶う店か。今度連れてけよ」
「嫌だよ。・・・まだね」
「・・・含みのある言い方するなぁ」

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このあとすごく通う
店長は歌仙さんで常連さんに江雪お兄様とかいたらいいなって