年下の恋人の為に料理をしていたら楽しくなってきてしまい、凝った料理も多くなってきた。記録としてSNSにあげるようになると他人からの反応が次第に増え、恋人の為に作ったといえ褒められるのは悪くないなと思う。ほぼ毎日恋人に持たせた弁当とその日作った料理の写真を上げる。
不思議なのは自分の凝った料理よりも、恋人がたまに自分の為に作ってくれる歪な見た目で少し焦げが混じった料理の方が反応が良かったりするのだから、世の中はよく分からない。まあ、作ってくれた事が嬉しくてつい他人にも自慢したくなってしまう自分も相当なのだが。ちなみに恋人はそこそこ嫌がる。
今日は『たまにはこんなお弁当どうですか?』とコメントを貰ったものを作って恋人に持たせた。その写真を早朝に投稿し、そのまま仕事へ向かう。仕事が忙しく休憩もままならなかったので、反応が見られたのはその日の夜だった。
「あ? 何だこれ」
休憩に入り日課のSNSを眺めていた時、同期のエレンがデスクで声を上げたのが気になり顔を上げる。通りかかったもう一人の同期のジャンが彼に声を掛けた。
「どうした」
「なあ、これ何に見える?」
「白い…人間…?」
「なんで弁当に人間詰めんだよ」
「知るかよ!!」
カチンときたのか言い合いが始まりそうな雰囲気にアニは立ち上がって二人に声を掛けると、二人は開きかけた口を閉じた。
「弁当がキャラ弁っぽいんだが、何の動物かわからねえ」
「…そんなことある?」
「まあ見てみろって」
ジャンが半笑いで手招きするのに、持ち主のエレンが睨みあげた。
デスクを覗き込んだアニは驚愕した。その弁当に既視感があったからだ――というのも、SNSでつい先ほど目にしたものと同じだった。少ない言葉と共に投稿される料理の写真に好感を持ち、投稿主をフォローしたのを覚えている。基本家庭料理なのだが、たまに作るプロ顔負けの料理や可愛らしいお菓子に添えられているぶっきらぼうな言葉がおかしく、密かに楽しみにしている。堅そうに思えるのに恋人との惚気をたまに話すのもギャップがあって面白い。それを見逃さないためにフォローをしたのだが―― 薄目で同期を見下ろす。たまに投稿される歪な料理とエレンを並べると、実にしっくりときてしまった。
先ほど見たSNSの投稿を思い返す。確か『しろくま』の言葉と共に弁当の写真が並んでいた。そしていつも以上に反応が多かった。何故なら普段美しく料理を盛り付けるのだ、器用な方なのだろうと皆思っていたと思う。実際私もそう思っていた…今日のキャラ弁の投稿を見るまでは。
「……しろくま、とか?」
「なるほど! やっぱジャンよりアニだな」
また喧嘩が始まりそうな雰囲気にさっさとオフィスから出ていくことにした。 あの様子だと恋人のSNSのことは知らないのかもしれない。知っていたとしても覗いてはいないのだろう。あの料理全てがエレンの為のものなのに本人が愛の大きさに気付いているかは分からない。
その日の夜『恋人はしろくまだと分かってくれた』という旨の投稿を目にしてから、アニは眠りについた。
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