haruka037
2025-01-11 17:52:28
2120文字
Public
 

ウツボの求愛

 初書きフロ監。
 監督生に片想いするフロイドが、一生懸命アプローチする話。
⚠️書きかけです。

「ねぇ、小エビちゃん。好きなやつっている?」
 唐突な質問に驚いて目を見開いた。
 その質問を投げかけて来たのは、前に立ってヘラヘラとした笑みを浮かべているフロイド先輩だ。
 質問の意図が分からずに戸惑っていると「ねぇねぇ、いるの?好きなやつ」と言って顔を覗き込まれた。
 顔が近い。
 思わず数歩後退りながら口を開く。
「別にいませんよ。好きな人なんて……
 そう言えばフロイド先輩は、パアッと顔を輝かせた。
「いないんだぁ。それじゃあオレとかどう?」
「はい?」
「オレの事好きになってよ。小エビちゃん」
「えっと……、それは難しいと言いますか……
 お断りしようとすると「えー」と不満げな声が上がる。
「なんで駄目なの?小エビちゃんはオレの事が嫌い?」
 悲しげに見つめられて目を泳がせる。
「嫌いじゃないんですけど、苦手と言いますか……
「なんで苦手なの?」
「実は、その……、私ウツボが苦手で……
 小さい頃連れて来られた水族館で、初めて見たウツボのあまりの恐ろしさにギャン泣きしてしまった事がある。
 それ以来、ウツボは苦手だ。
 あのギザギザとした鋭い歯や、鋭い目付きが怖くて堪らないのだ。
 フロイド先輩がウツボの人魚だと知った時、幼い頃に水族館で初めてウツボを見た時の恐怖が蘇って来た。
 フロイド先輩は悪い人ではない。
 ちょっと問題がある人かもしれないけれど、根っからの悪人ではないのだ。
 それは分かっている。
 でも、笑った時に見えるギザギザの歯に、どうしても怯えてしまう自分がいるし、ウツボの人魚と言うだけで苦手意識が芽生えてしまう。
 それはフロイド先輩と兄弟であるジェイド先輩もそうだけれど、彼は私がウツボが苦手なのを察してくれているらしく必要以上に接触しようとはして来ない。
 問題は目の前にいる彼だ。
 フロイド先輩はことある事に私に声をかけて来た。
 どうやら私が気になって仕方ないらしく、毎朝「おはよう、小エビちゃん。今日も可愛いね♡」と声をかけて来るし、たまたま廊下ですれ違う際も「小エビちゃん勉強頑張ってね。オレも授業サボって小エビちゃんに着いて行こうかなぁ」なんてふざけて笑っている。
 どうしても私に声をかけないと駄目らしいのだ。
 そんなフロイド先輩も、私がウツボが苦手だと言うのは初めて知ったらしく、シュンと肩を落としてこちらを見つめて来る。
「オレがウツボだから駄目なの?」
 潤んだ瞳で見つめられて、罪悪感を覚えた。
「駄目じゃないですよ。苦手だなけで、嫌いではないので……
 フロイド先輩を励ます意味を込めてそう返せば、彼は直ぐに立ち直って笑って見せた。
「そっか。じゃあオレ、小エビちゃんに好きになって貰えるように頑張るね」
 そう言ってバイバイと手を振ると、フロイド先輩は帰って行った。
 彼を傷付けずに済んだ事にホッとしたのも束の間、翌日からフロイド先輩の熱烈なアプローチが始まったのだった。

 
 オンボロ寮を出ようとしていると、玄関のチャイムが鳴った。
「はーい」
 ドアを開けてギクリとする。
「おはよう、小エビちゃん♡」
 そこにはフロイド先輩が立っていた。
「おはよう、ございます……。フロイド先輩、なにか御用ですか?」
「用はないけど、小エビちゃんの顔が見たくて来ちゃった♡」
 エヘヘと笑うフロイド先輩は「一緒に食堂行こうよ。朝ごはんまだでしょ?」と言って手を差し伸べて来る。
「あの……、今日は一人なんですか?」
 いつも一緒にいるジェイド先輩とアズール先輩の姿がない事に違和感を覚えた。
「えー?だって二人っきりの方が楽しいじゃん。行こ、小エビちゃん」
 そう言って戸惑っている私の手を掴んで歩き出すフロイド先輩。
 引っ張られるように歩き出した私を、グリムが少し離れた所から困ったように見つめて来る。
「あの、フロイド先輩。グリムも一緒でいいですよね?」
「だぁめ。今日は小エビちゃんと二人でいるって決めたの」
 そう言ってズンズンと歩き出したフロイド先輩に引き摺られるようにしながら「ごめんね、グリム……」と小さく呟く。
 グリムは見るからに寂しそうな顔をして私を見送った。
 ちょっと可哀想だな。
 後でツナ缶持って行ってあげよう。
 そんなふうに思いながらフロイド先輩に着いて行く。
 本当に強引な人だ。
 こっちの都合なんて考えてもくれない。
 フロイド先輩は、朝食を食べ終わるまで私から離れようとはしなかった。
 それどころか料理を運ぶ時も「重いでしょ?オレが持ってあげるよ」と言ってトレーごと私から奪ってしまうし、ご飯を食べる時も「はい、小エビちゃん、あーん♡」とスプーンで掬った料理を私に食べさせようとする。
 それらを回避しようとしながらも、結局回避出来ずに大人しくスプーンを口に含んだ。
 こんな恥ずかしい事は正直に言って遠慮したいのだけれど、断れば後が怖い気がして黙って従った。
 フロイド先輩はニコニコしながら「美味しい?」と訊いて来る。
 正直羞恥で味なんて分からないけれど、取り敢えず頷いておいた。
 
 
続く