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鮎
2025-01-10 23:38:12
2577文字
Public
WJ封神演義二次創作作品
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【超仙人万来2025冬 サンプル】灯火を辿って
pixivから移行予定につき、サンプル文もこちらに掲載。超仙人万来2025冬に持ち込みます。
「安能版オリジナル設定の火竜鏢盗んだ元弟子」と「仙界大戦後の天化」と「陳桐より名前が酷そうな陳桐の兄貴」と「干将莫邪伝説」を闇鍋に突っ込んで適当にかき混ぜて作りました。武吉っちゃんファンには大変申し訳なかった(「窓から見える」以来2回目)。
道徳は冒頭だけで、メインは天化と武吉です。オリキャラあり。
「これは
……
」
道徳が目に留めたのは、一対の鏢だった。怪我を負って寝台の上にいることを強制されていた天化は、それを太公望からもらった物だと説明した。訝しげに首をかしげる道徳に、天化は太公望から聞いた顛末を話す。
「そうか、妖怪仙人から
……
」
俯いた道徳の表情は、天化からは見えなかった。ただ、どことなく寂しげに、そしてほんの少し苦しそうに、息が震えるのを感じた。
「これな、元は俺のだったんだ。
……
昔、素行の悪い弟子がいてな、破門にしたんだが、洞府を追い出す時に、盗まれたんだ」
「はぁ?」
とんでもねぇやつさ、と天化は怒った。関節に負った傷のことも忘れて飛び上がるところだった。あいにく、動けない程度に痛み止めが効いていたせいで、布団の下で拳を握る程度しかできなかったが、じくりとした痛みがなければ師父に詰め寄って相手の名前を聞き出しただろう。
だが、怒る天化の傍で、道徳はなんでお前が怒るんだ、と笑った。笑い事ではない、と言った天化は、あの時はまだ幼かった。道徳は瞼を伏せ、もう生きていないと思うぞ、と告げる。
「妖怪と聞いたら悪だと決めつけるヤツだったから、な
……
」
お前が気にすることじゃない、と言われるも、天化は道徳が寂寥の色を瞳に宿すのを、見逃しはしなかった。
(中略)
「でも、それで同行するのが武吉っちゃんだとは思わなかったさ」
太乙から念押しの治療と説教を受けた後、偵察任務のパートナーが武吉と聞いて、天化は驚き喜んだ。誰であっても良かったが、気心の知れている仲間ならば気が楽で良い。
武吉は、自称こそ太公望の弟子であるスタンスを崩していないが、軍籍的には周軍の武将、すなわち人間側に属している。馬に乗るより本人が走る方が早いという類い希なる能力のため、戦場では馬に乗って歩兵を指揮する立場につくことはないが、代わりに部隊間の伝令役として駆け回っており、また太公望直属の戦況偵察役として、四不象に乗ったり、あるいは高台から俯瞰したりすることで軍師の立てた作戦がどの程度うまく行っているかを報告する役目を担っている。
「スパイの経験はないんですが、穿雲関の街はちょっと土地勘があるので、それで立候補したんです」
「あれ? 武吉っちゃんって豊邑の出身じゃなかったっけ」
「昔、穿雲関から大量に木材の注文が入って、それで納品するのに行き来したことがあったんです」
なので街の中の様子も、多少変わっているところはあるだろうが、ある程度知識があるという。
「となると、あとはどうやって関所の中に入るかって話か。流石に周側の入り口は厳重に閉めてるだろうし」
「それなんですけど、木材の運び入れは黄河から引いた運河を使っていたので、うまく荷物に紛れ込めれば入れるんじゃないかなって」
早速、武吉の知識が光った。幸い、今なら軍事物資の調達で多くの船が行き交っているらしい。なるほど、それなら一つ使える手がある、と、天化は指を鳴らした。
(中略)
「おいたわしや、黄家は大黒柱を失ったと
……
これも、妲己と紂王の悪政のせいだ」
そう、何度か声をかけられ、慰めを受けた。西岐では黄飛虎が妻と妹を殺され、憤慨して周に落ち延びた、という見方が大半だ。
「十二仙は、崑崙を守って死んだ。あの聞仲が、人間界の戦いを仙人界に持ち込みさえしなければ」
生き残った崑崙の仙道の恨み節も聞いた。お前の師匠は立派だったと肩を叩かれ、激励された。決まって皆がいう。
『妲己と紂王を倒して、恨みを晴らそう!』
(違う
……
別に、仇討ちがしたいわけじゃねぇはずさ)
母親が死んだと聞かされた時、心の中に復讐心がなかったとは言えなかった。しかし今にして思えば、天化は父親から、母と叔母の仇討ちをするのだと聞いたことが一度もない。四大金剛も、西岐に着くまでは必ずや仇を討つ、と息巻いていたが、それ以降、彼らから同じ言葉を聞いたことがなかった。
そもそも、父と師父を殺したのはいったい誰なのか。わかりきった話である
――
聞仲だ。聞仲は崑崙山を墜とすために仙界大戦を引き起こし、立ち向かった十二仙のほとんどを殺した。飛虎も、聞仲が直接手を下したというわけではないが、聞仲が金鰲島を巻き込まず、人として地上の戦場に居続けてくれれば、少なくともあんな悲惨な死に方はしなかっただろうし、もしかしたら戦場での和解の道があったのかもしれない。そもそも、あの最期の直前、聞仲が飛虎の話に耳を傾けてくれれば、二人が一時でも和解して亜空間から出る未来もあったのかもしれない。
(それでも、聞太師は俺っちにとっての憧れだった。オヤジと同じ道を進んでも、オヤジを越えられない。なら、俺っちが目指すべきは、あの時は聞太師と思った)
彼が一番身近にいた仙道で、いつも父の隣にいた友だったから。その憧れを、父と師父の仇とはとても見られなかったし、そもそも見られたとしても、彼はもうこの世にいない。
(この先、どうやって戦えばいいさ)
困ったことに、天化の宝貝・莫邪の宝剣は心の持ちようで威力が変わってしまう。楊戩から形見の宝剣を受け取って以来、天化はその刃を出そうと何度も試したが、実は宝剣はいつも沈黙で天化をあざ笑っていた。もともと持っている方の宝剣でさえ、時々刃が揺らぐことがある。まだ楊戩や他の仲間たちには知られていないと思ってはいるが、バレればいよいよ天化の居場所がなくなってしまい、途方に暮れるだろう。
(戦うことしか知らない)
なら、宝貝人間のようになりたかった。でも天化は彼のように盲目的にはなれない。天化の求める「強さ」は、あくまで手段でしかないからだ。
(誰かのためになんか戦えない)
だって、この世界はオヤジあってこその世界だったから。もしオヤジに認められた日が来たならば、その先に広がる道に生きる答えがあったかもしれないが、それを先導してくれるはずだった師父も、そもそもその道すらも霞の向こうに消えた。
(俺っち、どう生きれば良いかわかんねぇさ)
死にたいわけではない。ただ、道が見えない。道は、そもそもないのかもしれない。では作らなければならない。でも、どうやって?生い茂って地面を覆い隠す草をなぎ払おうにも、刃の方が答えてくれないのに。
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