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2025-01-10 00:27:27
1300文字
Public 🪨短いdcst夢
 

みちしるべ

お相手自由、SWと香りの小話
(オリジナル香水遊びをした時にお会いした相互様へお渡ししたもの)

 ふと鼻をかすめる香り。ついふらふら、その元をたどる癖がある。だって、この世界にはまだまだ娯楽が少ない。人工的な香りがないせいか、いつのまにか花や木のにおいに敏感になった。
 春は沈丁花、夏は梔子、それから秋は金木犀。においは季節の移り変わりを教えてくれる。雨になる前の湿った土のにおいがすると夏だなあと思うし、冬は冬で雪が舞う空気の中に蝋梅のかおりがひとすじ混じっただけでもう、春がすぐそこなんだってわくわくする。この世界だから好きになった香りがたくさんある。それに、この世界じゃなかなか出会えなくなった香りも。
 私は昔、ムスクが好きだった。前にそんなことをみんなで話してたら司くんが「買ってきてあげようか」って言うから、司くんがそんなこと言うなんて珍しいなと思ってたら「買ってくる」んじゃなくて「狩ってくる」なんだって千空くんがクククって笑った。ムスクのもとはジャコウジカのお腹の中にあるんだって! 慌てて止めた。(ていうかどこまで狩りにいくつもりだったの?!)
 そんなわけでムスクは今は懐かしい旧世界の香り。今のところは。

 好きこそものの、って言うしね。そんな羽京くんの一言で始めてみたハーブ園は香りの宝庫。おなじみのラベンダーは摘み取って乾かして、お風呂に入れたり枕元に置いたり。ローズマリーはフランソワさんに渡してお料理に。スペアミントはお湯を注ぐだけでおいしいお茶になるから、女の子たちに人気だ。特にキリサメちゃんのお口に合ったらしく、いつものキリッとした顔からほんの少し力が抜ける瞬間を見るのが、実は好き。言ったら見せてくれなくなりそうだから内緒にしてる。
 においじゃお腹はふくれないけど、気持ちがほっとするのだって大事なはず。いい仕事ねってゲンくんが言ってくれたのに気をよくして、嗅覚のアンテナが反応するところへふらふら、今日も行きます探検隊。
「一号!」
「はいなんだよ!」
「点呼終わり!」
「隊員二人しかいないんだよ〜〜」
「今日はサガラもチョークも忙しいみたい……あ、ねえねえ。あっちのほうから、」
 おいしそうな香りにつられちゃうのも仕方なくない? ニッキーちゃんがお菓子を焼くのを手伝って、お駄賃に味見の特権をもらう。ニッキーちゃんの作るものは、味はもちろん見た目がひと工夫してあって余計においしい! ジャムを真ん中に落としたクッキーはステンドグラスみたい。(ステンドグラス! 懐かしい響き!)

 そうこうしてたら、クロムくんがスイカちゃんを呼びに来て連れてった。彼女は忙しい。今や新世界期待の科学屋だ。
 世界は、あの頃とは違う。〝ドイヒー作業〟もなくなった。みんなそれぞれ活躍できる場所に散っていって、寂しくもあるけどみんなの近況は世界を駆け回る南ちゃんのレポートで知ることができる。

 さて、日の高いうちにもう少し足を伸ばしてみようか。このにおいに続いてるのは役に立つ植物? おいしい食べ物? それとも素敵な人?
 ふらふら惹かれて行っちゃう私を蜜を集める蝶々みたいだってあなたは笑うけど、じゃあ私を捕まえたあなたは一番いいにおいだったのかもね?