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バラ肉
2025-01-08 19:15:32
3046文字
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おかしたのはだれ?【Jブロ】
セルフリメイク第二弾。
とりあえずJブロ熱を落ち着かせるために…
ピアノを弾くブロ、最高かな?笑
(元ネタよ、ありがとう)
───全て、お前が手を欲した結果だ。
まるで罰を下すように笑う愛しい人は、残酷なほど気高かった。
+++++
目が覚めて最初に聴こえてきたのはピアノの音色だった。
タイトルは、寝起きの頭では思い出せない。だが、確か有名な一曲だったと思う。
ブラームス、だったろうか。ゆったりとした和音の響きが甘く切ないメロディを刻む。あの人によく似合った深みのある音色はそれだけで心地いい。
いつものように背筋をシャンと伸ばし、朝日に照らされながら真っ直ぐ鍵盤に向かっている姿が頭に浮かぶ。
『オレがピアノを聴かせるのは、お前だけだ』
照れくさそうにはにかむ顔は未だに脳裏に焼き付いている。ポンポンと頭を撫でる掌の感触も。
嗚呼! 想像だけでは勿体無い。
実際に我が目で確かめようと、ベッドから一息に跳ね起きる。昨夜の余韻でぐちゃぐちゃのシーツをそのままに、足元に無造作に落ちていた自分の服を拾い上げた。
全くこの年になって余裕もないなんて。
笑うしかない自分の有り余る欲求は、それこそ情けない先輩たちと大差ない。
とはいえ、寝室に来るなりジッと見てくる色素の薄い瞳に、理性なんてないに等しく。
もつれ合うように雪崩れ込んだ行為の余裕のなさを、床に転々と落ちている相手の衣服が物語っていた。
しかし、そこで不意に思うのは
——
この散らかった衣類の持ち主が今どんな格好なのかと言うことだ。
シャツやズボンはもちろん、下着の類もそのまま床で転がっている。
よもや裸でピアノを弾いているのか?
「っ!」
まさかとは思いつつ、慌てて己のボクサーパンツだけ履くとそのまま部屋を飛び出る。
我ながら、本当にどうにかしている思っても体は正直なもので。
ポロンッ・・・
―――
いきなりピアノのあるリビング目掛けて突入してきた侵入者に、鍵盤の音が静かに止んだ。
「
…
あ」
「
…
朝から元気だな、ジェイド」
そこには大きな窓から惜しげなく日光を浴びながら、グランドピアノ越しにこちらを伺うブロッケンレーラァがいた。
服は───着ている。
「ッ
…
ああ、そうだった
…
」
朝から愛しい人の演奏に舞い上がっていたのか。
先日、クローゼットの衣類を浴室のキャビネットに一部しまうことにしたのをすっかり忘れていた。
『着替えを忘れた時、取りに行くのが面倒くさい。お前がクタクタになるまで抱き潰すせいで』
そうぼやく相手に、何度もすみません!と頭を下げたというに。
「
……
いえ、その
……
少し早とちりをしてしまいまして」
気まずさを取り繕うように頭を掻く。
やはり寝起きの頭はまだ覚醒しきっていないらしい。一先ず洗面所で顔を洗ってこよう。
そう思い、踵を返そうとした所で、低い笑い声が耳に届く。、
「ククッ
……
お前、もしかしてオレがシャツもズボンも着ずにいるとでも思ったのか?」
「ッ!?」
まさに図星。
余りにも的を得た言葉に息を飲んだ。
いつの間にか下を向いていた視線がレーラァへと向かう。
朝日に白く照らされた姿は神々しくあるのに、そのニヤリと笑った顔が自分の心を掻き乱す。
「
…
レーラァ
……
」
その面白いものを見るような表情からして。この人はこちらに勘違いさせるため、わざと痕跡を残したに違いない。
全く、悪い大人の悪戯だ。
相手がこの人でなければ、悪趣味だと張り倒しているところだろう。
けれど、まるで児戯のようなお遊びをこの高潔な人がしたのだと思うと、それだけで腹の下が煮えるような錯覚を覚える。
ごくっ
…
唾を呑み込む音の大きさに、思わず頬が熱くなる。
「
…
ん?」
心底楽しそうに笑う口元、こちらを伺う細くなった目、陽光に照らされて輝くシルバーの髪。
全てがこちらを誘っているような気分になる。
当然、こうなったら目を逸らす事など不可能。
一瞬にして囚われる。彼へと。
そして心は体を動かし、廊下に向いていた爪先が彼へと向き直る。
「
…
酷い人ですね」
掠れた声は合図。知らずに足が一歩進む。
途端に、甘い匂いがふわりと鼻腔を擽った。例えるならスイカに似た甘さと言おうか。
他人を引きつける香りだ。
以前どうしても気になって問うた質問に「白檀、と言うらしいぞ」と意味深に笑った顔が瞼に蘇る。
女は麝香、男は白檀。異性を誘う、特殊な体臭。けれど、どうやら同性にも効果は絶大らしい。
エアコンも扇風機も稼働していない夏の屋敷は、窓からの風だけが頼りだ。
近付く毎に濃くなる白檀の香りにむせ返りそうになりながら、微かに汗の帯びた手首を掴む。
「レーラァ
……
」
このまま触れ続けても良いだろうか?
こっそり顔を伺えば、あたかも玩具を見るように弧を描く彼の瞳とぶつかった。
さも楽しそうに浮かんだ下弦の月は、子供時代に見た童話のチェシャ猫の笑みを彷彿させる。
こちらの出方を伺っている。
『さあ、お前はどうする?』
不敵な笑みを浮かべたまま問い合わ留美子眼差しに、一瞬にして耐え難い飢餓を感じた。
欲しい。
ベロリ。
その想いのまま、見せ付けるようにその手首を口元へ運び、舐めてやる。
微かに息を飲んだような音が聞こえたが、きっと聞き間違いだろう。
一度だけでなく、まるで猫が乳をねだるように白い手首の内側を血管に沿って何度も舐める。
塩辛さの中に、しかし甘さが舌に残る味は一歩間違えば病み付きになりかねない。
それを知っているのか。
「
…
美味いか?」
なんて、揶揄う声はさながら彼が奏でるピアノのように聴くものの心すら震わせる。
そしてそれは紛れもなく他者が楽しむためのもの。
「
…
ええ。とても
…
」
だから、手首の味だけでなくらその魅惑の声をもっと堪能するために己の唇を相手の顔に寄せ、薄い唇を無理矢理塞いでやる。
「
…
ッ、んぅ
…
」
何処までも甘い声、唾液、表情。
どこを切り取っても感じるその甘美さは、罪の味。
ぬるりと擦り合わした舌に、タイトな下着に抑えられた股間が一気に苦しくなる。
(
…
欲しい。何もかも喰らい尽くすほどに)
戯れでもいい。体だけでもいい。貴方に触れられる赦しがあるだけでオレは生きていける。
例えそれが一時でも構いやしない。
どうか、この甘い香りのする貴方と二人の世界を独り占めさせてくれ。
そう強請る強欲な口付けに、愛しい人はさも惑わすように優しく答えてくれる。
「責任は、お前がとるんだぞ
…
」
その後。
戯れのように触れる指に、頬を朱に染めて体を捻じりながら、愛しい人はそれは、楽しそうに笑っていた。鍵盤を弾いていた指が悪戯げに耳を弄る。女のように華奢ではないそれが、堪らない背徳感を抱かせる。
この人にとって、自分達の関係はきっとどこまでとまやかしなのだろう。
分かっている、そんなこと。
悪気なく惑わす、いけない人だという事を重々承知の上で恋に落ちたのだ。
「もちろん
…
全てオレのせいですから」
貴方に触れる禁忌を犯したのは紛れもなくこの身だ。
でも。
「先にこの心を侵したのは、貴方ですよ
……
?」
そう呟いた声をこの人は聞いただろうか。
別に、今となってはどうでもいいが。
(先に仕掛けたのは、本当は一体どちらなのだろう?)
不意に思った疑問は、しかし強くなる香りに全て曖昧に溶けていった。
この罪を、
この禁忌を、
この心を、
本当におかしたのは、誰?
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