あけみ
2025-01-07 22:35:49
2503文字
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【忍】心配の種は実りの種【大木先生がは組の担任の話】

忍たまの絵本があるのですが。そちらでは、担任は大木雅之助先生で、和風ファンタジーな設定なので妖怪とかお化けとか出てくる話です。

「大木先生、先ほどあの三人組が裏々山の荒れ果てたお堂に行きましたが、大丈夫ですかね」

「ん? 何故ですか?」

 今日の授業も終わり、明日の授業の予定を組んでいた大木雅之助の前に上級生の担任をしている教師に声をかけられた。その教師が口にしたあの三人組というのはもちろん、乱太郎、きり丸、しんべヱのことだ。忍術学園の騒ぎの種である三人のことは、他の教師の間で知れ渡っている。いい話という意味ではないので、は組の担任をしている大木はそのことが悩みの種だ。
 今日も補習授業として三人に裏々山のお堂にある用意した巻物を取って来いと命じたばかりで、指摘されたことに不手際はないはず、と首を傾げた。
「いえ、最近そこをねぐらとしている山賊がいると聞いたので」
 指摘を受け、大木は納得し頷いた。
「ああ、それは北にある裏々山のことでしょう。三人に行かせたのは南の裏々山ですから」
「ええ、ですから三人が向かったのはその北の裏々山なんです」
「はい!?」
 教師の言葉に、大木はあんぐりと口を開く。眉をよせ、そんなことあるはずがと思いたかったが三人のことなので正反対の方角へ向かったのもありうる話だ。もちろん、そこには用意した巻物はないし、山賊がねぐらにしている……と考えて大木はキッと眉をつりあげる。
「あーのーバカタレどもがッ!!」
 そう叫ぶと忍術学園を飛び出した。


 こういったことは毎度のことで、きっとまた面倒くさい事件に巻き込まれているに違いない。それに、と、大木はゾクリと背筋が寒くなる気配を感じた。今回だけは嫌な予感が大木の脳裏をかすめるのだ。
 北の裏々山へと走り、三人が通った痕跡がある道を探す。これではとても追いつけそうにないので、山賊がねぐらにしているお堂へと足を速めた。木々が周囲の景色を遮る。こんな場所に足を踏み入れば、山から出るのも難しい。大木は舌打ちした。
 瞬間、血の臭いが鼻をかすめる。一歩踏み出した足が何かに触れ、鋭く切りそろえられた竹が地面から突き出す。
「ッと、」
 突き出した竹を寸前で避けた。人工的に仕掛けられた罠に大木はますます眉をよせる。こんなものがそこらじゅうに仕掛けられているようだ。
「あいつら……
 三人の顔が浮かび、大木はらしくもなく青ざめる。さきほどの血の臭いと、この先にある罠があきらかに悪意に満ちていることに不安を感じた。
「ッくそ!」
 顔を上げると日がだいぶ傾いてきていることに気づく。日も暮れ始め、夜になればますます三人を見つけにくくなる。大木は拳を握り締めた。補習授業とはいえ、やはり様子を見るためについて行くべきだったとか。なぜ今日にかぎって山積みの仕事を優先させ三人だけ行かせたのかとか。出てくるのは後悔の念ばかりだった。
 大木は目の前にある木に拳を叩きつける。冷静になれと、自分を叱咤した。いつも、は組の皆に言っていることではないか。大木は深く息を吐く。
 すると、背後から草がこすれる音がした。考えるより早く体が動き、右手には手裏剣が握られている。
「きり丸……?」
 草むらから現れた人物に、大木は目を見開いた。夕刻の影で見えにくいが、担任の自分が見間違えるはずがない。それはきり丸の姿だった。
「大丈夫か! 他の二人は?」
 ホッとして近づこうと足を動かしたが、目の前にいるきり丸の表情が無表情だ。違和感を覚え、足が止まる。
(妙だ)
 と、大木の第六感がつげた。背筋が凍るような冷たさを感じ、すぐに身構えた。
「きり丸じゃないな。何者だ?」
 きり丸の姿をした何かに大木は問うと、それは黙って一方へ指差した。
「?」
 よく見ると、きり丸の姿をした何かは別の生き物と重なって目に映る。少し大きな耳と尾は黄金色の尾だ。大木はハッと目を丸めた。
「狐か」
 目を細めて大木がきり丸の姿をした狐の妖怪を見ると、狐はこくりと頷く。再び指をさし狐はその方向へ歩いていった。
……ついてこいと言うことか」
 以前、きり丸から聞いたことがあったと大木は思い出す。は組が荒れ果てたお堂で一夜をあかしたとき、盗賊を追い出すために狐の妖怪と仲良くなったと。その時も狐はきり丸の姿をしていたという。その姿がよほど気に入ったと見える。大木は狐のあとを追いながら思った。狐に化かされ騙されているのかもしれないという不安は過るが、
(仲良くなったと言った教え子の言葉を信じるのもええじゃろう)
 と、大木はいくぶん軽くなった思考に笑みを浮かべた。


「大木先生!」
 木々の茂みに隠れている三人の姿を確認して、大木は胸を撫で下ろす。駆け寄ると、きり丸が足を怪我して歩けない状態だった。乱太郎の的確な応急処置のおかげで、学園に帰るまでにはなんとかなりそうだ。大木は乱太郎としんべヱの頭を撫でる。
「仲間を第一に考え、この場にとどまったのはエライぞ!」
 忍者としては褒められたことではないが、仲間を大事にしない忍者などこの子たちにはなってほしくない。大木はきり丸の前にしゃがみ背を向けた。
「ほれ、わしの背中にのれ」
「え、いいっすよ。歩けますって!」
 こんな状態でなおも強がるきり丸に、大木はやれやれとため息をついた。それからニヤリと笑んでこう言う。
「今日だけ特別じゃ。タダでわしの背中にのせてやるぞ」
「のりまーす!」
 ぴょーんと飛びつくように大木の背にきり丸が抱きついた。なんてゲンキンな奴なのだと思うが、触れた体温の温かさに大木はホッとする。
「よし、日が暮れる前に学園に帰るぞ!」
「「「はーい!」」」
 元気がいい三人の声を聞き、大木は笑った。やはり、こいつらの声を聞くまでは安心できないようだと苦笑する。もはや教師の病気だ。
 ふと、視線を感じ振り返るとそこには稲荷が祀られている小さな祠があった。大木は手を合わせ、感謝の念を表す。
 その様子が妙だったのか、三人が首をかしげているのが見えた。
「妖を味方につけたお前らは、わしより優れた忍者になるかもしれんな」
 抱えている子どもらの将来を思い、大木は笑う。






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