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ろころころ
2025-01-05 22:10:04
2884文字
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星の楽園
キトウリワンドロ
天使の少女
流れ星
が落ちた、その瞬間だけ、
偽りの園
聖都
は、
星降る都
彼の愛した楽園
だった。
流れ星は、人の子の願いを叶える。
だから、その
流れ星
が降り注いだ時、少年は縋るように願った。
"──────僕の『星都』を帰して"
流れ星は、少年を救う天の御手であった。
******************
「─────おや?君、来てくれたんだね。ああそこに座って。もちろん、ティーの準備は出来ているとも」
星が輝く瞳を、少年は忙しなく動かす。愛しい人への愛のウインクは忘れずに。勿論、美味しいお菓子とお茶の準備も忘れてはいない。
「やっほーキトくん!今日は招いてくれてありがとう!
…
にしても、ここがキトくんの部屋?なんというか
…
君らしいね」
天使の少女は、金色の髪をふわふわと揺らして物珍しげに辺りを見渡した。
壁に掛かるのは劇の1シーンであろう賑やかな様子の写真や絵画、戸棚には豪華なティーカップが並び、クローゼットの上には煌びやかなアクセサリーが輝いていた。
そして、最も少女の目を引いたのは、
「─────キトくん、これって
…
」
「そうさ。今日、君を招いたのはそれについて見て欲しくて。他にも理由はあるんだけれどね」
少女の視界いっぱいに広がるのは、街を表した大きな模型。その中でも、最も目を引く中央に聳え立つお城は、現在少女達がいる
この場所
である。
そして、その城下町の広場には豪華なサーカステント。さらにその奥にはジェットコースターのレールやメリーゴーランド、大きな観覧車。
見ているだけで胸が踊るような数々の模型であったが、その中に天使であれば皆がよく知るような、神の信仰を表す十字架を光らせた建物は存在しなかった。
「それはね?これから再建する予定の"星都"の模型さ。どうかな?」
「今よりもっと大きな遊園地とか劇場が出来る
…
うん!すっごく楽しそうだね!それに
…
」
少女は少年の手を取り、太陽のような笑顔を見せる。
「私は君の自慢の都を、君に案内して欲しいな!」
少年は、宝石の瞳をぱちぱち、と瞬きさせる。
そして、少女言葉に答えるように、その細身の手を取ると片膝を着いてしゃがみ、その手の甲にそっと口付けた。
「──────喜んで、お姫様。僕でよければ、君を星の園へ案内しますよ」
少年の演技じみた様子に、少女ははくすりと笑う。
「ありがとう、王子様。楽しみにしてるね!」
******************
「今はまだ教会や大聖堂の解体中だけど、もう少しすれば広場や遊園地の工事過程に入ると思う。その時は、僕も演劇やショーで街の皆を応援しようと思うんだ」
少年は注いだ紅茶を、ソーサーと共に少女の前へと置いた。
「ありがとう!
……
あれ?このお菓子
…
」
「ふふ、気づいてくれた?十字架の光輪を描いたアイシングクッキーと、白い翼の形にしたメレンゲ。君をイメージしたんだ。折角来てくれるのだから、お客人には最高のおもてなしを、ね!」
少女はお皿から器用に羽の形に固められたメレンゲを1つ、手に取る。真っ白な翼がふんわりと描かれている。口に入れると、サクッと音がなりじんわりと甘さが広がった。
「ん〜!おいしい!」
「そうかい?それは良かったよ!頑張って作った甲斐があったね!
…
さて、本題なんだけど
…
」
「えっと、君が劇をするって話?もちろん、私は応援するし全部見に行くよ!」
「そうそれ!それなんだけどさ
…
」
少年は一枚のパンフレットを取り出し、少女の眼前にじゃん!と広げて見せた。
「"星降る都の天使様"
…
?
…
これって
……
」
「そう!君を主人公にした、脚本を作ったんだ!君は必要無いって言うだろうけど、僕はどうしても皆に知って欲しかったんだ。"星都"を再建出来たのには、僕に希望を与えてくれた"星"がいたから
…
ってことを」
少年は、ちょっと待ってて、と言って席を立つ。
そしてシルクのカーテンの方へと駆け寄ると──────それを思い切り捲った。
そこには──────
「うわぁ
…
!綺麗!」
青いグラデーションのレースに銀色のビーズが散らばっては輝く、美しいドレスがあった。
「綺麗でしょ?これが主人公の衣装なんだ!夜空をイメージしたデザインでね。背中には翼モチーフの刺繍が入ってて、ネックレスとブレスレットは天使の光輪をイメージしたんだ。
──────僕はこれをね、君に着て欲しいんだよ」
「えっ?私が?主演の方が着るんじゃ?」
「そう!それなんだけどね
………
ウリエル、僕と一緒に劇に出てくれないかい?」
少女は驚いた表情を浮かべたが、困ったように微笑んだ。
「うーん
…
キトくんのお願いは聞いてあげたいけど
…
でも私、劇なんてしたことないよ?」
「大丈夫さ!君の堂々とした天使たる姿は、ベテランの役者にだって顔負けしないさ。この都で誰よりも長らく演劇に携わってる僕が言うんだから、間違いないよ!」
少年は自分のことでないのにもかかわらず、自信満々に胸を張った。
「で、出来るかなぁ?確かに、楽しそうだなぁとは思うよ。でも私は君の劇を見ているのだって好きだし
…
」
「あぁ、もちろん無理強いはしないよ!君が嫌だったら断ってくれても良い。このドレスは元々君にあげる予定だったから、他の衣装を頼んでそっちを使うさ」
だから心配はしないで、と少年は寂しげな瞳を見せるものなので─────少女は勢いよく立ち上がった。
「わかった!私、やってみるよ!」
「えっ?そんな
…
いいのかい?」
「うん、キトくんも出るんでしょ?それなら私も大丈夫!劇は楽しそうだし、偶にはお客さんの笑顔を見る立場になるのも良いかなぁって!」
「ほ、本当に!?良かった
…
ありがとう!勿論お礼はするさ!遊園地一日貸切でも、君の為にサーカスを開いても!お菓子100個だって作るよ!」
何がいいかな?と先程と打って変わってキラキラとした笑顔を見せる少年を、少女はくすっと笑いながら見守る。
「そんなお礼なんて!こんなに素敵なドレスも用意して貰ってるし、気にしなくて良いのに。私は、キトくんが笑ってくれていればそれが一番嬉しいよ。
──────ね、キトくん?大好きだよ」
少女は少年に囁く。天使の囁きは、いつだって少年の心を奪うのだ。
「
…
あはは!キトくんは可愛いね!私は君のその表情が見れただけで十分かな!」
「う
…
君はまたそんなこと言ってさぁ!もーっ!演劇中に変なことしないでよね!?」
少年にとっての宝箱は、今では星降る都となった。それは少年の思い出であり、夢であり、希望であり、楽園であった。
かつて失われた楽園は1人の天使によって姿を取り戻し、今もその天使によって見守られている。
こうして星の楽園の王子は、その
守護天使
流れ星
と共に永久なる時を歩むのだ。
Fin.
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