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よるはこ
2024-03-04 14:02:37
2354文字
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frmm
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【ステラ兄弟】night,night,sweetwinkle
ルタの寝言に右往左往するクラのほのぼの話。
「ルタ、お風呂あいたよ」
お風呂から上がった僕は書斎のドアをノックして声をかける。いつもならルタの返事が中から聞こえるはずだが、今日の部屋の中は静まり返っていた。居ないのかなとドアを開けて中を確認する。書斎には占星術の本の他に天文学、神話、料理、機械、僕らの好きな物語の本がたくさん棚に並べてあって、机の上には占いの道具も置いてある。僕らの仕事場でもあった。
そして部屋の真ん中のカウチソファの上に僕の片割れ、ルタが横たわっていた。手に読みかけの本を持ったまま、おだやかな寝息を立てている。どうやら疲れて眠っているようだ。僕は音を立てないように書斎に入って、ソファのかたわらに立つ。手からそっと本を抜き取ってもルタは目覚めなかった。
「おつかれさま、ルタ」
僕はささやきながらルタの頭を撫でて、靴を脱がせてブランケットをかけた。
そういえばルタの寝顔をじっくり見るのって珍しいかも。僕は朝が弱くていつも早起きのルタに起こしてもらってばかりだ。このやすらかな寝顔を守らなければ。床に膝をついてルタの寝顔に見惚れていると、薄い唇から吐息のような声がもれた。
「
…
クラ
……
」
あ、僕の夢を見ている。嬉しいな、どんな夢を見ているのかな。
「クラ
…
カニを裏返しては
…
いけないよ
…
」
本当にどんな夢を見ているんだろう。ルタって結構寝言言うんだ。生まれてからずっと一緒に暮らしてきたのに、新しい発見だ。
「ドーナツの穴に
…
ペンギンを?」
入れちゃダメだよルタ。
「土星の輪っかに入れようよ、クラ」
そこにも入れたらダメだルタ。
どうしよう、ルタがレム睡眠に入って想像力豊かな夢を見ている。このまま放っておいていいのだろうか。何か些細なキッカケで悪夢を見てしまうかもしれない。ただ起こすだけなら簡単だ。けれど、今はただスヤスヤと寝ているだけだ。この安眠を邪魔したくない。
僕はルタの双子の片割れなのだから、絶対に悪夢なんて見せないようになんとかできるはずだ。
僕はおまじないの本を開いて安眠のページを読む。『枕元に玉ねぎを吊るして呪文を唱える』なるほど、僕はキッチンから玉ねぎ二つとタコ糸を持ってきて結んでソファの背もたれにかけていると、ルタがまた寝言を言った。
「もちもちのシャンプー
…
サクサクの金魚
…
」
よし、まだ安眠のようだ。他にも僕ができることはあるだろうか。そうだ、寝室に置いてあるルームフレグランスをここに持ってこよう。ルタの好きな月の金木犀の香りだ。夢の中まで届くようにそっと机の上に置くだけで、書斎の空気がさわやかな甘さになる。
「クラ、ポトフを作ろう
…
隠し味は
…
金星?じゃあすりおろさなきゃ」
夢の中の僕はいいなぁ。ルタと一緒にお料理している。いいや、僕だってルタの安眠を守る使命がある。次は何をしよう。そっとルタの頬に触れてみた。
…
少しひんやりしてる。寒くないかな、湯たんぽを持ってこよう。
僕は温めた湯たんぽをカバーに包んでルタの足元に差し入れた。ポカポカになってくれるといいな。
「うーん、クラゲは右でウツボは左
…
」
あ!暑かったかな。僕は慌てて足元から湯たんぽを出した。ハラハラしながらルタを見守る。
「やめようよクラ
…
わんこカツ丼は
…
あぁ、もう8杯も
…
」
何やってんだよ夢の中の僕!ルタを悲しませるな!
あぁもう、直接ルタの夢の中に入れたらいいのに。そしたらルタの心配も恐れもどんな悪夢からも僕が守れるのに。
「クラ
…
」
ルタ、ずっと僕の夢を見てくれている。
僕は床に座ってルタの手を握った。冷えたルタの手に僕の体温を分け与えるように。この暖かさがルタの安らぎに繋がればどれだけいいだろう。
「クラ
…
」
微笑みながらまどろむルタを見ていると僕もつられて眠くなってくる。瞼が重い。慣れないことをして疲れたな、少しだけ休もう。手を繋いだまま眠りの穴に落ちかける直前、そういえば呪文を言い忘れていたことを思い出した。
「night,night sweetie」
ルタにも僕にも、幸せな夢が待っていますように。そう祈りながら僕は眠りに落ちた。
⭐︎ ⭐︎
意識が覚醒してくると、不意に手と膝に心地よい暖かさを感じた。それと同時に、寝てしまう前の記憶も思い出す。あぁ俺は読書の途中で寝てしまったはずだ。だけど今は暖かい物に包まれて手を握られている。クラのおかげかな。
なんだか今夜の俺は楽しい夢をたくさん見た。クラに早く話したいな。ワクワクした気持ちで俺は目を開ける。
目の前には玉ねぎがぶら下がっていた。
「たまねぎ
…
?」
玉ねぎ。玉ねぎかなあれ。どうしてこんなところに玉ねぎが。まだ夢の中だったかな。
頭が無数の疑問符で埋め尽くされ、さっき見た夢の記憶は遙か彼方に追いやられてもう思い出せなくなった。ただ楽しかったという気持ちだけが足跡のように残った。体を起こすと、手を繋いだクラが俺の膝の上に頭を乗せて眠っていた。そして周りにはおまじないの本と寝室にあったはずのルームフレグランス、湯たんぽなどが散乱していた。俺は大概のことを察して、
「クラ、頑張ってくれたんだね」
ありがとうの気持ちを込めてクラの頭を撫でた。
「
…
ルタ
……
」
わぁ、俺の夢を見ている。楽しい夢を見ているだろうか。
「ひよこってy軸も黄色いね」
またおかしな寝言を言っていて、俺はクスクス笑ってしまう。俺はクラの寝言を聞くのが大好きだ。発想力豊かな夢を見て、そのお裾分けを口から言葉にしてこぼしてくれる。
お互いにポカポカと暖かい手を大事に、大切に、握る。
優しい片割れの夢を今度は俺が守ろう。俺は床に座り込んで寝ているクラを抱えて寝室へと向かった。
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