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よるはこ
2024-02-22 16:14:17
1621文字
Public
mp100 神徳
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【神徳】真夏の硝子味
ただいちゃついてるだけの話。
「ねぇ、ビー玉って硝子の味がするよね」
八月の茹で上がるような暑さの放課後、神室に誘われた俺は買い食いならぬ買い飲みをしていた。
埃の被った化石のような駄菓子屋で二人してラムネ瓶を買い、河川敷沿いの橋の下で並んで座った。
橋の影を通る風は思いのほか涼しく、冷たいラムネが火照った身体の腹の底から冷やしてくれて一息ついたところに、神室が意味の分からないことを口走った。
はぁ?と言いながら夏の日差しで輝く水面から隣の神室へ視線を移す。
隣に置いてある瓶にはまだラムネが残っているが、プラスチックの蓋が開けられ中のビー玉が無かった。
そして当の神室はまるで飴玉でも転がしているかのように口をもごもごと動かしていた。
「なにをやっているんだ、お前
…
」
流石の俺でも少し引いた。まさか中学生にもなって自らビー玉のような玩具を口に含むとは。
夏の暑さで脳みそが固ゆでになってしまったのだろうか。
「それは食い物ではない。出せ」
神室は横目でちらっと俺を見ると、共感されなかったことに納得できないような唸り声を出しながら、またビー玉をころころと舐めだした。
飴玉と違って硝子でできたビー玉は神室の歯に当たると固く高く澄んだ音が鳴った。
薄い頬と唇の向こう側で神室の舌に舐め転がされた硝子が歯にぶつかって鳴る音。
その音に少し劣情を催されつつも、いつまでも無機物を口に含んでいる幼児の様な行為を止めさせたくなり、
「神室」
少し怒気を含めて名前を呼ぶと溜息を吐きつつ、こちらを向いた。
神室の形の良い眉と深い二重の線と大きな虹彩全てがつまらないと訴えていたが構わず、出せともう一度言った。
拗ねたような顔をしていた神室だったが、ふいに閃いたかのように笑った。
嫌な予感がしたが、少し遅かった。
「分かった、出すよ」
そう言うと神室は急に俺の腕を掴み、そのまま強く引き寄せた。
乱暴に口づけられるのと同時に逃げられないように首根を押さえられる。
「っ!
…
うぅ
……
」
引っ張られた勢いのまま合わせた唇は互いの歯にぶつかり、やわらかい薄皮がきつく挟まれた。
痛みに思わず呻く。
それに構わないまま神室の舌は痛む唇をなぞるように這わせてきた。
神室が今からしようとする行為をなんとなく察して、口を開けることを拒否した。
しかし、腕を掴んでいた手は肩にまわされ、首根を押さえていた方の手も徐々に上がり後頭部をしっかりと固定された。
逃げられない。
神室の細い腕なら力任せに突き放すことも出来る。だが、下唇を舌先で舐められ吸われ甘噛みされているとその必死さを拒絶することは忍びなかった。
例えやろうとしていることがどれだけふざけていてもだ。
ほだされているなと思いつつも、諦めて口を開ける。
「
…
んぅ
………
」
案の定、小さく固く丸い物が入ってきた。誤って飲み込まないよう慎重に舌で受け取る。
神室から解放され、唇や腕が離れた隙間に空気が流れ込んで初めて、自分が熱く汗ばんでいることを知った。
甘いラムネを飲んだせいか、それとも身体が熱いせいか、粘ついた唾液は長く糸を引き、互いの舌を繋いだ。
「ほら、出したよ」
なんとも図々しい笑みを浮かべて腹の立つことを言われたが、口の中の舌触りの良い物が邪魔で何も言い返せずにいた。
「ね、徳川、硝子の味する?」
妙なことにこだわるなと思いつつ、口移された硝子を味わった。
つるりとするそれは神室の体温に温められていて神室の唾液が絡み付いていた。
ひととおり舌で転がした後、ビー玉を吐き出し正直な感想を述べた。
「お前の味がする」
俺の返答に一瞬呆気にとられた様な顔をして、
「徳川ってホント真面目だなぁ」
すぐにはにかむように笑った。
「そういうとこ大好きだよ、ありがとう」
そうか俺もだと言いつつ神室が残していたラムネをお礼として勝手に頂いた。
神室はすぐそれに気づいて憤慨したがお構いなしで全て飲み干した。
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