ゆうな
2025-01-04 23:43:19
3526文字
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【福袋】

緑谷目線の同棲爆轟/福袋をダシにイチャつく二人
#爆轟版深夜の真剣60分一本勝負

◆Pixiv:ログ2に格納済み
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24418260

「轟くん! こっちこっち。明けましておめでとう」
「緑谷、お待たせ。今年もよろしくな」
「今年もよろしくね! 大丈夫? 眠たくない?」
「うん、ちゃんと寝てきたから大丈夫だよ」
「良かった! それじゃあ行こうか」
 一月一日午後一時。轟くんとショッピングモールで待ち合わせ。今日は初売り&福袋デー!
 ヒーローが多少暇になった現代社会、大晦日から元旦にかけてのパトロールは変わらずに行われていた。しかし勤務にあたっていたものは出来るだけ休暇を取得するよう公安委員会よりお達しが出ているため、毎年僕一人で楽しんでいたヒーロー福袋を今年は二人で買いに来ている。僕が福袋について毎度熱量高く報告していたからか轟くんから誘ってくれたのだ。
 ただ轟くんは恋人であるかっちゃんと同棲中だ。なかなか合うことのないヒーロー同士の休日なのに、一緒に過ごさなくて良いの? と尋ねればそこまで過保護じゃねえよと返される。それならばとこうして買い物に来ているのだが、正直僕はその恋人から人の彼氏を夜中まで連れ回してんじゃねーぞという圧を日頃からひしひしと感じまくっている。まあ毎回僕が話しすぎちゃうのが悪いんだけど……。なので、時間がかかる福袋開封は帰宅後ビデオ電話越しで見せ合おうということで決定した。夕飯を食べながらいつも通りヒーローについて熱弁してしまった後、また後でとその場で解散し、そして今。
「轟くん見えてる?」
 パソコン画面に映るのはさっき別れたばかりの端正な顔立ちの友人だ。僕の問いに頷いてはいるものの口がパクパクと動いているだけで声がこちらに届いて来ない。ジェスチャーでそれを伝えると困ったような顔で今度は画面の横に向かって何かを喋り出す。すると視線の先から見慣れた幼馴染の顔がぬっと出てきて、それから直ぐに二人の声が機械を通して耳に入る。聞こえていることを伝えると轟くんはパッと顔を明るくさせた。
「お、できてるって。爆豪ありがとな。このアプリ使うの初めてだったんだ。緑谷も今日はありがとう」
「こちらこそ! 久しぶりに轟くんと遊びに行けて楽しかったよ。かっちゃんも明けましておめでとう。昨夜もお疲れ様」
「おー今年は大した混乱も無かったな」
 しばらく三人で話した後かっちゃんはお風呂に行くと言うのでじゃあ始めよう、と本日の戦利品を並べる。
 ヒーロー関連の福袋は種類が多く、元クラスメイトのみんなも様々なグッズを展開しているから競争率がかなり高い。それぞれがメインの福袋は残念ながら手に入れることはできなかったけど、プロヒーローセットという風に何種類か纏められているものもあったりして轟くんはそれを購入していた。僕はオールマイト関連と、他のヒーローや皆のものも買っていたらすぐに予算オーバーしてしまった。嬉しい悲鳴だ。フィギュアが一番当たってほしいけど、それ以外もタペストゥリーとかブロマイドとか持っていないのが当たるといいなあ。持っていても保存用になるから全然良いんだけど。
 はやる気持ちを抑えながら轟くんと一緒に袋を開けていく。最初に手に取った袋の中には見慣れた親友たちの顔が見えた。
「あ! ショートとインゲニウムのマスコットセットだ! これは再販分のやつだね。初回生産分はラジエーターの塗装が全体的にちょっと暗いんだ。どっちが良いかは人によるんだけど僕は古傷っぽくなって雰囲気が出てるから再販分の方が好きなんだよね。持ってないから嬉しいなあ。えっしかもグラデーションがちょっとかかってる!? これは初回生産分にはなかった仕様のはず。うわあこんな所が違うなんて知らなかった……
「こっちはデクのぬいぐるみと……お、このオールマイトのタオル、緑谷は持ってるやつか?」
「うん、それは持ってるよ! デザインがかっこいいよね! シルバーエイジの物はフィギュアはよく見るんだけどこういうタオルとかの布系は種類が少ないからね、とりあえず三つ買ってあって一つは観賞用として壁に飾ってあるよ」
「じゃあ俺も家で使おうかな。タオルそろそろ買い替えようと思ってたんだ」
「え、使うの?」
 僕のようなヒーローオタクとそうでない轟くんの差を再認識したりしながらその後も大人気のルミリオンのグッズなんかを当てたりしてかなり盛り上がった。何よりお互いのグッズを当てられたことが一番の成果だ。でもひとつ気になるのはここまでで大・爆・殺・神ダイナマイトのものが一つも出ていないこと。できれば轟くんに当てて欲しかったけどもう轟くんは全て開け終わっていて、画面越しに僕の手元をワクワクした目で見ている。
 果たしてあのかっちゃんが僕のところに来てくれるだろうか。出来ればその期待に満ちた瞳に応えたいけれど……そう思いながら最後の福袋を開封する。あれ? この特徴的なオレンジと黒色はもしや。
「あー! 轟くん! かっちゃん出たよ! これすごく人気だったダイナマぬい風ドデカ抱き枕!」
 くしゃくしゃになった圧縮袋にはいつものヒーローコスチュームを着た、目つきは悪くとも可愛らしい顔面がパンパンに詰まっていた。袋を開けたらきっと結構な大きさになるのだろう。
「おお。すごいなそれ。良いな」
「本当は轟くんに当てて欲しかったよ……譲ろうか?」
 デザインも愛らしいぬいぐるみ風とはいえ、かっちゃんの抱き枕を僕が持っているというのはちょっとキツい。だから結局他の人にあげることになるとは思うけど、どうせなら轟くんに持ってて欲しいな。羨ましそうな顔をしているし。
 そう提案すれば轟くんは「くれるのか」と一瞬目を輝かせるも、ふと何かを考えるように顎に手を当てて、それからふわりと頬を綻ばせた。
「いや、気持ちは有難いけどやっぱり大丈夫だ。うちには本物が居るし、抱き枕ではないけどいつでも抱き締められるからな」
 遠くから咽せるような声が聞こえる。いつの間にかお風呂から上がっていたかっちゃんにも柔らかい声色が聞こえていたのだろう。ねえ君の恋人は相変わらず凄く良い顔でとんでもない惚気話をしていてこっちが照れちゃうよ。野暮なこと訊いてごめんね、と伝えて福袋開封はそこまでとなった。

 まだまだ話し足りない気持ちもあるけど結構遅くなってしまったし、それはまた今度でもいいだろう。それじゃあまた、と自分のカメラを切りマイクをミュートにする。沢山話せて楽しかったなあ。
 そのままアプリの退出ボタンを押そうとしたが、轟くんのカメラとマイクが未だ入ったままであることに気付いた。オッドアイがきょろきょろと画面の上下左右を見回している。慣れてないって言ってたし切り方がわからないのかな? 教えてあげようとカーソルをマイクのマークに持っていき、ミュートを解除しようとしたとき。横からぬっと腕が伸びてきて轟くんの頬がむにっと摘まれる。あ、かっちゃん。クリーム色の髪が見えて、そのまま両手でお餅みたいに両頬を伸ばしている。
 さっきと雰囲気違うけどもしや僕はもう居なくなったと思ってる? 見てるよ、今もすっごい見てる。
「おい、クソデクに想像の余地を与えてんじゃねえ」
「なんださっきの抱き枕の話か? 本当のことだろ。ほら、こうやってすぐにぎゅってできる」
 そう言って轟くんがかっちゃんにハグをする。抱き締められた幼馴染の顔が信じられないくらい蕩けていて、眉間にはきゅうっといつもと違うタイプの皺が刻まれる。あ、これ見ちゃいけないやつだと瞬時に察してしまった。君ってそんな顔できたんだ。それに対して轟くんも花まで飛んでそうな表情をして……あ、キスした。しかも「爆豪」と呟く声がもう既にかなり甘ったるい。君も画面付けっぱなしなこと忘れてない?
「このぬいぐるみ、どーすんの」
「デクのか? そりゃ飾るけど……あ、ベッドのさ、ヘッドボードんとこ。あそこ空いてるし大きさもちょうど良くねえか? 三人で寝られるな」
「ざっっけんな。何が楽しくてこいつに見守られながら寝なきゃなんねえんだよ」
 君たち一緒のベッドで寝てるんだ。かっちゃんそういうの別々だと思ってたけど……そうなんだ……いや、マズい、こんな姿を見ているのがかっちゃんにバレたら次に会った時に何をされるかわからない。僕も君のそういう本気の顔はあまり見たくないし、さっさとグッズを片付けて寝てしまおう。
 僕のぬいぐるみが傷だらけの手に掴まれて、ドンと画面の前に置かれる。あれ、もしかして君気付いて……いやもう考えるのは止めておこう。その横で床に倒れていく友人たちの幸せそうな表情に目を細めながら、僕は目蓋と共に静かにパソコンを閉じた。