ぽふむん
2025-01-04 22:26:46
2179文字
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私に触れて

#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負
「山茶花」「お屠蘇」
しのぶちゃん囚われif?鬼飼いif?

湯あたりというより酔っ払いしのぶちゃんです


庭に植えられた山茶花の赤い花に、白い雪が覆いかぶさっている 。
霞む視線に見えるその光景を霞む視界で眺める。
(キレイ……そして……)

耳年増な娘には、なんだか淫靡な光景に見える。
まるで、白い柔肌に潜む花芯のよう。
(私だって女の子……姉さんが散った歳をすぎた年頃の女の子……でも)
しのぶは、あの当時の姉より女らしさにかけると思っている。
姉は、もっと嫋やかで美しい、優しい女だった。
芍薬のような、艶やかな女だった。
方や自分は……
あの山茶花の花につくチャドクガのよう。
決して周りのしのぶの評価はそんなものでは無い。
種類はもちろん違うが、かわいらしい年頃の娘が、無理して背伸びをしている。
ただそれだけの事なのに……
でも、しのぶはそう密かに思っていた。
額がひんやり心地よい。
(なんだろう……これ……冷たくて気持ちいい……身体が熱いよ……もっと……)
額に触れた『その、なんだか冷たいもの』を首筋に手繰り寄せ、唇に触れ、胸に差し込んだ。
なんだか動揺したような声がする。
冷たくて、心地よい物体が逃げようとするから、逃すまいと抱きしめた。
───ダメ……ダメだよ。しのぶちゃん───

「やぁ……らぁ……冷たくて気持ちいい」

───ひ……氷嚢を───

「これがいいのぉ!なぁにぃ……これ……

少しずつ意識が覚醒し……しのぶは気づいた。
この冷たくて気持ちいい物体は……

童磨の手

そうだ、自分は湯浴みをしていた。
湯あたりをし、倒れ込んだ。
倒れた際の異音に気づいた童磨によって氷人形で運ばれ……

そうだ、介抱されていたんだ。
心配して、火照った額に手を添えたその時、寝ぼけたしのぶによって招き入れられた大きく骨張った手 。

「な………………しのぶちゃん…………だ、だ、だいじょうぶかい?」
童磨の元々青白い顔が青くなったり赤くなったり。
離したくない。
気持ちいいから。
でも……

「嫌がってます?ごめんなさい」
しのぶはその手を離した。
名残惜しい
「あの…………冷たくて気持ち良かったんです」
「そ……そうかいそうかい。寝ぼけて勘違いしちゃったんだね。ごめんね。気持ち悪かったろう」

童磨は、気持ちよかったその手のひらから氷の塊を出し、手ぬぐいで包んだ。
それをしのぶは受け取ると首筋に押し当てた。

「いくらなんでも酒の原液を湯船に張るなんて……何本使ったんだい?豪気だなぁ。
酒風呂はコップ一杯の酒を湯に入れるもんだ。ただでさえも酒に弱いのに」

童磨はふいっと身体ごと後ろを向いた。
「すいません……
しのぶは緩んだ胸元をかき合わせた。
この鬼は、性的なことは望んでいないのだから。

まさか、そんな鬼に特製お屠蘇を振舞おうと考えていたなどとは……言えず、しのぶはただ俯いた。
(食べてもくれなかった……
文字通りの食うがダメなら、性的に……と思えば、私の事を好いた、腫れた惚れたというくせに触れてもくれない。酒は好きだと言うから……せめて)

数々の生薬を漬け込んだ酒。
それがお屠蘇

毒女の私を漬け込んだ酒を振舞おうとして……自分が先に湯あたりしたなんて

ぜったいに言えない
「ごめんね……変なこと教えたりして」
童磨は背中を向けたまま、ただ謝っている。
なんで謝るというのか。迷惑をかけたのは自分だと言うのに。
まだ諦めきれず、殺意を向けているというのに。

このお人好しの鬼。
気がついたら、自分はこの鬼に……

そうだ
その昔。性に奔放だった時代ならいざ知らず……いや、その昔でも誰にでも、ではなかったかもしれない。
男の鬼の食い物になるなんて、売女の戦法じゃないか。
いくら仇でも、軽々しく覚悟程度で取れる戦法ではない。
この男なら構わないとまで思ったから……

なのに

「貴方は……すいた、はれた惚れたと言う割に……私に指一本触れようとしないんですね」

空気の揺れに気づき、童磨は振り返った。
悔しいとも、悲しいともつかないしのぶに表情に、思わず抱きしめてしまい、慌てて離れる。
そして少し戸惑い、迷いながらしのぶの頭を撫でた。

「昔話してあげる……眠たくなるような昔話だよ……むかぁし、一人のおチビな男の子がいたんだ。その子は両親や周りの大人の言うことをよく聞く孝行息子だった」
何を言い出したんだろう。
横になるよう促しながら、昔話をし始めた。
それは、一人の少年が、大人の言いなりなのをいいことに、大人達に性的に虐待を受けた話。
夫の寵を失った正室、側室などの貴婦人達だけでは無い。男もいたという。
本来排泄器官であるはずの、その穴に指をねじ込まれ……
不快で声を上げたいのに、しきたり、作法に則りあげられず……

「本当は嫌だったんだろうね……そうだ、嫌だった……不快だった……だからそれを命じる父上は……多分……死んで……安心したんだ。もうこんなことしなくていいんだって……安心したんだ」
訥々と話す
昔話……童磨の過去
「しのぶちゃんのことは大好きだから……嫌なことはしないよ。本当は抱きしめたいけど……触らない。俺も嫌だったから」
心中の毒を語り出した。

ああ、そうか

だから……

やはりこの鬼になら餌になっても構わない。
私が

解毒してあげる