三毛田
2025-01-02 21:24:15
1083文字
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60 060. 恋歌音色

60日目
君に恋して世界が変わる


 恋をすると、世界が違って見える。なんて、よくあること。
 耳に届く音だって、変わってくる。
 まさか、自分がその対象になるとは思ってなかったけど。
「はあ……
「どうしたんだ」
「悩み事」
「俺でよければ聞くが」
 なんて、俺を悩ませている本人に気を使われてしまう始末。
「ちょっとね。困ったことじゃないんだけどさ」
「そうなのか。だが」
「でも、聞いてもらえると嬉しいかも」
 俺が口にすると、丹恒はちょっと嬉しそうな表情を浮かべて。
「リラックスできるように、甘いものをもらってこよう」
 と言って、部屋を出ていく。
 そして戻ってきた彼の手には、ピッチャーと氷が入ったグラスが二つ。
「レモネードだそうだ。甘いがさっぱりしていて、リラックスも出来ると」
「パムが言いそうだ。ありがとう」
「ああ」
 俺のグラスにはなみなみと、自分のには半分くらい。
「それで?」
「実は……うん。好きな人がいるんだ」
……
 俺が告げると、飲む手が止まる。
「それでさ、その人のことを考えると胸がドキドキするんだ。それだけじゃなくて、時々綺麗な音が聞こえる。丹恒?」
「なんでもない。その人に、気持ちは伝えたのか」
「ううん」
「伝えるつもりはないのか」
「あるけどさ、負担を増やしたくないんだ」
 羅浮から戻ってきたばかりだし、丹恒は、まだまだ療養が必要だ。だから、俺のことで悩ませたくない。
「その人が、気にしないと言ってもか」
「うん。俺のエゴだけどさ、今はそれがその人のためになるって思ったから」
 お前は、優しい。
 だから、俺が好きだと口にすればきっとそれを受け入れてくれるだろう。でも、それじゃ駄目なんだ。
 情で頷かせたくない。
 エゴで我儘。
 本音だけ言えば、丹恒から同じ気持ちを返して欲しい。
「確かに、さっぱりする」
 半分くらい一気に飲むと、口の中を甘みと酸味が一緒に滑っていって。
 さっきまでのもやもやとかが流れていく。
「好きだよ。うん。好き」
 気づいたら、口にしていた。
「丹恒?」
 目の前の丹恒は、もっているグラスに力が入りそうなほど強く握っていて。
 そんなことしたら、グラスが割れて怪我をしてしまう。
 おまけに、中身も氷も出て手を濡らしてしまうし。
「俺も、その……
「どうしたんだ?」
 グラスを持つ手にそっと触れる。
 びくりと肩が揺れて。
「丹恒、顔が真っ赤だ! 熱でもあるのか?」
「ち、違うっ。お、お前が好きだというから」
「え?」
 俺が好きだと言ったから?
 もしかして、もしかしなくてもってこと?