日本ではお正月にはお寺や神社に行って、おみくじを引いて一年の運勢を占ったりするんだよ。ここに来る前は家族や友達と初詣に行ったなあ。
そんな他愛ない雑談に、ドゥリーヨダナが何を思ったのか「ふむ。ではわし様がおみくじの代わりに今年のマスターの運勢を決めてやろうではないか。ずばり、ウルトラスーパーハッピー大吉だ! 何せお前はこの最強にして最優、そして最格好よく最美しい、おまけに誰もが羨む金満王子のわし様を召喚しておるゆえ。全体運最高、金運も言うことなし、健康運も、まあわし様さえ側に置いていればお前が怪我を負うことはない。恋愛運は……あー……仲人なら任せろ! あ、ちなみにわし様はウルトラハイパースペシャルキング大吉だ。全ての大吉の頂点! ありとあらゆる運勢が最高だ!」とペラペラとよく回る口を動かしたこと自体は、やはり他愛ない相槌の範疇であった。
問題はその後である。ドゥリーヨダナは藤丸立香に向けていた人懐っこい笑みを引っ込めると、薄ら笑いを浮かべ、同席していたビーマに目を向けた。
「ついでだ、そこの野蛮人の今年の運勢もわし様が決めてやる。もちろんお前は大凶! 全体運最悪! 金運は素寒貧、精々賭場には顔を出さないようにするんだな? 健康運は真冬にそんな薄着をしているのだ、その報いを受けて早晩腹を壊すに違いない。とういうか壊せ。いやー哀れだ。マスター、やはりこんなやつより重用するならわし様だ。ほらシッシッ、マスターにお前の不運が移るかもしれん」
あんまりな言い種、もとい喧嘩腰の言葉に、さすがに諌めようと藤丸は口を開いた。正月からギスギスを見せられたくはない。
大凶はむしろこれから良くなっていくって言うから、いいことなんだよ。昔友人が教えてくれた知識を口にするために、藤丸が舌を動かすより先に、ビーマが言った。
「恋愛運は?」
藤丸はビーマを見た。真面目な顔をしている。笑みを消したビーマの顔はある種の芸術品のような神々しさがあった。自分にはあまり向けられない顔だ。何となくご利益がありそうな気がしてくる。
「れ、恋愛運?」
次いで藤丸はドゥリーヨダナを見た。眉を八の字にし、いかにも困惑した顔だった。目は落ち着きなく泳ぎ、言葉を探してか、口が小さく開いたり閉じたりを繰り返す。
「そりゃあ大凶なんだから……よくは…………よく、は…………」
ドゥリーヨダナの眉根が寄る。その下の瞳が落ち着きなく揺れ、口がへの字になった。何だかべそをかく前の顔のようだ。
にこり。ビーマが微笑んだ。えっ何で笑ってるの? ドゥリーヨダナをやり込めたから? 藤丸が瞬きしているうちに、ビーマがドゥリーヨダナの手を取る。
「教えてやるよ、俺の恋愛運は最高だ。マスターがお前を召喚しているから大吉なら、お前と付き合ってる俺だって大吉だろ」
はい? 藤丸はビーマを見て、ドゥリーヨダナを見た。こんなにもガン見しているのに、二人は気づきもしない。
「ふん、自惚れるなよ。お前の運がいいんじゃない、わし様の運がいいんだ」
「お前の言葉はいちいち捻くれていやがるが、最近少しわかってきたぜ。今のは俺と付き合えてハッピーって意味だろ? 賭場に行くな腹を出すなって忠告も、余計なお世話だと思うが、ま、俺のことを案じてだと思えば、なかなか悪くねえ」
「お前のそういうとこ、マジで普通に腹立つんだが!?」
ドゥリーヨダナは顔を赤くして文句を言っている。怒っているからか照れているからなのか、それとも恥を感じているのか、判断は難しかった。というか。
二人とも顔が滅茶苦茶近い。何でそんなに顔を近づける必要があるんですか? 二人とも声でかいし十分相手の声聞こえてるよね? キスでもするの? えっここで? 自分がいるのに?
というか付き合ってるの? マスター何も聞いてないんですけど。別にいいけど。いいけどさあ……。変に挟まないでほしいって言うかあ……。
「今年は巻き込まれ運が微妙なのかも……」
藤丸がぼやいたのも聞こえていない様子で、自称恋愛運最高の男たちは、イチャイチャと指を絡ませ、頬を寄せあっていた。
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