ちよど
2025-01-01 05:42:50
23878文字
Public わし様など
 

練習1P 11月分まとめ

#練習1P、のタグで書いていたもの。
わし様中心SS。節操なくCP混在。

■2024/11/30 No.477
わし様+マスター
「川は容赦なく選別していた」

「川がある。この流れ、非力なおまえでは渡れぬだろう」
「そうかぁ?浅く狭い川だ。マスターでも歩いて渡れるぞ」
「川なんてどこにあるのー?」
 三者三様の証言にマスターは意見を纏めた。
 激しい流れの川が見えるのはカルナとニトクリス(術)。浅い川が見えるのはドゥリーヨダナとバーソロミュー。川が見えないのはアルクェイドとマスターだ。
「共通点が見えない」
 頭を抱えるマスターにニトクリスが顔を歪ませ、アルクェイドが手を打った。
「これはあれね!『その六銭、無用と思え』」
「六銭?六文銭?三途の川の?」
 聞き返したマスターにニトクリスは重いため息をついた。
「冥府の川は生者にも不死者にも見えないでしょう」
 ニトクリスは自身の簡素な服を見下ろし、カルナに顔を向けた。
「罪人の私は分かります。ですが、あなたはどうして充分に弔われなかったのですか?」
「戦争中だったからだ」
 答えたのは顔をしかめたドゥリーヨダナだ。彼は死後アシュヴァッターマンによってコインで飾られ、隣のバーソロミューは宝石と共に海に葬られた。
 川の渡し賃を持つ者と持たぬ者。そして生者と不死者。
 

■2024/11/29 No.476
ビマヨダ
「顔も気をつけろよ」

「アサシンの両儀式に分けてもらったのだが、このアイスというものはなかなかに美味いなぁ」
 アーツパ周回から帰ってきたドゥリーヨダナがこれみよがしに食堂でアイスを食べていると、カウンターのビーマが真顔で振り返った。
「おいトンチキ。まさかとは思うが、食べかけをもらったんじゃねぇだろうな?」
「カルデアでは身分など関係なかろう。それにあやつはそれなりの名家の出身だそうだからな」
 肯定も否定もしないドゥリーヨダナにビーマの片眉が跳ね上がる。彼がドゥリーヨダナと食べ物をシェア出来るようになるまで、それはそれは長い道のりがあったのだ。
 それに。
「アサシン?セイバーの方じゃなくてか?」
 穏やかな対応をするセイバーの両儀式と違って、アサシンの彼女はどちらかと言えばとっつきにくい。
「俺はあいつに『お前の線は分かりにくい』と意味不明な事を言われたぞ」
「──わし様は『分かりやすい』そうだ。おまえ、両儀式と組んだことがないな?」
 その言葉にバスター単体宝具ランサーのビーマは頷いた。ドゥリーヨダナがアイスを置く。
「あやつはあれで親切な女だぞ。わし様に忠告をしてくれた。足だけでなく──」


■2024/11/28 No.475
アシュヨダ+弟
「だって、かまってくれねぇから」

「ほほーっ!?わし様の指揮が必要か?同じ肉より分かたれし我が弟たちよ、そして無敵の友たちよ!!ぶっちゃっけお前等に全部任せたーい!」
 ドゥリーヨダナが宝具を開帳する。百人の弟たちと友たちが現れ敵を蹂躙する、はずだった。
 静かな風がバトルフィールドに流れる。誰一人として現れない状況にドゥリーヨダナが叫んだ!
「弟たちよ!!」
 無意味に棍棒を振り回すが何も変わらない。敵のケンタウルスたちはのんびり蹄で地面を蹴っていた。
「あー、旦那。ちょっと俺が聞いてみるわ」
 後衛にいたアシュヴァッターマンが進み出る。彼はドゥリーヨダナの宝具に参加する、いわゆる宝具仲間だ。アシュヴァッターマンはドゥリーヨダナの体に顔を寄せてふむふむと彼の中の百王子の言い分を聞き取った。
ストライキだそうだ。──『兄貴の馬鹿!他の弟がいいならそいつに宝具をまわしてもらえばいいじゃん!!』」
 ドゥリーヨダナの顔色が変わる。彼はカルデアで新たな弟を次々とスカウトしていたのだ。それを元からの弟がよく思うはずがない。
「あ、新しい弟とお前たちは違う!!同じ肉からん?」
 慌てて言い訳を始めたドゥリーヨダナはアシュヴァッターマンが耐えきれず顔を覆ったのに気づいた。
「お前たち。わし様をからかったな!」


■2024/11/27 No.474
ビマヨダ
「もっと」
※特殊プレイを含みます

 ビーマを抱きかかえたドゥリーヨダナが血相を変えて医務室に飛び込んできた。
「重度の霊基異常だ!すぐに診てくれ!!」
 運良く当番だったアスクレピオスが目を輝かせる。
「風神の子か。毒無効と弱体耐性を持っていたな。症状を説明しろ」
 目を丸くして硬直しているビーマを診察台に寝かせて、ドゥリーヨダナは説明する。
「あれはわし様がおこちゃま達のおままごとに付き合っていた時だった」
 ふむふむと医神は耳を傾ける。発症時の状況が治療のヒントになる事は多い。
「わし様は母親役だった。ちょうどこいつが通りかかったので言いくるめて参加させたのだ」
 アスクレピオスは嫌な予感がした。自分はろくでもないことに巻き込まれているのではないだろうか?
 ドゥリーヨダナはそこで握り込んでいた哺乳瓶を取り出した。
「わし様は役の通りにこいつを膝に乗せ、これを含ませ、中のミルクを飲ませてやったのだ!!──そうしたら、そうしたら、こやつはああ!!」
 彼は取り乱したドゥリーヨダナから診察台の上でバツが悪い顔をしているビーマに視線を動かした。
「何と言ったんだ?」


■2024/11/27 No.473
カルヨダ
「彼は裏切りを許さない」

 カルナが召喚されてからのドゥリーヨダナの浮かれようは凄まじかった。
 いつも馬車馬のように働かせられているアーツ全体宝具バーサーカーは周回の要だ。よって発言権が強い。
「マスター、わし様と約束しておったよな?カルナが来たらレベル120にしてくれると」
「スキルマぐらいすぐに出来るだろう?」
「ランサーのクラススコア全開放はまだかなぁ。わし様素材を集めた気がするなぁ(ちらっちらっ)」
 隠しもしない圧にマスターは震えた。
 爆死を繰り返すカルナを諦めて他のサーヴァントに種火を注ぎ込んでいたのだ。
 そんなマスターを召喚されたばかりのカルナは色違いの瞳で見つめていた。
「ドゥリーヨダナ。おまえの強欲にはオレだけでは不足のようだ」
 カルナの言葉にドゥリーヨダナはその額をカルナのそれに触れさせた。
「わし様のカルナ」
 それだけでカルナは薄く微笑む。それ以上何を言うこともなく、隣り合ったふたりは指を絡めた。
 濃密な空気にマスターは顔を引き攣らせた。早急にドゥリーヨダナ抜きの周回編成を組み立てなければならない。
 何故なら。


■2024/11/26 No.472
生前?カルヨダ
「比翼の鳥」
※死にネタです

「もはや勝利などいらん、何でも欲しい物を持っていけばいい。──ただし、条件がひとつある」
 ほとんどの将軍を討ち取られたとはいえ、まだ戦力が残っているカウラヴァの旗頭の言葉にパーンダヴァの面々は胸を撫で下ろした。ドゥリーヨダナが欲しているのがなんであれ、それでこの陰惨な戦争が終わるなら安いものだ。
 クリシュナが感情の見えない笑みを浮かべる。ドゥリーヨダナが口を開いた。
「──カルナを返してくれ。あいつだけでいい。あいつさえいれば俺はこの国から出ていこう」
「それは──」
 アルジュナが弓を引いた手を握り込んだ。彼が無防備だったカルナを射殺したのはつい先日の事だ。
 無理難題をふっかけているにしてはドゥリーヨダナの目は静かだった。
「俺は分かったのだ。あいつがいなければどんな勝利も意味はない」
 ビーマが口を開けて閉じた。ユディシュティラがクリシュナを振り返る。応えて神の化身は歩み出た。
「では、望みをかなえてあげましょう」
 刃が一閃した。ごとりと首が落ちる。
「カルナと共にこの国から旅立つといい」
 パーンダヴァが息を呑む。その中で立つ神の視点には天の国で再会した親友達が映っていた。


■2024/11/26 No.471
わし様+ツタンくん
さみしい」

「弟子もいいが、わし様の弟になるならいろいろ教えてやってもいいぞ」
「ありがたき幸せにて!」
「ダメに決まってんでしょ!!!」
 3人の声がカルデアの廊下に交差した。ドゥリーヨダナ、ツタンカーメン、マスターの少女である。
「ツタンくん!せめて相手を選ぼう!ね!!」
 必死の形相で両肩を掴まれたツタンカーメンはきらきらとしたおめめで返した。
「最古の叙事詩に語られる英雄ドゥリーヨダナさま!師と仰ぐのに十分な御方にありまする」
「うむうむ、さすがファラオ。現人神ともあればわし様の素晴らしさが分かろうというもの」
「では、」
「うむ。おまえをわし様の弟と認めよう!さっそくだが食堂に行くぞ!!」
「どんな悪事をなさるのですか?」
「山ほどの料理を頼んで料理人達を過労死させてやるのだ」
「──それは、恐ろしい悪でござりますね。注文した料理はどうされるのですか?」
「おまえが食べろ。わし様の弟ともなればもっと逞しくならんとな」
 盛りあがる話に置いていかれたマスターは唐突なドゥリーヨダナの呟きに顔を上げた。それは。


■2024/11/25 No.470
現パロ アシュヨダ
「お礼のつもりだろうな」
※クロスオーバー?

「アシュヴァッターマン!!そいつを捕まえてくれぇ!!」
 旦那の叫びに俺は掃除中だったはたきを放り出し、即座に廊下を駆けてきたソレを押さえつけた。
 開け放した縁側から冬の風が吹き込んでくる。大掃除の最中だと言うのにどこかでサボっていた旦那がどたどたとやって来た。そして俺の成果ににんまりと笑う。
「でかした!『富豪ドゥリーヨダナ氏今度は謎生物を捕まえる!!』ネットニュースでバズるぞぅ!」
 捕まえた謎生物を受け取ろうと、わくわくと手を出した旦那に俺は首を振った。
「旦那。アニメとか見ねぇだろ?」
「アニメ?ドゥフシャラーが見ているやつか?」
 分かってねぇ旦那に俺は手の中の真っ黒な塊を持ち上げた。丸い目がくるりと見上げてくる。
「こいつ、有名なアニメのキャラクターにそっくりだぜ」
「だから?」
「写真撮ってもコラだと思われるのがオチだ」
「なんだとぅ!!じゃあいらん!放してこい!!」
 目論見が外れた旦那がドスドスと去っていく。
 それに苦笑して俺は真っ黒の生き物を縁側から放してやった。
 草むらから他の真っ黒が出てくる。迎えに来たそいつと一緒にそれはどこかに消えて行った。
 後日、縁側に並べられていたどんぐりに俺は笑う。


■2024/11/25 No.469
アシュヨダ 妖怪ネタ
「なるほど。旗頭同士だから話が合う、のか?」

 家に帰ったら旦那が知らない化け物と話をしていた。
 祖父の実家は田舎の古びた日本家屋だ。ここら一帯の庄屋の子孫が誰もいなくなったということで妾の孫である俺に相続がまわってきた大きな家。
 その居間で年輪が目立つテーブルに湯呑みがふたつ。
 ひとつは旦那。もうひとつはその向かいの老人のような何かが口に運んでいる。
「わし様は分かるぞ。それはさぞ気苦労なことだろう」
 旦那の相槌にソレは何度か頷くとぼそぼそと何かを言う。
「煎餅は確かに美味いがあいにく今はないな。次はびっきりのを用意させておこう」
 次があるのかよ!!
 内心でつっこむ俺に旦那は目線で座るように言う。
「御仁、紹介する。この家を継いだアシュヴァッターマンだ。そしてわし様の部下であり恋人でもある」
 丁寧な紹介に俺はきちんと頭を下げた。
 旦那が俺を恋人だと紹介するのは重要な相手だけだ。
「こちらは、この一帯を治めるぬらりひょん殿だ。いやいやご謙遜を。我々人間が穏やかに過ごせているのは御身のお力があってこそ」
 ぬらりひょん。
 アニメに疎い俺ですら知っている妖怪だ。なるほどこの化け物は妖怪なのか。そして旦那に敵対する意図はない。


■2024/11/24 No.468
ビマヨダ
「彼らは同じ秘密を持っている」
※ミステリーハウスイベントのネタバレを含みます

 ドゥリーヨダナは紫式部に近づかない。昨日からそこに新入りのアーチャー、ツタンカーメンが加えられた。
「珍しく分かりやすいねー」
「ろくでもない事しか考えていねぇんだよ。あいつは」
 マスターの為に林檎を加工しているビーマは舌打ちをした。ドゥリーヨダナが避けている2騎のサーヴァントはどちらも不随意に相手の心の中を暴く性質を持っている。
 忌々しいダイスの形にカットした林檎を鍋に入れて、誰かの舌のように甘い砂糖と、後悔の味のレモン汁を振りかける。煮詰め始めると甘い匂いが辺りに漂った。
 マスターが真っ直ぐにビーマを見上げる。
「あのさ、ビーマもふたりを避けてるよね?」
「俺はツタンの歓迎会にいただろ?」
 料理を続けながら答えると、マスターは首を傾けた。
「そうだね。ずっと厨房にいて、ツタンくんへの給仕は他の人がしていたよね。どうして?」
「たまたまだ」
 鍋を揺らすと花とは違う甘い匂いが濃くなる。
 答える気のない様子にマスターは口を閉ざした。そこに。
「なにか甘い匂いがするなぁ。さてはわし様へのげぇえ!ビーマ!!」
「うるせぇぞ!このトンチキ!!」
 食堂にやって来たドゥリーヨダナとビーマがいつものように言い合いを始める。マスターはため息をついた。


■2024/11/23 No.467
カウラヴァ
「ここを本拠地とする!!」

「カルナがサンタになったんだよ」
「それとこの大荷物が何の関係があるのだ?」
 ドゥリーヨダナの部屋に運び込まれた厚いラグ、大きな板、3つのクッションに4つの棒、四角い布団に一抱えはある箱を見て部屋の主は首を傾げた。
「まあ見てろって」
 隅に追いやられたドゥリーヨダナは普段と違う姿のカルナと、張り切っているアシュヴァッターマンがわけの分からない物を組み立てているのを黙って眺める。
 まあ、彼らが自分に不利益な事をするわけがないし。
「こんなもんだろ」
「プレゼントの予行練習としては悪くない」
 やっと呼ばれたドゥリーヨダナは促されるままにふかふかのクッションに座り、布団の中に足を伸ばした。
「ほう、これは
 じんわりと身に染みる温かさ。コタツと呼ばれる東洋の魔具に富豪王族はゆったりと目を細める。
「旦那!満足するにはまだ早いぜ!」
「強欲なのがおまえの取り柄だったはずだ」
 両脇の友が差し出したのは、みかんとアイス。
「どこから出した?」
 さすがにドゥリーヨダナの部屋に冷凍庫はない。しかし、ふたりは大きな箱。ポータブル冷凍冷蔵庫を指差す。
 得意げな彼らにカウラヴァの旗頭は宣言した。


■2024/11/22 No.466
わし様の奥さん+侍女
「だから、憎み切れない」

「バーヌマティー様!!」
 誰もが権威と暴力に見て見ぬ振りをする中、彼女だけが略奪される私に取りすがったのだ。

「あのスータの息子が来るのですって?」
 確認に略奪婚により私の夫となったドゥリーヨダナが面白そうに片眉を上げた。
「お前の侍女の夫だろう?名前で呼んでやれ」
「あの男がいなければ私はあなたの妻にならずにすんだわ」
 ただでさえ大国クルの権威を持つこの男に半神に匹敵する武勇を持つあの男がついていれば、誰が私が拐われるのを止めることが出来ただろう。
 助けてと叫んでも嫌だと泣いても父も勇士達も顔を背けた中、彼女だけがその細い体で私を助けようとしたのだ。
 その彼女はあの男の妻にされ、いつもは遠いアンガの地にいる。──あの男が王宮に連れてくる時以外は。
 人質のようなものだ。
 私が夫に何かすれば、夫の親友であるあの男が彼女をどうするか分からない。
「息子が大きくなったので見せにくるそうだ」
「では娘と会わせましょう。──仲良くなるといいわ」
 私の言葉に夫がおかしそうに笑う。この男は悪辣だが悪人ではない。略奪婚の掟に逆らった彼女を殺すでもなく、国から連れ出してくれたのだから。


■2024/11/22 No.465
カルヨダ+オルジュナ
「友の勝利はわし様の勝利だ!!」

「ひぇ!アルジュナ!!」
 食堂に現れたアルジュナに腰を浮かせたドゥリーヨダナが、よりによって隣のアルジュナオルタの背中に隠れたのを見て、カウラヴァがひとりもいないとは言え誰もがドゥリーヨダナの判断力を疑った。
「あのドゥリーヨダナ。アルジュナオルタはアルジュナだと分かっているよね?」
 訝しげに尋ねるマスターに、アルジュナオルタに先輩風を吹かせて激辛麻婆を奢っていたドゥリーヨダナは答える。
「わし様を馬鹿にしておるのか!?名前にアルジュナと入っておるだろうが!」
「じゃああの人は?」
「アルジュナ」
 アーチャーのアルジュナを指差すマスターに答えて、ドゥリーヨダナはアルジュナオルタの背後にしゃがみ込んだ。
「わし様はちょっーと腹が痛いだけだ。別に隠れているわけではないぞ」
 その言い訳にアルジュナオルタが振り返った。
「不可解です。貴方はあの私を恐れるのに私は違うのですね」
「当たり前だろが!おまえはあのアルジュナとは違う!」
 一瞬いい話だなー、と思いかけたマスターを置いて。ドゥリーヨダナは話を続けた。
「おまえはカルナに負けたではないか!」


■2024/11/21 No.464
ビマヨダ
「そうか。顔も合わせたくないということか」

 召喚されたドゥリーヨダナがまずした事は借金をして宴を開くことだった。全サーヴァントに送られた招待状はパーンダヴァにも届きビーマは舌打ちをする。
「何考えてんだ、あの馬鹿」
 召喚されたばかりのサーヴァントはマスターから支度金をもらえるが、それも大した金額ではない。全サーヴァントをもてなす宴など相当のQPを借り入れなくては実現出来ないだろう。
 そしてカルデアの商人達は高利貸しばかりだ。その暴利を理解出来ないドゥリーヨダナではない。
 不審がるビーマの横で孫が王位を継いだアルジュナは考え込んだ。
私達も行きましょう」
「俺はあいつを許していない」
「私もです。ですが、ドゥリーヨダナはこの宴で相手の出方を探っています。マスターのためにここは友好的に接するべきかと」
 全サーヴァントに漏れなく送った招待状。それに出席するかしないか。欠席するにしてもどのような対応を返すのか。
 ドゥリーヨダナは宴ひとつでカルデアにいるサーヴァント達を測っている。
「俺は応じない。そんなことをしなくてもあいつは俺を分かっている」


■2024/11/20 No.463
現パロ アシュヨダP
「男の趣味が悪い」

 手!
 トレンドに上がっていた単語に私は映画館に駆け込んだ。推しの出演が確定したからだ。正直このプロデューサーが関わる作品は好みではないのだが、推しが出てくるならしょうがない。私は手を探してスクリーンを凝視した。
 サイコサスペンスだがレーディング対策かグロ描写は極力押さえられている。今は過去の被害者達が犯人に殺害されるシーンだが、壁に映り込む影と──手っ!!
 見間違いようもない日に焼けた手が、鈍い音と共に痙攣し画面の外へと引きずられていく。
 その演技は素晴らしく被害の凄惨さが胸に迫る、が。
(推しをこんな端役に使うなーーっ!!)
 私は無言で叫んだ。
 推しは若くして大物俳優と呼ばれ始めた青年だ。アシュヴァッターマンと言えば有名な女性誌の表紙も飾った事すらある。セクシーなあの写真は家宝。いや、そんな話ではなく。スキャンダルもない好青年な推しには悪癖がひとつだけあるのだ。
 悪評ばかりのドゥリーヨダナPを尊敬しているところだ。
 かのPが手掛けた作品には必ず推しが出演している。ドゥリーヨダナPがオーディションを行えばどんな端役でもアシュヴァッターマンが応募してくる話はもはやネタにすらならない。
 私はため息をついた。


■2024/11/19 No.462
現パロ カルジナ、ビマヨダ
「わし様はまだ友を失いたくない」

「カルナさんって、ほんと!デリカシーが無いんだから!」
 カトラリーを手にぷりぷり怒っているジナコにドゥリーヨダナは目を細めた。
 滑らかな生演奏が聞こえるオープンテラスだ。
 怒り狂ってドゥリーヨダナの家に駆け込んで来たジナコを連れ出して、服を買い、馴染みのヘアサロンにねじ込み、ここに座らせたがその間もジナコはずっと怒り続けていた。
「カリギリも分かっておるだろう?我が友カルナは言葉が足りないのだ」
 なだめるようなドゥリーヨダナに答えず、ジナコは見た目と味に全振りした料理を口に運ぶ。──美味しい。
 搾りたてのオレンジジュースを喉に流し込んで、ジナコは息を吐いた。
「それで、対価は何?」
 ドゥリーヨダナはにんまりと笑う。この男は身内に甘いが無料奉仕はしない。ジナコに対するこのサービスも見返りを求めてのことだろう。
「またビーマさんと揉める予定なんスか?事前にアリバイ作りを頼むくらいなら」
「これも恋愛のスパイスというやつだ」
 諭されてジナコはまたため息をついた。身寄りのないジナコを家族扱いする者はこの男の他にはひとりしかいない。
「ドゥリーヨダナは私の事ずっとカリギリって呼ぶよね」
 その問いに彼は何故かジナコの背後を見た。


■2024/11/18 No.461
わし様+オルジュナくん
「チッ、仮定の勝利ぐらい味あわせろ」
※ホラーハウスイベントのちょっとネタバレ?を含みます

「ああいう『私』もあったかもしれないのですね」
 敵を殲滅し終えたアルジュナオルタの言葉にドゥリーヨダナは鼻で笑った。
「英霊が可能性を語り始めたら終わるぞ。アイドルになりたくはなかろすでに委員長だったな」
 そのままでの姿だとちょっと怖いから、とマスターに言われて委員長霊衣を纏っているアルジュナオルタと、レベル120のドゥリーヨダナはホラーハウス建築特異点のアタッカーとして駆り出されていた。
 バーサーカーは全てを解決すると、ろくに対策もなく突っ込まされた戦闘でアルジュナオルタは見たのだ。怨霊に侵され堕ちた自分を。
「この特異点で召喚されたサーヴァントは弱体化されます」
「真面目くんが更に真面目になってドツボにハマったか」
 くくく、と笑うドゥリーヨダナはアルジュナとアルジュナオルタを別人だと思っているのだろう。その証拠に彼はアルジュナを恐れるが、アルジュナオルタはバーサーカー周回仲間として親しく話をしてくれる。
 その彼がぐるりとアルジュナオルタを見た。
「可能性を騙るなら、わし様とてクル国の王として君臨した霊基がいるかもしれんぞ」
「それはありません。貴方の勝利は私達兄弟の敗北ですから」
 アルジュナオルタの返答にドゥリーヨダナは舌打ちした。


■2024/11/17 No.460
ビマヨダ
「老いは勝者の特権だ」

 それほど強く小突いたわけではないビーマの体が大きくよろめいて、ドゥリーヨダナは息を呑んだ。 
 カルデア食堂に気まずい沈黙が広がる。
 驚いたのはビーマも同じだったらしくしわが刻まれた目元が大きく広がり、そして閉じる。はぁ、とため息をついて穏やかに目を開き。
「年寄りには優しくするもんだぜ」
 そう笑ってみせたビーマの姿は享年の老いた姿だった。
 死亡時の年齢になる霊基異常は当初一部サーヴァントの見分けがつかなくなるくらいで、それほどの混乱を起こすものだとは思われていなかった。
「ドゥリーヨダナ、アルジュナが部屋から出てこない」
「そのままにしてやってくれ」
 食堂にやってきたカルナにビーマは首を振った。衰えを自覚していなかったビーマに比べアルジュナは老いて愛弓ガーンディーヴァを引けなくなったのだ。そんな姿を若いままの宿敵に見せたいはずもない。
 似たような混乱がカルデアのそこかしこで起こっていた。
 ビーマは再びため息をつく。
「年を取るってのはいやなものだな」
 その言葉にドゥリーヨダナが憎々しげに顔を歪めた。
「馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、おまえは本当に馬鹿だな」
 ストレートな罵倒に白さが混じった眉を跳ね上げたビーマは、続く言葉に息を呑んだ。


■2024/11/17 No.459
わし様
「お手軽なことだ」

「心配性の城主は要塞都市に向いている?」
 クッションに座り込んでコントローラを手に戦略シミュレーションゲームをしていたドゥリーヨダナはカルナの報告に首を傾げた。
「矮小なおまえに似合いの都市だ」
 画面に映し出された偉大なるドゥリーヨダナが建設した都市は城壁が巡らされ外敵を完璧に防御している。
「あー、うーん。これな。弱小国は防備に金をかけねばならぬのだ」
 渋い顔をしたドゥリーヨダナの膝に頭を預けていたバラモンが見解を述べる。
「ハスティナープラは守りにくい平地のど真ん中にあっただろ?そんな事をしてもどの国もクルに直接攻め込めねぇんだよ。国力に差がありすぎる」
 アシュヴァッターマンの手がお菓子をつまみドゥリーヨダナの口元に持っていく。はむはむ。
 カルナは傍らに置いてあったジュースを手にした。
「なるほど。クルクシェートラで周辺国を巻き込んだのは」
「先に軍を徴集しておけば、反乱の起こしようがないだろう?──防備に金を掛けるなど三流国のやることだ」
 ドゥリーヨダナにジュースが差し出される。ごくごく。
「ま、定期的に軍を見せつけてやらねばならんが。──あやつらは存在そのものが軍事力だったからなぁ」
 ドゥリーヨダナのため息は深かった。


■2024/11/16 No.458
生前わし様たち+叔父上
「悪い遊び」

「わたくしは貴きクル国の王子に鄙びた我が国の果実を踏んでいただいているだけでございます」
 シャクニおじの言葉に遊んでいたぼくは動きを止めた。
 食べ物を踏むのは許されていないがこれはいいのだとおじうえが持ってきた樽一杯の紫の果実。それを兄弟たちと踏み散らかしながら意味が分からない歌を繰り返すのは楽しかった。──怖い顔をしたおおおじ様が来るまでは。
 頭を下げたおじさまにいつもうるさいおおおじ様は見たことのない顔をして。珍しく何も言わずに帰っていった。
 入れ替わりに騒ぎを聞きつけたははうえがやってくる。
 どうするべきかとあにうえを見たのは僕だけではなかった。だって、おじうえの国はははうえの故郷だ。
 不安になったぼくたちをあにうえは笑う。
「つづけるぞ。おじうえはははうえに悪いことをしない」
 あにうえの断言にぼくたちは遊びを再開する。悪いことだとは分かっていても果実を踏み、ルールを無視した歌を歌うのは楽しかった。
 果実を踏む音。辺りいっぱいに広がる濃厚な匂い。甲高い声が歌う歌。
 怒るかと思った母上は何故か顔を覆ってしまう。そんなははうえにおじうえがそっと寄り添った。
「泣いていいのです。悪い遊びをしているのだから」
 母上たちの故郷では、娘たちが歌を歌いながら葡萄を踏みジュースを作るのだと後になって僕達は知った。


■2024/11/16 No.457
現パロ アシュヨダ
「帰れねぇじゃねぇかぁ!!」

「歩いて帰ればいいだけだぜ」
 アシュヴァッターマンの言葉にドゥリーヨダナはおかしそうに片眉を上げた。
 ふたりの間にはルームサービスのささやかなディナーが並べられている。燭台の灯りが映る窓からは夜に沈んだビル街が見えていた。──駅も灯りを落としている。
 そんな時間に想い人とホテルで二人っきりで居ながら、頑なに帰ろうとするアシュヴァッターマンを性悪な男は指で招く。
 素直に顔を寄せるアシュヴァッターマンにドゥリーヨダナは囁いた。
「わし様。今日はいつもと違うのだが分かるか?」
 アシュヴァッターマンの金色の目が瞬きする。
 彼の想い人はおしゃれだ。プライベートで同じ服を着ているのを見たことがない。今の服もアシュヴァッターマンが初めて見るものだが、そんな簡単な答えが求められているとは思えなかった。
 悩むアシュヴァッターマンにドゥリーヨダナが大袈裟に嘆く。
「ひどいではないか。せっかくおまえのためにめかしこんで来たというのに!気づきもしないとは!」
 叱られた犬のように視線を落としたアシュヴァッターマンにドゥリーヨダナは唇を寄せて悪魔のように囁いた。
「正解は、ひ・も・パ・ン♥」


■2024/11/15 No.456
わし様+タケルくん
「確かに魔法のカードだ」

 ドゥリーヨダナの社員証は魔法のカードだ。
 荷物持ちに同行してくれたイオリにそういうと彼は明らかに眉をしかめた。
「社員証を他人から借りたのはマズいのではないか?」
「問題ない。いつものことだ」
 いいながらドアの電子錠に社員証をかざすと、私のでは開かないドアが簡単に開く。
「ここを通れば近道なんだ」
「通ってはならない区画だろう?」
「私だけではない。みんなやってる」
 ドゥリーヨダナは気前がいい。気に入っている者がねだれば何でも買ってくれるし、お使いには必ず駄賃をくれる。
「早く行かねば一番くじが売り切れてしまう。アシュヴァッターマンを当てれば好きなだけ菓子を買ってもいいと言われているんだ」
 イオリはため息をつくが私に合わせて足を速めてくれる。何度か近道をしてたどり着いたコンビニではちょうどくじを並べ始めたところだった。
「全部もらおう!!」
 一瞬店員はぎょっとした顔をしたが、すぐに箱ごとレジを通してくれた。全部買えば目当ての物は入っているだろう。欲しいお菓子を追加で出した私はレジにドゥリーヨダナの社員証をかざす。電子音がして会計が終了した。
 するとイオリがその社員証を横から取った。裏返す。

 
■2024/11/14 No.454
アシュヨダP
「こっちにはしないのか?ん?」
※サテライトネタ

 シャワーの音にアシュヴァッターマンはいつまでたっても慣れない。
 何度夜を共に過ごしても、幼い頃から憧れたあの人がアシュヴァッターマンの家で無防備にシャワーを浴びている。その意味が鍛えたはずの胸に収まりきらないのだ。
 落ち着かない気持ちに押されるまま、アシュヴァッターマンは乱れた寝具から脱ぎ散らかしたドゥリーヨダナの服を救出する。ジャケット、パンツ、シャツどれもこれも洗濯機で洗えなさそうなものばかりだ。
 近くのクリーニング店の営業時間を思い出しながら、それらを丁寧に袋に詰めていたアシュヴァッターマンの手が止まる。指先に引っかかった紐を手繰り寄せると見覚えのあるカードが出てきた。
 ドゥリーヨダナの社員証だ。
 いわゆるキメ顔で写っているそれだけを見れば、誰もが彼の美しさを否定出来ないだろう。
 その性格を知るまでは。
 拒否される事が多いドブカスな性格も込みでアシュヴァッターマンはドゥリーヨダナの事が好きだ。
 なにもかも好きだが、くるくる変わるその表情も好きだ。悪巧みをしたり、大笑いしたり、嘆いたり。でもまあ
「こんな顔も好きだぜ」
 そっと社員証に唇を落としたアシュヴァッターマンは気づかなかった。シャワーの音がとっくに止んでいることを。


■2024/11/14 No.453
わし様✕モブ
「愛されていたはずなのに」

 ドゥリーヨダナは私を一番に愛してくれている。
 贈り物もたくさんくれるし、私がかわいいわがままを言うと笑って叶えてくれる。この部屋だって買ってくれた。相性もいいし、最高の恋人だ。
 だというのに。
「ああ、カルナか。分かったすぐに行く」
「アシュヴァッターマン。車を用意してくれ」
 あのふたりから連絡がくるとこの人は私を置いていってしまう。
 私があなたの恋人なのに!
 だから、この人が眠っている間にスマホの電源を落としたの。独り占めしたくて。
 いつものように笑って許してくれると思ったドゥリーヨダナは、それに気づいた途端私を冷たい目で見下ろした。
「──出ていけ」
 一言だけ。
 聞いたことのない響きに私は震えながら恋人を見上げた。
「なぜ?私のことを愛しているでしょう?──あのふたりより」
 柔らかい藤色の瞳の温度が下がる。唇が笑みを刻んだ。
「あのふたりより?体だけのお前が?」
 息を呑んだ私を事務的に抱えて、恋人だった人は私を部屋の外に放り出す。呼ばれたであろう警備員が夜着のままの私を敷地の外へと追い出した。


■2024/11/13 No.452
アシュヨダ+黒ひげ
「旦那の方がすげぇよ」

「これで拙者の『負けないでわし様ちゃん♥恥辱の十番勝負』を燃やしたことは水に流してやる」
 薄暗いシアタールームに呼び出した挙句、親しげに肩に腕をまわした黒ひげにアシュヴァッターマンは額に青筋を立てて言い返した。
「人の主を女性化した挙句に変な目に合わせてんじゃねぇ!!」
「やだやだ、『この作品は現実のあらゆる事と関係がありません』って書いてあったでしょ。バラモンともあろうものが注意書きも読めないんでちゅかー?」
 煽られていることは分かったがアシュヴァッターマンは反論出来なかった。男同士の宴会で回ってきた見慣れない本の内容に激怒して宝具の錆にしてしまったのは事実だ。
「条件は?」
「ここに座って拙者と一緒にビデオを観るだけ。最後までな」
 無言で腰を下ろしたアシュヴァッターマンの隣に黒ひげも座る。動画が再生された。
 肌色しかない上映が終わる。
「つまんないですなー。もっとこう、動揺するとか、興奮するとか」
 アシュヴァッターマンの醜態を期待していた黒ひげに、バラモンで生涯独身だった青年は嫣然と笑いかけた。


■2024/11/13 No.451
カルヨダ
ツンデレだね」

 カルナは心が広い。
 マスターだけでなくカルデアの皆がそれを分かっていたがドゥリーヨダナが来てからそれがさらに再認識された。
「カルナほどの掘り出し物はそうそうない」
「カルナはわし様の舎弟いや友だとも」
 本人が前にいるというのに本音だだ漏れのドゥリーヨダナの言葉にマスターはカルナに囁く。
「あんな事言われているけど大丈夫?」
 掘り出し物だの、舎弟だの。少なくとも友達に対する言葉ではない。
 マスターのそんな心配にカルナは薄く微笑んだ。
「心配ない。あれはツンデレだ」
「だぁれが、ツンデレだ!お前、ガネーシャ神に妙な影響を受けておらんか?」
 ずんずんと近づいてきたドゥリーヨダナにカルナは顔を上げた。
「──おまえがいなければ勝利など意味はない」
「ぎゃああああああ!!!」
 昼寝をしていた猫が尻尾を踏んづけられたような声でドゥリーヨダナが叫ぶ。
 そんなドゥリーヨダナを前にカルナは大事なものでもあるかのように自身の胸に手を置いた。
「オレの事を真に道具と思っていたなら、オレの死にあれほど嘆くはずがない」


■2024/11/12 No.450
カルヨダ
「この手の事は恋人から習うものだ」

「わし様に出会う前のカルナではないかぁ!!」
 ドゥリーヨダナの大声に何かを言い返したカルナの言葉 はマスター達には聞き取れなかった。訛りがひどくて。
 サーヴァントが記憶喪失になるという霊基異常はいつも の事だが。カルナがなったのは初めてだ。そして、その言 葉が聖杯のアシストがあっても何を言っているか分からな いとの事でドゥリーヨダナが呼ばれたのだ。
 当のドゥリーヨダナはつまらなさそうに鼻を鳴らす。
「アディラタの息子、カルナ。お前の父親の仕事用の言葉 で話してみろ」
―――あ、あなたは、誰、で、すか?」
「出来るではないか」
 たどたどしいカルナの言葉にうんうんとドゥリーヨダナ が頷く。そこにマスターが疑問を投げた。
「仕事用の言葉って?」
「わし様の頃は、それぞれの身分で使う言葉がかなり違っ ておったのだ。それこそ、スータと王族では発音からして 違う。さすがの聖杯もそのあたりの言語はカバーしきれな かったようだな」
 王族、との言葉にぎょっと肩を揺らしたカルナにドゥリ ーヨダナはにやにやと笑いかけた。
「まあいい。二度目だからな。コツは掴んでいる。来いカ ルナ。わし様が直々にいろいろと教えてやろう」
「行くってどこへ?」


■2024/11/11 No.449
カルヨダ+ジナコ
「降伏、する」

「クシャトリヤは乞わない。オレは他ならぬおまえにそう教わった」
 落城寸前のカルナの言葉に、ドゥリーヨダナ+ガネーシャ神の連合軍は顔を見合わせた。
 マルチプレイでそれぞれの国を育成するシミュレーションゲームである。
 当初、このゲームに慣れているガネーシャ神が一人勝ちすると思われたが。
「おまえ、王じゃなくてよかったなァ」
「っ!どれだけ偵察ユニット作ったんスか!?ありえない!!」
 と、ドゥリーヨダナの国がガネーシャ神の国を飲み込んだのだ。
 残るはどちらの国も攻めずに育ってきたカルナの国だ。武力に優れた国だったが物量には勝てない。あっという間に首都を囲まれてしまった。
「降伏すればプレイヤー権限は残してやる」
 その勧告にカルナは否、と答えた。
 ドゥリーヨダナはふむ、と考え込む。
「──クシャトリヤが攻め込まれた時どうするかは教えてなかったな」
「オレはおまえ以外に負ける事はない」
「では答えは簡単だろう?」
 にまにま笑うドゥリーヨダナにカルナは目を伏せた。


■2024/11/11 No.448
カルヨダ
「ドゥリーヨダナを」

「父よ、我が父よ」
 回収した息子の魂に呼ばれてスーリヤは意識を向けた。
 息子の魂が震える。
 当然だろう神の魂に比べ半神とはいえ人間の魂はあまりに脆弱だ。この身に取り込んだ息子の魂はじきに溶け『スーリヤ』と一体化するだろう。
「オレは消滅するだろう」
 意識も記憶も失い神霊の一部となることは確かに『人間』としての消滅だろう。
 だが、それがどうしたというのか。
 人の間に命を受けた息子の人生はひどいものだった。あまねく地上を照らすスーリヤが人の間引きに加担するくらいに。
 やっと肉体を失ったからにはそんな記憶は必要ない。
「父よ。オレは幸福だった」
 愚かな事を言う息子は真にそれを信じていた。
「それを忘れてしまえば、貴方となったオレは地上を焼き尽くしてしまうだろう」
 息子の拙い脅しにスーリヤは少し考え込んだ。
 息子はスーリヤの神威に耐えながら言葉を紡ぐ。
「全てを覚えておくことが不可能なら、ひとつだけ残して欲しい」
 ひとつでいいのか?
「それだけでオレは自身の幸福を忘れることはない」


■2024/11/10 No.447
現パロ ビマヨダ
「デートみたいだ」

 事前にルートを組んだ最新型のカーナビのおかげかドゥリーヨダナの運転は危なげがない。
「次の酒蔵は期待出来そうか?」
 質問に俺はミネラルウォーターを一口飲んでから答えた。
「評判は良いな。歴史もそこそこある」
「経営者が間抜けとか、借金があるとか?」
「聞いてねぇなぁ」
 俺の答えにドゥリーヨダナは舌打ちした。
 今度オープンする俺のレストランに合わせた酒を探して酒蔵を巡りたかった俺と、アルコール業界に食い込む為に買収先を探しているこいつの利害が一致したのがこの小旅行だ。
 飲酒する俺の代わりにドゥリーヨダナが運転し、俺をダシにしてドゥリーヨダナは聞き込みをする。
 ふたりっきりで。
 こいつならいくらでも運転手を手配出来るというのに、珍しく自分でハンドルを握っている。
 俺は薄く酔った意識でその横顔を見つめた。
なんだ?」
「いや、おまえ。顔がいいな。末の弟ほどじゃねぇが」
「おまえの弟は世界的モデルだろうが!」
 馬鹿にされたともっと怒るかと思ったがドゥリーヨダナはそれだけ言うと前を向いた。その頬が薄く染まっているのを見て勘違いしそうになる。


■2024/11/10 No.446
生前?アシュヨダ
「ずっと傍にいるからな」

 生前幽霊を見たことは無かったが、成ってみればまあまあ悪くない。食べず眠らず──人に取り憑くことも出来る。
 ふらふらと歩く赤毛の青年の後をついて行きながらわし様は寄ってくる怪異をちぎっては投げ、投げては潰しの大活躍。と、いうのにアシュヴァッターマンには何も見えていない。あーとかうーとか言うばかり。
 その額に宝珠が在った頃、魔除けの実感が無いと言っていたが。さては見えないだけだったのではないか?
 再度、目の前で手を振ってみても反応はない。バラモンとしてどうかと思う。
……だんな」
(なんだ?アシュヴァッターマン)
 答えたというのに聞こえないアシュヴァッターマンはうずくまってしまった。その背中が震えている。
 撫でてやっても何も伝わらない。
 ──神がいるのなら。いや、いたな。そいつが原因だったわ。夜襲ぐらいいいではないか。そもそもアダルマはそちらが先だったのに、なんでこっちが悪い!?
 怒りに震えてわし様は襲いかかって来た怪異をぶちのめした。
 そうだ俺は怒っている。
 自分が死んだことはしょうがないが、アシュヴァッターマンがこのような目に合う謂れはあんまりない。
 わし様は赤い髪に見えない手を添えた。


■2024/11/09 No.445
アシュヨダ
「爪先立ちの独占欲」

 肩に重みがかかり、ドゥリーヨダナはほくそ笑んだ。
「あらあら、かわいいわんちゃんですこと」
 ドゥリーヨダナと話していたキアラが微笑む。ドゥリーヨダナが肩に手をまわすとさらさらとした髪に触れた。
「──わん」
 ドゥリーヨダナの肩に背後から顎を乗せたアシュヴァッターマンが返事をした。その表情はドゥリーヨダナから見えないが、キアラが笑みを深めたのは分かる。
 鍛えられた腕がまわされて彼は片眉をあげる。
「おいおい、アシュヴァッターマン。わし様は御婦人と編成の話をしていただけだぞ」
 返事はないが強く抱きしめられてドゥリーヨダナはわざとらしくため息をついた。
 その様子にキアラが頬に手を当てた。
「警戒心が強い忠犬ですわね。わたくし何もしませんのに」
「すまないな。わし様を大切に思うあまりなのだ。許せ」
 形だけの謝罪にキアラはきらりと瞳を輝かせた。
「では今度──」
「ワンっ!」
 強く遮られてキアラはくすくすと笑う。
「冗談ですわ。──わたくし犬に蹴られたくないので退散いたしますね」
 去っていくキアラを見送って、ドゥリーヨダナは肩にある赤い髪をかきまわした。


■2024/11/08 No.444
怪異パロ
「煙草が逃げた」

 こいつだ!!
 親しげに会話に入ってきた怪異に俺は仲間の腕を引っ張った。
 禁域の山には神が棲む。だが神に遭っても恐れる事はない。やつらはこちらに興味がないからだ。
 恐れなければならないのはこいつ。俺達が相談しているところにするりと入ってきて煙草をねだっている、神でもなんでもないただの怪異だ。
 仲間が笑いながら札を取り出す。
「多少強そうだが、ただの怪異じゃねぇか」
『わし様は多少どころではなく強いぞ?』
 怪異が楽しそうに笑みを刻む。仲間が札を振りかぶり、俺はそいつから手を離して駆け出した。
 ぐしゃり。
 背後で何かが潰れる音がする。吹き上がった神気に押されるように速度を上げた俺に声が届く。
『賢明だな。命が惜しいようだ』
 心臓が掴み上げられる。もつれそうになる足で俺は禁域の山を転がり降りた。
 この禁域では神よりもただの怪異の方が恐ろしい。何故ならば──。

「旦那。危ねぇことはしないでくれ」
 神の言葉に2柱に愛されている怪異は唇を尖らせた。


■2024/11/08 No.443
生前カルヨダ
「これからはわし様が守ってやる」

 混乱のままに競技会が終わり、豪華な馬車の中で友になりたてのふたりは無言で向かい合っていた。
 ゴトゴトと馬車は揺れ、その度に吊るされたランタンが陰影を踊らせる。夜に落ちた外の景色の流れは止まらない。
 沈黙に耐えきれなくなったのはドゥリーヨダナが先だった、ごほん、と空咳をして彼が王にした男を見つめる。
「おまえ、カルナという名前なのか」
「愚問だな」
 ドゥリーヨダナの額に青筋が浮かんだ。王子たる彼はこのような対応をされた事がない。だが、彼は続けた。
「御者の息子がどこで弓を習った?」
「お前たちの師の所業も知らぬのか」
 ドゥリーヨダナはゆっくりと息を吐いた。この男がドゥリーヨダナを怒らせる利点はなにもない。
自己紹介してみろ」
「スーリヤの息子、カルナだ。よろしく頼む」
「──なるほど。そういう性分というわけか。おまえ今までよく無事に生きてこれたな」
「この鎧は父から賜ったものだ」
 鎧を撫でるカルナにドゥリーヨダナは片眉をあげた。
「不死の鎧か。わし様も欲しいものだ。──ん?刺されたことがあるのではないかーっ!!」
 カルナの言葉の文脈を読み取ってドゥリーヨダナが叫ぶ。
 表情を変えずに頷いたカルナに彼はため息をついた。


■2024/11/07 No.442
アシュヨダ
「初めてを貰ったのは初めてだ」

 「アシュヴァッターマン、ちょっとこっちに来い」
 ベッドの側でにやにやと手招きするドゥリーヨダナが何 か企んでいるのは分かっていたが、アシュヴァッターマン は素直に近づいた。
 途端、膝裏をすくい上げられ背中を支えて抱き上げられ る。いわゆるお姫様抱っこだ。
「嬉しいか?」
「あんたが何してもくれても俺は嬉しいぜ」
 その返答にドゥリーヨダナは唇を尖らせた。
「それは知っているが・・・生前妻にねだられて何度かやった のだが、何が面白いのかと思ってな」
「・・・旦那、降ろしてくれ」
 不思議そうなドゥリーヨダナにアシュヴァッターマンの 強張った声に腕の力を抜いた。するするとアシュヴァック ーマンが立ち上がる。
 ふたりの目が合う。
「うわっ!」
 今度はドゥリーヨダナが抱き上げられて声を上げた。
「旦那、面白れぇか?」
 90キロの巨体を鍛錬と根性で持ち上げたアシュヴァッ ターマンに、ドゥリーヨダナは目を丸くして。笑った。
「ふ、ははは。人に抱き上げられるなど初めてだ」
 楽しそうに足をばたつかせるドゥリーヨダナを支えなが ら、アシュヴァッターマンの顔が赤くなる。


■2024/11/07 No.441
マフィアパロ+モブ
「マーキング」

「お話は伺っております。換金ですね」
 無記名の詫び状に書いてあった住所は大通りに面した換金ショップだった。詫び状に同封してあった指輪を見せた途端、店長が出て来て奥に通される。
「現金の方がよろしいですね」
 にこやかに念を押され、理由も分からず頷くとテーブルに真新しい帯封の札束が積まれた。
 無くなった愛車を買い替えても余りある金額に息を呑む。
 この辺りはカウラヴァグループの縄張りだが、ここ最近新興勢力が食い込んで来たとかで争いが絶えない。
 愛車が盗まれたのは一際騒ぎが大きい夜だった。
 抗争に使われたのだろうと嘆き諦めていたところ、無記名の詫び状と指輪がポストに入っていたのだ。
「あ、あの、この指輪ってこんなに高価なのですか?」
 馬鹿な質問に店長は苦笑して指輪を透かす。
「いえいえ、あの方の普段遣いにもなりませんよ。──こういう時に使われるものですから」
 それは、自分以外にも損害を補償された者がいるという言葉だった。
 息を吐く。他にも貰っている者がいるなら、と現金を手に取ると店長が目立つ模様が書かれた紙袋を出した。
「これに入れておけば安心ですよ」
 それがどういう意味か分かっていて、私は喜んでそれを受け取った。


■2024/11/07 No.440
カウラヴァ+モブ
何だったんだ?」
※ネップリネタ

「こんな面倒な事をせずに出版してしまえばいいではないか?」
 コンビニのレジの横でたむろっている男3人から聞こえた言葉に俺は耳を澄ませた。
 ここの店長はいい人でがんばったバイトにはちゃんと時給をあげてくれる。自費で買ったお菓子を休憩室に置いてくれるようなあの人に迷惑をかける連中はすこし格闘技をかじっている俺ががんばって追い払わなければならない。
 どう見てもガラが悪い男3人はATMではなくコピー機に向かっているようだ。
 赤い髪の日に焼けた男がスマホ片手になにやら操作している。
「本にするより手軽に楽しめるんだよ」
 スマホから顔をあげて紫の髪の男にそう言い含めている傍ら。白い髪の男がコピー機を覗き込んだ。
「出てこないが?」
「シール印刷だからこっちの取り出し口だな」
 ぱかり、とパネルを開いて紫の男が用紙を取り出す。
「ふむ。──まあまあではないか」
「おまえがモデルとは思えんな」
 なにやらごきげんに言い合う二人の間でコピー機が大量の紙を吐き出している。
 何をしているかさっぱり分からないうちに、3人は他に何をするでもなく酒とつまみを買って帰っていった。


■2024/11/06 No.439
カルヨダ+モブ
「毎日家に返しているが?」

「何が不満だというのか!」
 王子の叱責に私は震えあがった。だが、無理なものは無理なのだ。
 私はドゥリーヨダナ様付きの衣装係達を束ねている。古式に則りこの方の衣装を毎日整えてきた。
お暇をいただきたく、」
「金なら浴びる程与えておるだろう!?」
 私は深々と頭を下げた。お金の問題ではないのだ。このままでは私は死んでしまうだろう。
「かぁるなっ!!」
 王子が最近召し上げたスータを呼びつける。
「これはこの者の本心か?」
 王子に言われて気味の悪い瞳が私を見据えた。
「このような小者に見限られるとは。さぞかし悪行を成したのだろう」
 そのあんまりな言い草に私は言葉を無くすが、王子は無礼を咎めるではなく考え込んだ。
わし様が何かしたせいだとおまえは言いたいのだな?」
「成すべき事を成さないのもまた罪だろう」
「わし様はこやつに溢れんばかりの富と豪華な家、よく躾けた奴隷数人を与えたがまだ足りないと?」
 王子には過分な報酬をいただいていた。それに不満などあるわけがない。でも──。
「王子たるおまえと違って矮小な者は休まねば死ぬ」


■2024/11/06 No.438
わし様+モブ
「口が硬い小間使いが欲しかったのだ」

 ぼくの村は邪神に魅入られている。
 クル国の外れにあるぼくの村は貧しくて女の子が生まれる度に大人たちが怖い顔をして相談しているくらいだ。
 でも、年に一度神様のお祭りの時はどこからともなくごちそうが現れてみんなで思いっきり食べられる。
 そして次の日、やさしいお姉さんがひとりいなくなるのだ。
 この村は邪神に魅入られている。
 その証拠に大きな戦があった時、大人たちは正しいパーンダヴァではなく凶兆の子の勝利を祈願していたのだから。
「正しく生きるためには半神の人々を応援すべきだよ!」
 ぼくの主張に大人たちは眉を寄せた。
「おまえ達が、いや私達が生きてこられたのはドゥリーヨダナ様が食べ物を与えてくださったおかげだ」
「代わりにお姉ちゃんが連れて行かれたじゃないかっ!」
 ため息が返ってくる。
「あの方は王子だ。こんな貧しい村から連れ出さなくても美姫はいくらでも手に入る。──若さではなく優しい娘をひとりだけ欲しいとおっしゃったのだ」
 その好意が本物だったのだと。戦に敗れた都から今まで連れ出されていた娘たちが帰って分かった。
 彼女たちは嘆いていた。無体を働かれることもなく普通に務めるだけで夢のような暮らしをさせてもらったのに。どうして優しいあの方があのような目に、と。


■2024/11/04 No.437
ビマヨダ
「今のはわし様が悪いよ」

「では、釈明してください。ビーマさん。どうしてあなたはドゥリーヨダナをいじめるのですか?」
 そう言いながらもマスターは分かっていた。ビーマの数々のアウトな行動は好きな子ほどいじめたいというアレだと言う事を。
「ぐすん、ぐすん、わし様とても傷ついた。たぁっぷりの損害賠償がないと癒やされない」
 ヒゲの成人男性のわざとらしい泣き真似にビーマは明らかに怯んだ。マスターは目線で促す。
(もう告っちゃえよ!!)
 覚悟を決めたビーマが口を開く。
「俺の初恋は子供の頃で、相手は幼馴染だった」
 ドゥリーヨダナが突然の話題に不審そうに顔をあげる。
 そこにビーマはダメ押しをした。
「カウラヴァの人間だ」
「ドゥフシャラーか!?やらんぞ!!」
 末姫と勘違いしたドゥリーヨダナが毛を逆立てた猫のようになったのに、ビーマは慌てて首を振る。
「違う。相手は男だ」
「ヴィカルナか?まあ、お前達と仲が良かったからな」
「違う。──性格がドブカスの方だ」
「ああ、ドゥフシャーサナか。おまえ趣味悪いな」
 ドゥリーヨダナが言い放った途端、ゴチンとその頭に拳が打ち込まれた。


■2024/11/04 No.436
カルジナ
「そうかそうなのか」

「ジナコちゃんは晴れ女なのね」
 幼稚園の先生の言葉にボクは頷いた。
 ボクが参加するお出かけはみーんな天気が良くなる。にゅーすのお姉さんがどれだけ雨だって言っても、ボクが出かける頃にはぴかぴかのお天気だ。
 てるてる坊主なんていらない。傘もカッパもボクはほとんど使わない。──冬以外は。
「晴れていてくれたら」
 ひとりになったボクは考える。
 ボクが一緒に出かけていれば。お天気になって凍っていた路面が溶けてさえいれば。
 スリップ事故なんて起きなかっただろう。
 カーテンを締め切っているから外の天気なんて分からない。欲しいものは通販で手に入れるから外に出ない。
 だから太陽がずっとボクを見つめていたことなんて知らなかった。
 神霊はサーヴァントが持ち帰った過去未来の記憶を持つ。カルナさんが一体化したスーリヤは月の記憶もカルデアの記憶も持っていたはずなのだ。
お前は足が早かっただろう?」
 いつものぽやぽやしたカルナさんの言葉にその事に気づいたボクは泣きそうになりながら怒ってみせる。
「いつの話をしているんスか!!そんなの幼稚園の頃の甘い思い出ってやつ!!」


■2024/11/03 No.435
生前ビマヨダ
「で、おまえは誰だ?」

「どうせ、お得意の罠だろ」
 ドゥリーヨダナが記憶を失ったという一報を受けた時、俺がそう笑っても兄弟達は誰も否定しなかった。それほどまであいつは俺達を騙してきたのだ。
「だけど、様子を見に行かないわけには」
「じゃあ、俺が『見舞い』に行ってくるぜ」
 心配そうな兄貴に胸を叩いて俺はドゥリーヨダナの宮殿に向かった。
 案内されたいつもの部屋では、ドゥリーヨダナが退屈そうに椅子に腰かけていたが、こちらを見ると大げさに顔をしかめる。
「ビーマでないかっ!!何しに来た!!」
 ドゥリーヨダナの横に立っていたドゥフシャーサナが目を見開く。それに構わず俺を睨みつける紫の瞳を迎え撃つ。
「ご挨拶じゃねぇか!おまえが体調を崩したっていうから、わざわざ見舞いに来てやったんだよ!」
 ぎゃーぎゃー!と騒ぐドゥリーヨダナといつものように言い合って、退室すると。ヴィカルナがそっと俺の手を引いた。
 導かれたのは部屋と部屋の間の隠し通路。控えている衛兵の間を抜けてヴィカルナは小さな穴を指差す。覗き込めばドゥリーヨダナの部屋が見えた。
 椅子に座り直したヤツが、傍らのドゥフシャーサナを見上げる。


■2024/11/02 No.434
わし様+マスター
「わし様、一日中寝てみたかったのだ」

 ドゥリーヨダナは寝汚い。
 暇があれば寝てばかりいるし、周回に呼んでもぎりぎりまでベッドから出てこない。
「王子ってあんなに寝てても務まるものなの!?」
 文句を言うと、同じ王子であるビーマが困ったように眉を寄せた。
 食堂のカウンターは生前様々な職業だったサーヴァントが行き来している。その中でドゥリーヨダナのように惰眠を貪っている者は誰もいない。
「あいつは宴で夜更かしして寝坊して起きてくることはしょっちゅうだったからな」
 ガチャン、と乱暴な音がしたので振り返るとアシュヴァッターマンが食器が乗ったトレーをカウンターに置いたところだった。その顔には明らかに怒りが滲んでいる。
言いたいことがあるなら言えよ」
 ビーマの言葉にアシュヴァッターマンは金色の目を険しくした。
「旗頭が惰眠を貪ったり出来るはずねぇだろ!夜は社交!朝は鍛錬!昼は政務!であの人は生前ろくに寝てなかったんだよ!!あんたらのせいで!!」
 その剣幕にカウラヴァと敵対していたパーンダヴァの次男はなんとか言葉を返した。
「あいつはそんな事、一言も」
「言うわけねぇだろ!あの性格で!」


■2024/11/01 No.433
カルヨダ+マスター
「いい湯だった」

「ここを温泉とする!!」
 ドゥリーヨダナの宣言に冬の川が薄氷を浮かべていた。
 特異点の山の中。積もった雪をかき分けて進んでいたの は、先頭からカルナ、マスター、ドゥリーヨダナである。
 ある意味一番楽をしていたドゥリーヨダナが川を見つけ、 温泉に入りたいと言い出したのだ。
 確かにマスターも礼装の保護はあるが寒さを感じないわ けではない。
「そりゃあ、温泉に入れるなら入りたいけど」
「決定だな。――カルナぁ!!」
「承知した」
 ドゥリーヨダナが指示を出さずとも、カルナは迷いなく 河原に転がる大きな石をいくつも川に投げ込んで、ぐるり と川の水をせき止める。
「ここに入るの?心臓止まるよ?」 「ふっふっふ、我らカウラヴァに不可能はない」
  不敵に笑うドゥリーヨダナの横でカルナが片手で顔を覆 った。
「真の英雄は目で殺す」
 ジュワッ!!
 カルナから放たれたビームが川面を沸騰させる。そして それはすぐ外気に冷やされ適温になった。
「うむ。さすが我が友」
 満足げなドゥリーヨダナにカルナが微笑む。


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