shibacan
2024-12-31 23:49:55
3339文字
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Take a Bath(オプD:幼妻AU)

オプDにお風呂でイチャイチャして欲しい欲と年末年始であるという事実が合体して生まれました
また勝手に佐倉さん家の設定をしれっとお借りしております

 ことの始まりはカレンダーを眺めていたエリータ=ワンの一言だった。
「そう言えば、そろそろ今サイクルも終わる頃だけれどオプティマスは休みを取らないの?」
 ここでようやく、オプティマスは今年という一つの暦の区切りが終わるということをはっきりと自覚した。
「ああ、そうか。もうそんな時期か」
 決裁の終わったタブレットの山をどかしオプティマスはしみじみと呟く。今サイクルはあまりに多くのことが起きすぎて、まるでずっと続いていくような気がしていた。
「予定は……特にないな」
 正真正銘たった今気づいたばかりで予定など何も考えていない。オプティマスは苦笑を浮かべエリータを見上げた。
「今のところ情勢も落ち着いているし、数日はゆっくり休むことにするよ」
 するとエリータはやれやれと肩をすくめて見せた。
「そうよね、あなた、そういうタイプよね」
 オプティマスは首を傾げる。なんだかよく分からないが確実に責められている、これは。
「いい、あなた今年結婚したんでしょう?」
 腰に手を当てエリータは言った。
「そんな新婚の二人の初めての年越し! 一緒にゆっくり過ごすのがセオリーでしょう」
「そうそう! 例えばどこかアイアコンの良いところでゆっくりディナーとかさ! カウントダウンパーティーとか!」
 ずい、と顔を出しB-217が陽気に笑う。ああ、そうか。そこでやっと、オプティマスは自分がもはや一人で暮らしている訳ではないという事実に思い当たった。
 彼と一緒に初めての年越しだ。ささやかでも良いがなにか特別なことをして過ごしたい。
「その顔は今やっと思いついたって感じね」
 エリータの厳しい視線にオプティマスは苦笑いを浮かべた。カレンダー上は暦が新しくなることを知っていた。ただそれが特別な日になることを、まったく自覚していなかったのだ。
 お手上げだ、という風にオプティマスは顔を上げる。それなりに人口の多いアイアコンにおいて今からどこかを探すのは非常に難しい。
「どうしたら良いだろうか」
 するとエリータとビーは顔を見合わせにやりと唇をつり上げた。
「そう来るだろうと思ったから」
「僕たちからのプレゼントだよ、アイアコン郊外に最近できたリゾートホテルの宿泊チケット二人分! ここってめっちゃ良いらしくてオープンから全然予約が取れなかったんだよね。でも今回オプティマスを泊めて欲しいってことでちょっとエリータが圧」
「お願いしたら二人分、予約が取れたの」
 マシンガンのようにしゃべり出したビーを押しのけ、エリータはオプティマスの手に二枚のチケットを押しつける。
「後のことは私たちで十分対応できるから、たまにはあなたも休まないとね」
 こうしてオプティマスは結婚して初めての年越しを高級リゾートで過ごすことになったのだった。

***

 オプティマス自身もはじめてである高級リゾートに泊まると言ったときD-16は少し不安そうな表情を浮かべた。
 真面目な彼は自分がマナーやそういった高級な場所での振る舞いをまだ勉強中の身であることを決して忘れない。
「その……、俺でも行って大丈夫なんでしょうか?」
 生真面目なその様子が可愛らしくてオプティマスは小さな笑みを浮かべると華奢なコグなしの機体を抱き上げる。
「何も心配はいらないよ。部屋はそれぞれ独立した棟になっていて客同士が顔を合わせないようにプライベートに配慮されているらしい」
 オプティマスの言葉にD-16は安心したようだった。
 すごく、楽しみです。小さな唇を綻ばせ小さな妻は笑顔を作った。
 そして、このリゾートホテルの売りはもう一つある。オプティマスは笑みを深めながら小さな妻の手を優しく握った。
「旦那様?」
「きっと君も気に入ると思うんだ」
 不思議そうにぱちりと黄色い瞳が瞬いた。

 湯気のたつ広いバスルーム。オプティマスの大きさどころかさらに大型な機体でも大人数で入れそうな広い湯船にはとぷとぷとオイルが満たされ、水面を揺らしながら落ち着いた照明にきらりと光っていた。
「わぁ……!」
 それぞれの部屋から行けるプライベートの大浴場にD-16は言葉をなくし、圧倒されたようにため息をついた。オイルに満たされた湯船に近づくとほわりと温かな温度が伝わってくる。
「ええと、これ……全部お風呂、ですか」
 D-16はキラキラとした表情でオプティマスを見上げる。その嬉しそうな表情だけでオプティマスはチケットを贈ってくれた二人へ心の底から感謝した。
 後ほど何か礼を考えなければ。考えながら小さな頭を優しく撫でる。
「オイルバスだね。ここ周辺は天然の熱泉が沸くとの話だったが、これはすごいな」
 さすがは高級リゾート。これだけの規模を満たせるほどのオイルを用意できるのはアイアコン中を探してもそう数は多くない。
「奥にも色んなお風呂があるんですね! すごい!」
 いつになくはしゃいだようにD-16が声をあげる。
 小さな妻は備えられた浴槽の一つで足を止めるとじっと足下で揺らめく白く濁ったオイルを眺めた。そっと手を伸ばして掬ってみると適度な温度のあるそれはD-16の指の隙間から流れ落ち、また広い湯船に戻っていく。
 すごく、すごく広い、お風呂だ。D-16は湯気の揺らめく広いオイルバスを眺めながら、何度か湯船に張られた洗浄オイルに手を入れた。
「気に入ってくれたかな?」
 後ろからついてきたオプティマスが現れ、黒いヘッドギアの上に手を置く。
 D-16はひとしきり広大な浴場を眺めると頬を火照らせながらはい、と笑顔を作った。
「こんなに広いお風呂、はじめてです」
「まあ、私もこんなに広いのははじめてなんだ」
 一緒ですね。D-16は擽ったそうに笑う。
「さて、ここでずっと立っているのもなんだ」
 青い手を差し出し、オプティマスは広い湯船に片脚を沈める。心地よい温度に温められたオイルが疲れた機体にじんわりとしみてくる。
「ゆっくり楽しもう」
「はい、旦那様」
 小さな白銀の手が大きな青い手に重なる。D-16が滑らないようエスコートしながらオプティマスは湯船の広い部分に腰を下ろした。
 隣には階段状になった浴槽底の一段高い所に小さな機体が腰掛ける。広いオイルバスがはじめてだとはしゃぐ華奢な機体は瞳をキラキラさせ、少し白濁したオイルを掬っては楽しそうにしていた。

 心の底から楽しそうな笑みを浮かべるD-16。オプティマスは眩しいものを見るようにオプティックレンズを細めた。
 彼と……D-16と結ばれて良かった。
 隣に座る小さな機体を抱き寄せてオプティマスは深く排気を吐いた。急に抱き締められD-16は驚いたように黄色の瞳を丸くする。
……だんなさま?」
「きみに、逢えて良かった」
 自然とオプティマスの発声回路から言葉が溢れた。
「ずっと、このマトリクスが、いや、私のスパークがある限り……君を幸せにすると誓う」
 湯船に沈んでいた小さな手を取り、その細い指先へ口付ける。表層を伝うオイルが雫となってぽたりと煌めきながら水面に落ちた。
……はい、旦那様。いえ、オプティマス・プライム。俺も、今日も……いえ、これからもずっと貴方の側で貴方を幸せにできるよう、がんばります」
 白銀の唇が柔らかく微笑みを作る。幸せを噛み締め、オプティマスはきゅっと小さな妻の機体を抱き締めた。
 突然、ドンっと空気が揺れ、コポコポと鳴っていた湯が違う振動の波に変わる。
 オプティマスとD-16は顔を見合わせると浴場の窓から見える外を覗き込んだ。
 ドンッ!
 さらにもう一度、音と共に見えたのはアイアコンの方で上がるニューイヤーの花火だった。
「年が明けましたね、旦那様」
 ふふっとD-16が笑う。膝の上にのせた妻に微笑み返しオプティマスはその白銀の頬に口付けた。
「ああ、ハッピーニューイヤーだ、ディー」
 ずっとこの人と一緒にいられるように。
 そう願う二人を祝福するように新しい年を祝う花火がまた上がる。温かい温度に包まれながら二人はしばらく美しい炎の花を眺めていた。

<終わり>