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ニイナ
2024-12-31 23:40:37
8622文字
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君を暴くための作法 4
弱視若様と鰐さんの続き。
ちょっと鰐ドフに近付いた気もする。
ほとんどBWと若様の話。
※引き続き120%捏造です。
君を暴くための作法 4
一緒に付いていくと豪語していたヴェルゴにはどうしても外せない予定があるらしく、食事に行くメンバーはクロコダイルをはじめとし、マリアンヌとロビン、そうしてドフラミンゴの四人になっていた。最後までドフラミンゴの心配をしていたヴェルゴをどうにかドフラミンゴが説得するのをクロコダイルが面白そうに眺めていたので、ロビンはついため息をもらした。
ザラの経営する店はちいさなカフェで、最近では予約をすることも困難な人気店になっている。ダークグレーの壁にはアーチ型のドアが付けられていて、ドアの上部はすりガラスがはめ込まれており、そのドアの上にスパイダーズカフェと店の名前が綴られていた。店の前には列が出来ていて、人のにぎわいがよくわかる。それを目にしたドフラミンゴが驚きの声を上げた。カフェの名前は大きく書かれているので、ドフラミンゴにも読めたのだろうなとロビンは思う。
「スパイダーズカフェって、ポーラの店だろう!?」
「ポーラ・ザラ。彼女もうちの社員よ」
「フルネームは公開されてないがな」
「そうだったわ。ごめんなさいね、忘れてもらえる?」
「
…………
一日で得て良い情報量じゃないな」
もはや驚くことに慣れつつあるらしいドフラミンゴがゆるく首を振りながら息を吐いた。ザラの店、と言っていたため、ポーラの名が出ておらず、そこには思い至らなかったのかもしれない、とロビンは納得していた。予約済みであるとはいえ、ほとんど特別枠になっているので、ロビンたちは裏口から入ることになっている。カフェをぐるりと一周して、壁の色と同じ色の目立たないドアを開けば、ひとつの通路に出ることになり、その右手にドアが二つ見えていた。通路の先は普段の店内へ続いていて、この通路は限られた者しか使うことがないものだった。先に店へ入ったロビンはふと後ろを振り返り、ドフラミンゴがそこに佇んだままなことに気付いた。そして、すぐさまドフラミンゴの目のことに思い至る。ロービジョンであるドフラミンゴの目は、おそらく光にも弱い。そのため、室内へ入ると明るさに慣れるために時間がかかるのだ。眩む目元を押さえるように額に手を当てるドフラミンゴの傍に、気遣うごとくクロコダイルがいて、ロビンはここは任せて大丈夫だと判断する。直接手を貸すことはせずにドフラミンゴの近くで待ちつつ手を伸ばせる姿勢でいるクロコダイルに、これが無意識だったとしたら、と考えて首を振った。
「この先は段差もないから安心するといい」
「
……
あァ、ありがとう」
ドフラミンゴに触れることなくそう告げるクロコダイルに、ドフラミンゴがかすかな驚きを見せてそっと息を吐いた。ドフラミンゴ自身がどう思っているかはわからないものの、どことなく、すぐさま誰かの手を借りることをしたくない気配を感じる。それをクロコダイルもわかっていて、あの距離を取っていた。そんなクロコダイルの態度がドフラミンゴにどんな感情を芽生えさせたのかはわからない。けれども、すこしずつドフラミンゴの空気がゆるんでいっている気がした。
「ボス、ずるい」
「そうね」
ぽつりとこぼれたマリアンヌの言葉は、彼女が思うことと、ロビンが思うことの程度に違いはあれど同じ感情だった。マリアンヌからすれば、勝手に仲良くなって、というような印象に近いだろうと思う。けれどもロビンはそれとは違っていて、クロコダイルの狡猾さを思ってのことだった。ただそれを突くつもりは毛頭なく、面倒なことにならなければいいと思うに留めておいた。
二つあるドアのうち、手前のドアを開けば、そこは個室になっていた。六人で囲うことの出来るテーブルと椅子が合わせて六脚用意されている。今日は四人のため、テーブルのセットは四人分だけ用意されていてた。
「ドフラはこっち」
「フフフッ、わかった」
マリアンヌがドフラミンゴの手を引いて隣を促したので、二人が並ぶ形になる。ロビンは空いている席を埋めるだけで良かったので、クロコダイルが座るのを待ってからその隣へ腰を下ろすことにした。一瞬、迷いを見せたクロコダイルだったものの、予想通りドフラミンゴの前に腰を下ろしたので、ロビンはマリアンヌの前へと着くことになった。
「いらっしゃいませ」
「ザラ、和風パスタひとつとせんべいとお茶ちょうだい」
ノックのあと、ドアが開いてウェーブががったゆたかな深い青色の髪をしたザラが顔をのぞかせた。髪の色と同じ眸をもち、やわらかく厚みのある唇が印象的なザラに真っ先に声をかけたのはマリアンヌだった。いつも頼むものが決まっているマリアンヌにザラがおだやかに返してロビンの方へ視線を向け、トレイから水が入ったグラスをよっつテーブルへ置いた。
「もう頼んであるわ。ロビンと、初めましての方はまだ悩むでしょ?メニューどうぞ。ボスにはこっちね」
「あァ、助かる」
「ありがとう、ザラ」
「決まったら呼んでちょうだい」
クロコダイルに薄いメニューを渡し、ロビンとドフラミンゴにはそれなりに厚みのあるメニューを渡してザラが部屋を出て行く。その姿を見送り、ロビンはどれにしようかとメニューを開いた。
「
……
せんべいなんて、あるのか」
「それはマリアンヌ専用のメニューだ。好物だからな」
「普通は出てこない」
ぽつん、と呟やかれた言葉には意外すぎる、という感情がありありと見えていて、その反応も正しいものだとロビンは思う。普通に考えてカフェでせんべいが出てくることはかなり稀なケースだった。ドフラミンゴの呟きを拾ったクロコダイルが呆れをにじませて答え、マリアンヌが大きく頷いてみせた。
「当たり前だろう。あんまり催促するせいで常備されただけだ」
「ザラはそういう好みには合わせてくれるのよ。ボスのメニューもそのひとつね」
「トマト
……
」
「好物だからな」
じっくりと専用のメニューを眺めるクロコダイルに目を向けながら言えば、ドフラミンゴがクロコダイルの手元へ視線をやった。そしてそこに並ぶメニューにこれもまた意外だ、という顔をする。クロコダイル専用のメニューは、どれもトマトが使われているもので、クロコダイルのためだけのものだった。
「意外かしら」
「いや、まァ、そうだな
……
」
「トマトは良い。味もそうだが、栄養面でもかなりの価値がある。健康機能成分としての注目も高いしな」
「
……
フフ、フッフッフッ!あんた、ほんとに面白いなァ」
滔々とトマトについて語りだしたクロコダイルに呆気に取られたあと、ドフラミンゴが堪えきれずに笑い出す。真面目にトマトについて話すクロコダイルを引いて見るわけではなく、バカにするでもなく、ただ純粋に面白い、と言って笑うドフラミンゴに、クロコダイルが虚を突かれた顔をした。
「ボスの話笑って聞くひと初めて見た」
「そうね
……
」
「フフフ
……
いや、笑って悪かった。色々意外だったんだ」
「
…………
べつに、構わねェ、が」
ドフラミンゴの謝罪にもクロコダイルはどことなく揺らぎながら返して、じっとドフラミンゴを見つめた。まるでそんな顔もできたのか、とでも言うようなクロコダイルに、ロビンはため息をこらえて運ばれていたグラスに口を付け、マリアンヌと同じパスタを頼むことに決めた。どんどん突いてはいけないところに触れている気がして頭を抱えそうになる。ドフラミンゴが何かを気にした様子はなく、隣に座るマリアンヌだけがわずかに不服そうな顔をした。それでも気を取り直してドフラミンゴの手元にあるメニューを覗き込んでからマリアンヌはドフラミンゴへと目を向けた。
「ドフラは何にする?あっ、メニュー読んであげる」
「あァ、ありがとう」
ドフラミンゴに問いかけたあと、はっとしたマリアンヌが真剣に言い放つ。それを聞いたクロコダイルがひそりと眉を寄せたものの、問われたドフラミンゴは一瞬驚きを見せてから、やわらかくマリアンヌへ返していた。サングラスでその目元が窺い知れなくとも、マリアンヌに応じるドフラミンゴからはやさしさがにじみ出ていて、赤い眸が細められているだろうことは容易に想像がついた。その表情のおだやかさに目を見開いていれば、隣からため息が聞こえ、ロビンはちらりとクロコダイルに視線を投げる。額を押さえて息を吐ききったクロコダイルの舌を打ちそうな気配にロビンもつられて頭を抱えそうになった。クロコダイルからは動揺と困惑が色濃くにじみ出ていて、ほんのわずかロビンはクロコダイルに同情してしまった。
「ボスとロビンは何にするの?」
「私はマリアンヌと同じものをお願いするわ」
「
……
渡り蟹のトマトソースパスタとラタトゥイユとトマトの肉詰めを」
「ボス、ドフラと一緒のパスタね」
「そうか」
メニューが同じことを告げるマリアンヌに相槌だけ打ってクロコダイルがメニューを閉じる。この様子ならワインでも頼みそうだとこっそり思いつつ、それには目を瞑ることにした。注文するものが決まり、ザラを呼んでメニューを伝える。そうして食事はそう待つことなくテーブルへと並べられていた。そこに加わったボトルワインに眉を寄せればザラが肩をすくめて見せたのがわかり、ロビンは仕方がないと納得する。クロコダイルのために用意されたワインを、当人も当然のように受け取っていたのでもう何も言うことはないと言葉をとどめた。
マリアンヌとロビンの前には和風のパスタが置かれ、クロコダイルとドフラミンゴの前に渡り蟹のパスタが置かれる。クロコダイルには加えて他の品物も並び、テーブルは華やかなものになっていた。目の前に置かれたパスタ皿をじっくりと眺めたドフラミンゴが、するりと皿の縁を撫で付ける。大きさを測るための仕草ひとつとっても、ドフラミンゴという男は美しくできているらしく、ロビンはつい目を惹かれてしまった。
「フォークとスプーンは君の右手側にある。ちょうど15時の方向だな。渡り蟹に飾りの甲羅はないからどける手間もないだろう」
「
……
ありがとう」
「ボス、やっぱりやさしい」
「これぐらい、ミキータがやってることと同じだろうが」
ドフラミンゴの所作に気を取られているロビンの隣から、静かな低音がドフラミンゴへ語りかけた。ドフラミンゴの視界がどれほどのものなのかわからないとはいえ、先んじて食べる物の注意点などを伝えておくのは得策のように思えた。そのクロコダイルの気遣いにドフラミンゴはほっとして、マリアンヌがじとりとクロコダイルを見遣った。マリアンヌの視線を払うようにいなして応じるクロコダイルの言い分は正しかったものの、ロビンはため息を禁じ得ない。それはおそらく、クロコダイルの下につく者ならみな同じ心境だろう。
「マリアンヌ、冷めないうちに食べましょう」
「そうね。いただきます」
ロビンが声をかけるのに大きく頷いたマリアンヌが手を合わせてフォークを取った。マリアンヌ用のせんべいとお茶はこの後運ばれてくることになっているので、先にパスタを口にする。ロビンもマリアンヌにならい、フォークを手にして湯気を立てるパスタへそっと刺しいれた。数回フォークにパスタを巻きつけ口へ運ぶと、やさしい出汁の味がふわりと広がり、ついで添えられていた大葉の心地良い苦味と香りが広がっていく。弾力のあるパスタも小麦本来の良さが出ていて、しっかりと出汁に馴染んでいた。何度食べても美味しいものだと頷いて周りの様子を見遣る。そしてこのテーブルで誰より所作が綺麗なのがドフラミンゴだということにロビンは気付いた。それはこのテーブルにつく者だけではなく、健常者であったとしてもドフラミンゴほど優美な姿は見たことがない。
フォークを持つ指先の美しさもさることながら、ドフラミンゴの仕草は実に静かだった。フォークをパスタに巻き付ける時にフォークの先端が皿を擦ったりせず、ソースを跳ねさせもせず、適量がたしかにフォークへ収まっていく。フォーク自体が適切な量を測っているかのようですらあるそれに驚きを隠せなかった。静かにパスタがドフラミンゴの口に運ばれるのを黙って見つめ、するりと口の中でパスタがほどけて取り込まれ、フォークが抜かれるのまでをつい見届けてしまう。ほぅ、ともれた息が自分のものなのか、隣のクロコダイルのものなのか、ロビンはよくわからなかった。ドフラミンゴがパスタを咀嚼して、その口元をやわらかく緩める。美味しいと確かにわかる顔をして、こくりと喉にパスタを落としたドフラミンゴが満足げに笑みをのせた。
「
……
君はずいぶん綺麗に食べるんだな」
「は?」
「あァ、いや、悪い。失礼なことを言った」
甘さすら感じるほどやわらかかった表情が、クロコダイルの独白にも似た呟きにかすかに強張った。ぴり、と張り詰めるドフラミンゴの空気には苛立ちが見えていて、クロコダイルがすぐさま謝罪を述べる。そのクロコダイルの反応に、ドフラミンゴが大きく息を吐いた。
「
……
わかってもらえるなら、いい」
「悪かった。ジェムとは印象が違ったんでな」
「ジェムはそもそもそこまで綺麗じゃないわ」
「そうね
……
」
比べる対象がすぐそばにあるせいでついジェムを引き合いに出してしまうのだが、ジェムの所作が汚いというわけでは当然ない。ただ、今はドフラミンゴと比べているためそうなっている。けれどもドフラミンゴと誰かを比べることの方が酷だろうとロビンは思っていた。
「まァ、ロービジョンであるなしに関係なく、ドフラミンゴくんの所作は綺麗だ」
「フフフッ、そう言ってもらえれば練習の甲斐もある」
「練習したの?」
「あァ、ヴェルゴに付き合ってもらったんだ。あいつから綺麗に見えるまでずいぶんかかったなァ」
「ふぅん」
懐かしい記憶を掘り起こして表情をやわらかくするドフラミンゴに、クロコダイルのこめかみがひくりと動いた。空になったグラスが満たされて、すぐにまた空にされていく。苛立ちをワインと共に飲み干そうとするクロコダイルの姿にロビンは憐憫を感じざるを得なかった。
「なにかね」
「いいえ、なんでも」
「それより、トマトが好きなら、シッケアール園にも話をしたらいいんじゃないか?」
「
……
それは、既にしてある」
「断られてしまったのだけれどね」
おだやかに話を向けてくるドフラミンゴにクロコダイルが実に苦い顔をして答えてみせ、ロビンはその後を引き継いだ。シッケアール園というのはミホークが経営する農園で、トマトに力を入れているところだった。その品質を買い、どうやら顔見知りらしいミホークにかけあったのだが、契約も何もほとんど門前払いに近い状態になっていた。
「そうなのか?だったら、こっちから話を通してみても、」
「あの野郎、オレは素気なく無視したくせにこっちは良いってのか。信じられねェな」
「ボス」
ドフラミンゴから意外なことを告げられるのに、クロコダイルの苛立ちがぶわりと持ち上がる。そのせいで舌打ちはもれ、口調がいつもの雑さを出していた。それにきょとりとするドフラミンゴを見て、ロビンは強めにクロコダイルを呼んだ。もれ出た舌打ちと言葉にはっとしたクロコダイルがバツの悪そうにドフラミンゴから視線をそらす。
「
…………
すまない」
「フッフッフッ!あんた、そっちの方が良いな。堅苦しいのは苦手なんだ」
「ドフラもやさしいのね」
「そうでもないさ」
クロコダイルが短くこぼすのを気にせず、ドフラミンゴは声を上げて笑い、鷹揚にクロコダイルの態度を受け入れてみせた。そしてそれはドフラミンゴのやさしさと言うよりは言葉通り、堅苦しいのを嫌うせいだろう。そのことに今度はクロコダイルが目を丸くさせ、次いでにたりと笑みをのせた。あくどさすら感じるその笑みに眉を寄せたのはロビンだけで、ドフラミンゴはやはり気にもしないらしい。
「それなら、気遣いもなくいこうじゃねェか」
「ボス
……
」
「あァ、そっちのほうが良い」
満足そうに頷いて口調を戻すことなく話をするクロコダイルに呆れをこめて呼びかけたところで機嫌の良いクロコダイルが気にするわけもなく、ドフラミンゴもやわらかに笑うのでロビンは何かを言うことを止めてしまった。深入りするべきものではないと早々にきりをつけ、残りの食事を楽しむことにした。すこししてマリアンヌに届けられたせんべいも彼女の中に全て収まり、食事は実におだやかに終了することになっていた。ワインを傾けたクロコダイルの機嫌が終始良いのも、それに合わせてドフラミンゴが楽しそうなのも、食事の場がおだやかだった一因だった。マリアンヌもドフラミンゴとの食事を楽しんでいるようだったので、ロビンはそれがいちばん嬉しいことだった。
お手洗いのために席を立ち、ついでに会計を済ませておく。勝手を知っているザラが相手なのでスムーズに支払いが済んでいた。先に預かっていたクロコダイルのカードはのちのち返すことにして、ロビンは手にしていた化粧ポーチにカードを仕舞って個室へと戻った。
「眠そうだな、マリアンヌ」
「
……
うん、朝早かったから」
「それなら今日は早めに寝るんだぞ」
「そうする」
あくびをひとつして目をこするマリアンヌにそっと声をかけたドフラミンゴが、やわらかくマリアンヌの頬を撫でる。その手つきのやさしさに母性にも似たものを感じ、ロビンはついクロコダイルを見てしまった。グラスに残ったワインを喉に流し込みながらドフラミンゴを見つめるクロコダイルの眸に、楽しげないろがにじむ。それはじっと見つめて対峙したい類のものではなく、ロビンはドフラミンゴにすこしだけ同情せざるを得なかった。
「ボス」
「あァ、そろそろ出るか」
うつら、と船を漕ぎだしそうなマリアンヌの様子を見て、ロビンはクロコダイルへ呼びかける。それにクロコダイルがロビンを一瞥し、一つ頷いてみせた。席を立つクロコダイルを視界に入れつつ、ロビンはマリアンヌの傍まで近付き、その手を引いた。
「それなら支払いを
……
」
「もう済んでるから気にするな」
「は!?いやでも、それはさすがに」
「こっちが誘ったんだ。金ぐらい出すさ」
「行くと決めたのは俺だろう。自分の分はちゃんと払う」
「これぐらいべつに構いやしねェよ。それでも気になるなら、次の機会でも作ってくれ」
「
…………
え?」
奢られる理由がないと席を立ってするりとクロコダイルへ近付くドフラミンゴに、クロコダイルが目を合わせて返す。それでも納得出来ないと言い募るドフラミンゴに、クロコダイルが悪い顔をした。そうしてその口からこぼれた言葉にロビンは呆れ、ドフラミンゴがぽかんとする。すべり落ちそうになるため息を飲み込み、ロビンは早めにここから出てしまおうと決めた。
「ボス、先に出ておくわね」
「いや、オレも出る」
「クロコダイル!」
呆気にとられていたドフラミンゴを気にすることなくクロコダイルも部屋を出ようとして、ドフラミンゴが声を上げた。名前を呼ばれた瞬間の、クロコダイルのそれは嬉しそうな顔を見てしまったロビンは思わず額を押さえた。ゆっくりした足取りで部屋を出て行くクロコダイルへドフラミンゴが続き、ロビンもマリアンヌを引き連れてカフェを出る。短くなった日がもう暮れてしまっていて、外はかなり夜のいろを濃くしていた。
「あァ、連絡先は教えておくべきだな」
「そうじゃない、なんだ、次って」
「お前の気が済まないならその代わりだ。プライベートで二人の時間を作ってくれ。食事でも、なんでもいい」
「
……
なんで、そう、なる。あんたのプライベートだって割かれるだろう」
ドフラミンゴは実に戸惑った顔をして、クロコダイルを見つめた。会社を通してではなく、個人的な時間を作って欲しいと望む理由など、限られているはずなのに、ドフラミンゴがそれを理解していないらしい。その事実に、ますますクロコダイルの顔があくどいものになっていた。
「理由なら簡単だろう。お前に気がある。それだけだ」
「
………………
はァ?」
「とりあえずスマホを貸せ。連絡先だけ教えろ」
「いや、え、クロコダイル?」
混乱の渦に呑まれるドフラミンゴを楽しげに見つめながらクロコダイルが言い放ち、その勢いに押されたドフラミンゴがスマホを差し出している。理解をできずに固まるドフラミンゴへこれ以上の説明はせず、クロコダイルが淡々と連絡先を交換させていた。頭にいくつも疑問符を浮かべたままのドフラミンゴに迎えがそろそろ来るとわかったクロコダイルが、ドフラミンゴの背中の向こうにヴェルゴを見つけ、スマホをドフラミンゴへと押し返す。
「ちゃんと連絡しろよ」
「ちょ、まだ話は終わってない!」
「またな、ドフラミンゴ」
すぐそばまでヴェルゴの気配を感じたクロコダイルがそう告げてドフラミンゴに背を向けた。遠目でやりとりを見守っていたロビンは、ドフラミンゴに声をかけるヴェルゴと、いまだ困惑しているドフラミンゴの様子を眺めてからクロコダイルへ視線を投げる。実に満足そうに楽しげな笑みをのせるクロコダイルへ珍しさを覚えながら、ロビンはドフラミンゴの気苦労を思うしかなかった。
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