もちこ
2022-10-10 23:29:34
2375文字
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好きぴと好きぴの友達と犬飼 【犬飼】

フードコートで友達と喋ってたら犬飼が来る話。
遠慮の無さは関係の良さを示す。

「今日生指にカラコンバレていま裸眼」
「かわいそ何つけてたの?」
「ミミブラウン」
「そりゃバレるわ。バンビのヴィンテージベージュいいよ」
「どんな感じ?」
「つけてみる?ワンデー新品持ってるし」
「マジ?いいの?ありがと〜!」

 やっぱり、持つべきものはカラコンをくれるくらい寛大な友人。六時間授業を乗り切った放課後、イオンのフードコートで私達は自由になる。家まで待ちきれずにその場で新しいカラコンを装着すると、鏡に写った自分の瞳が普段よりも透明感が増して、なんか上手く表現できないんだけど、“うるふわ”なんて頭悪そうなオノマトペがぴったり似合う感じになった。

「どうよ、これつけたら色素薄い系女子になれるでしょ?」
「いいかも」
「ほんとだ!めっちゃ自然に盛れてる」
「これは買いですね〜」

 新しい自分を見つけた気分。パチパチ瞬きしたり、目を泳がせたり鏡の中で遊んでみる。後でドンキに買いに行こうっと。

「今の私、30%くらい益若つばさかもしれない」
「あははっ、三割つばさ」
「十割そばみたいに言うなし」

 楽しげに話してる様子をインスタ女にばっちり撮られて、今日のストーリーのネタにされる。まぁ、これはカラコン代ということで。サービス精神で大袈裟に媚びたポーズをとれば、彼女は一層嬉しそうに笑いながら何枚も写真を撮った。

 ひと通りはしゃいだ後、各々が自然にスマホ確認タイムに入って一旦クールダウンする。私も手元のスマホに視線を落とし、SNSの広告に『興味ない』ボタンを押していると、ふいに近くで馴染みのある名前が聞こえた。

「後輩って犬飼に夢見がちじゃない?」
「あ〜わかる。人前では“女の子大事にしてます感”醸し出すくせに、実際彼女の優先順位低いし」

 声の方をチラリと見てみれば、めちゃくちゃ可愛い女が二人、通路を挟んで向こう側の席に座っていた。飲んでるドリンクも私みたいにファンタグレープとかじゃなくて、アイスコーヒー。

「付き合ってた時も全然向こうから連絡こないし。一週間未読スルーされて、あぁこれ無理だなって思ったもん」
「外面だけ良いから馬鹿な女にモテるんだよね」

 女の子たちは全然楽しくなさそうに、スマホを弄りながら会話をしている。なんていうか何も知らない私がこんなこと思うのはあまり良くないのかもしれないけど、あぁいう風にはなりたくない感じがする。

「大丈夫そ?」
「あ〜……まぁ他所の犬飼さんかもしれないしね」
「六頴館の制服着てるけど?」
「ですよね

 ため息混じりに肩を落とす。犬飼と私の関係を知る友人二人は声を殺してめちゃくちゃ笑う。

「超ディスられてんじゃん。なにあれ、元カノ?」
「多分ね」
「元カノ同士でつるんで悪口言われてんのおもろすぎ。やっぱ次元違うなイヌカイは」
「なんかもう、一周回って感心する
「ねぇごめん、もっと面白いこと言っていい?」

 いきなり言わずにワンクッション置く友人に、よく考えずになに?と反射で聞き返せば、

「イヌカイ今から来ます」

は?

「いや嘘でしょ」
「ガチ。さっきストーリーに返信きて、近くいるから行っても良い?って聞かれていいよって返した」
「いや良くないよ」
「まぁ待て待て。とりまポテト食べて落ち着こ」
「流石に無理」

 巻き込まれる前に帰らねば!と鞄を持って素早く立ち上がった時だった。

「はいどうも〜犬飼で〜す」

敬礼ポーズをとりながらニッコニコの笑顔で現れた犬飼は、まだ良いとも言っていないのにソファーに詰めて座ってくる。逃げ遅れた私は、袋の中のネズミ状態。

「もう何しに来たのガチで」

なんか色々と面倒な予感がして、目をそらしながら突き放すように聞けば、

「暇だったから遊びに来た。てかいつもとカラコン違う。可愛いね」

図々しく顔を覗き込みやがった彼の肩を押して、物理的に突き放した。それでも犬飼はニヤニヤ笑みを浮かべたまま。

「ほらも〜こういうの絶対気付くんだよコイツ!」
「マジじゃん、イヌカイやば
「オタクすぎ」
「必要以上に引くじゃん。みんなおれのこと嫌いでしょ」
「大好きだよ。ね?」
「ねー?」
「こっちに振るな」

 犬飼を弄ってるフリして、全員で私のことをからかっている。

「まぁ知ってるよ。でも二人きりになってからもう一回聞くね」

 ウザすぎる。色々な言葉を飲み込むため、ファンタグレープを無理矢理ストローで吸い込んだ。ぐ炭酸が痛い。自分が軟弱であることに気付く。

「てかイヌカイ、向こうにいるの元カノ?」

 友人の一人が声を潜めて聞けば、犬飼は背筋を伸ばして向こうを確認する。「あ〜」って微妙に片眉を下げて表情を歪めたから、恐らくビンゴ。

そうだね。何で知ってんの」
「わりとデカい声で名出しでディスられてたから」
「あはは。わざわざ教えないでよ。こういう時どうしたらいいか道徳の授業で扱わなかった?」
「腹立つわ、イヌカイもう長いポテト食うな」
「短いのはいいんだ、優しいね」
「マジで明日からハブるからなお前」
「喧嘩は他所でどうぞ」

 軽く口論を始めた友達と犬飼に冷たく言い放つと、犬飼は“自分は無害だ”と主張するように引っ付いて腕を組んできた。自覚ない奴が一番厄介だ。勿論振り解く。

「やーい、イヌカイざまぁみろ」

 すかさず犬飼をからかった友人は、隣に座ってたもう一人の友人に頭をベシリと叩かれる。喧嘩両成敗。でも、今回はちょっとの差で犬飼の方が不憫かもしれない。

「犬飼席変えようか?」
ううん、大丈夫。でも苗字目立つから、バレないように澄晴って呼んで?」
「雑魚が」
「口悪」

 不憫とかウソ。犬飼はいつだって強か。