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もちこ
2022-07-16 01:39:02
1501文字
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愛されすぎてキレそう【嵐山】
愛故に好き放題されすぎて、彼氏嵐山にキレる話。
冷蔵庫の扉が閉まる音でふと目を覚ます。青白い照明がついたキッチンに立ち、水分補給をしている彼と目が合った。
さっき雑に脱ぎ捨てたTシャツとは別の新しい服に着替え、こちらに微笑みかける彼はすっかり普段の爽やかボーイ。むしろ普段より輝いているように見える。
「いま、何時?」
「夜中の十二時。お風呂入れそうか?」
「うん、入る
…
」
どうやら眠っていたのはほんの十五分程だったようだ。動き出すため、ソファーに沈んだ身体を起こそうとする。しかし、脇腹が痛くて上手く力が入らず、そのまま後ろにくたりと倒れ込んでしまった。
「もう少し休んでからにした方が良さそうだな」
グラスを片手にキッチンから戻ってきた彼は、まず床に膝をついて、私の顔を至近距離で覗き込んだ。気遣うように眉を下げ、汗で額に張り付いた前髪を指でそっと分けてくれる。
「いっぱい汗かいたな。とりあえず水分とろうか」
「
……
起き上がれない」
不貞腐れた声で訴えると、彼は眉を下げて微笑み、グラスをひとまず近くの机に置いてから、手のひらで背中を支えてゆっくりと身体を起こすのを手伝ってくれた。その労わるような手つきに一瞬胸の奥がきゅんとするけど、全身の痛みの原因もまたこの男にあることを思い出して、トキメキはプラマイゼロで相殺される。
「少しずつ飲んで」
「ん
…
」
飲みやすいようにグラスにはストローをさして、わざわざ口元まで近付けてくれる。ちゅう、と言われた通り少しずつ、グラスの中身を口に含む。スポーツドリンクとはなんと用意周到な
…
。ちらりと横目で見ると、キラキラの眩しい笑顔が返ってきた。甲斐甲斐しく世話を焼くほどの余裕がある彼と、支えなしでは起き上がることもできない自分を比較すると、文句のひとつでも言わねばやりきれないような気持ちになる。
「准くん
……
アフターケアを怠らなければ多少のことは許されるって、思ってない?」
「うっ
…
」
わかりやすく反応した彼は本当に心から素直な人だ。そんな裏表のない人柄だから、愛し合う時もただ真っ直ぐ、純粋に気持ちをぶつけてくる。
もう終わりだと告げた後もひたすらにねだられると、私は何も考えることができなくなって彼の熱に溺れてしまうのだ。この手口はマインドコントロールと言っても過言ではない。
「准くんはこれでもセーブしてくれてるのかもしれないけど
…
そもそも私たち体力が違うし、正直言って身体がもたない」
「
…
そうだよな、ごめん。初めからもっと君の体を労わるべきだった」
今度はしゅん
…
と申し訳なさそうに眉を下げて、彼は反論の1つもせずに反省する素振りを見せた。しかし大事なのはここからである。
「で、この話何回目だっけ?」
「はい。三回目です
…
」
「ソファーでしないって約束は?」
「う
…
ごめん」
嫌な上司みたいな口調で責め立てる私と、反省しているからこそ言われるがままになっている准くん。指摘したところはいつもすぐに直してくれる彼だけど、これだけはいまだ一向に直らない。多分ハッキリと言わないだけで、彼には譲る気がないのだ。反省が嘘ではないにしても、押し通せばいけると思っている節がある。
「
…
大きいソファーを買うっていうのはナシかな」
「准くん」
「だめかぁ
…
」
別の道に逸れてどうにかしようとしても無駄だ。私が提案する解決策に則ってほしい。また黙り込んで何やら考えを巡らせている彼をよそに、ドリンクを少しずつ飲み進める。グラスが空になったタイミングで、准くんは顔を上げてお願いするようにこちらを見つめた。
「どうしてもだめ?」
「だめ!」
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