アキ
2024-12-31 11:47:52
1406文字
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ペディキュア

5歌(呪):ペディキュア
リクエストありがとうございました!

 宿儺との決戦の前日、ふらりと五条は私の前に現れた。
「何?どうしたの?」
「ん、これ。歌姫に。僕からプレゼント」
桐の箱に入ったそれは明らかに高価なものだと分かる。中に入っていたのは、美しく装飾された貝殻の中の鈍く輝く玉虫色。
「紅?呪術的なもの?」
「そもそも化粧自体が呪術的な意味を持つけどさ。準備できることは細部までやっておきたいだろ。五条家御用達の紅で、五条家の儀式の時に五条家の女が塗る特別製」
流石の五条も今回は力の入れようが違う。ならばありがたく受け取ることにする。
「リップとして塗ればいいのよね?」
「祝詞をのせる唇、舞の時の為に爪先があればいいんじゃない?」
五条は私に座るように促すと、眼の前にしゃがみ込んで私の足袋に手を掛けた。
「ちょっと」
「塗るだけだって」
足袋が脱がされ足が露わになる。しゃがみ込んだ五条の膝の上に足をのせられ、白い筆先で爪紅が塗られていく。
「指だけじゃないのね」
「歌姫は裸足で舞うから、こっちにも塗った方がいい」
赤く塗られていく爪先を見つめて、問いかける。
「で、これにはどんな効果があるわけ?」
「よし、これで足は全部塗った」
満足げにそう言って五条は顔を上げる。
「これをつけていいの五条家当主の妻だけで、つける時は五条家に嫁ぐ時と死化粧の時だけだけ」
……は?」
「運命の赤い糸っていうだろ、歌姫。あれと同じ。五条の縁を示すものだよ。死した後も再び生まれ変わって五条の家に帰ってこれるようにって」
「ちょっ、ちょ、っと待ちなさいよ!私は」
「すきだよ、歌姫」
私の足を足の上に置いたまま、五条は私を見上げて告げた。突然の告白に呆然としていると、いつものように馬鹿にしたように笑った。
「別に五条家に嫁げって話じゃないよ。仮に僕に何かあったとしても、この紅があればあの世でも歌姫のこと探せそうじゃん。運命の赤い糸代わりだよ」
その言葉に思わず口を噤むと「まぁ死ぬ気なんて1ミリもないけどさ」と五条は笑った。
「だから、これは、僕から歌姫への『呪い』ってことで」
そこまで言った五条の胸倉を掴み上げた。驚いた五条を睨みつけて告げる。
「私、そんな『言い逃げ』みたいな男の告白を真に受ける安い女じゃないのよ。死亡フラグ立ちそうなことするんじゃないわよ」
「ま、僕も今回はそれだけ覚悟してるってことで」
「生きようが死のうが『待ってる』から、ちゃんと言いに来なさい」

「全てが終わった後で、それでもアンタが私をすきだと言うのなら、……考えてやってもいい」

多少の恥ずかしさはあれどそう伝えれば、五条は馬鹿笑いをし始めた。こっちが真面目に言ってるのに!と叫ぼうとした瞬間、唇を塞がれた。
「こういうの死亡フラグっぽいよね」
……アンタほんと縁起悪いわよ」
赤く塗られた爪先で五条の腹を蹴り上げた。

***

「あら、それ口紅?高価なものじゃないの?」
「ええ。501号室の庵さん、『死化粧』にこれを使ってほしいって。これをペディキュアとマニキュアとリップとして使ってほしいって、お願いされてたんです。願掛けだそうで」
「あら、庵さんが時々言ってた若い頃に告白してきた後輩の話?」
「そうですそうです」
「庵さん『死んだ後に会いに行って殴りたい』って言ってたものね」
「愛ですよねぇ」
「素敵ね。さ、庵さんの身体拭いて、お化粧してあげましょう」