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supli12
2024-12-31 01:59:24
3193文字
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その日、科学の塔には激震が走った。
商談に出ていた龍水が襲撃されたのだ。護衛についていたスタンリーによって犯人達は確保されたが、同時に起こった爆発の誘導中、龍水を撤退させた後スタンリーは行方が分からなくなった。
知らせを受けゼノはあっという間に捜索網を展開した。スタンリーの無事、居場所を突き止め自らその対立する組織へ迎えに出向いた。
意見が対立してはいるが敵対している訳ではない、その組織でゼノはスタンリーを待った。だがそこには、スタンリー・スタンリーは存在せず、彼と同じ顔をした男が党首の護衛として立っていたのだ。
「ヘブン、こちらの方がお前を迎えに来たそうだ」
「俺は記憶を無くした身でね。そちらに行っても役に立ちそうもない。仕事ならば指示があれば行きますが」
ゼノと党首を見て、ヘブンと呼ばれた男はスタンリーの顔でゼノを見る。そこに一筋の色も無かった。
「
……
スタンに何をした」
「自国内で意識を失っているのを発見して介抱しただけだが」
ゼノが口を開く前にゲンが言い募る。
「いやあ、ありがとうございます。我が政府の護衛の責任者、月の英雄を救っていただいて言葉もありません!今後もこの友好的な関係を是非継続したい、本当に感謝しておりますよ」
「いやそう仰ってもらえるとは有り難い。ヘブン、行きなさい。もし戻りたかったらいつでも戻って構わない。我が国はいつでも君を受け入れよう」
スタンリーは目線のみで諾と答えた。ゼノは歯を食いしばりながらスタンリーを見た。そこにゲンの耳触りの良い言葉が重なる。交渉が始まったのを見て取ってゼノはスタンリーに声を掛けた。
「支度をしてくれ。Mr.ゲンの話が終わったらすぐに発つ」
「何も無いね。このままでいい」
こっからはじまってこの二人は恋人という関係になって二か月くらいでまだそんなにセックスもしてなくて、でも仕事上情報共有が必要なゲンには言ってあったから、2人の家へ帰る前にゲンが関係性をありのままにきちんと伝えた。その場にはゼノもいたけどスタンリーはゼノを一瞥して「彼と?信じられねぇな」と呟く。ゼノはそれを受けて「では一旦僕たちの関係は凍結しよう。君の家は僕の家でもあるからね、共に暮らすにはその方がいいだろう」と答えた。
そうして始まった二人の暮しだが、記憶が戻るまで本格的に職務に復帰しないでいるスタンリーはゼノに構わず生活している。
暫くそんな日々が続き、それでも時々ゼノと時間が被ることがあって、穏やかなゼノに「あんた最初と印象が違うな」「そりゃ仕事中だったからね。家の中だとこんなものだよ」とか会話したり一緒に食事を摂ることが増えていく。話もするようになり距離感が心地よいことにスタンリーは気付く。恋人同士だったという空気は一切なく、スタンリーが聞いてみるとゼノは「まあ幼馴染の期間が長かったからね」と笑うから、恋人という関係には未練がないのかと思うスタンリー。時折一瞬だけ見せる可愛い顔が恋人だったスタンリーに向けるものなのかと思うと苛立ちを覚える。そこで漸く、ゼノが吸わないのに置いてある灰皿、飲まないのにあるビール、スタンリーは広いベッドに眠っているのにゼノは客間の簡易ベッドに寝ていることに気付く。男二人が寝れるほど広いベッドのある部屋にゼノは一切立ち入らない。着替えも木箱にいれて狭い客間に置いてあった。清潔なベッド、快適な食卓、嗜好品、スタンリーには自然に全てを用意するのに。これはどんな種類でも親愛に他ならない、その位は分かる。けれどそれが向いているのは俺自身ではない。
苛立ちと堪らなさにスタンリーは混乱する。そんな時、帰宅するとリビングのソファで眠ってしまっているゼノがいた。
「起きろよ、ここで寝ると風邪ひくぞ」
「
…………
ん、すたん、スタン
……
」
拙い声が名を呼んで、薄っすらと開けた目は潤んでいた。するりと腕が伸びて抱き寄せらえた。
「
………
スタン
…………
」
切ない、小さい声だった。
ゼノ、と名を呼んで無意識に抱き返そうとしたときにゼノは我に返ったように手を引いた。
「
……
ああ、すまない。寝ぼけていたようだ」
何もなかったかのようにいつも通りに言うゼノをまたソファに沈める。腹の底から憤りが湧き上がってくる。俺はあんたの恋人だったんだろう?何故手を伸ばさない?覚えてないから?あんたの好きなスタンリーじゃないから?
そのまま口付けた。ゼノが目を見開いて、次の瞬間押し返してきた。凝っと見つめられてからゼノは口を開いた。
「
……
どうしたんだい?混乱しているのかな。関係は凍結すると伝えただろう?無理しなくていいんだよ」
凝っと見つめて、思い出していないと、自分の恋人のスタンリーではないと観察されているのだと思った。君ではないと言われているようで、スタンリーは手を握りしめた。
「
…………
なあ、俺たち幼馴染が長かったんだろ?このままじゃそん時の記憶しか戻んないぜ。恋人だってんなら同じようにしようぜ。その方が思い出しやすいんじゃね?」
「
…………
スタン。それはやめよう」
「黙って、ゼノ」
抵抗されるのが許せなかった。あんたが俺を恋人だって言ったんだ。君が大切だと伝えるような生活をして、大切だという目で見て。
「思い出したい」
その言葉に、ゼノは手から力を抜いた。
「分かった」
そう言ったから、俺はゼノを寝室のベッドに連れて行こうと誘うと、ゼノは首を振った。
「僕の部屋じゃダメかい?」
「そっちベッド狭いだろ」
「
…………
僕の部屋がいい」
なんで?喉元まで出かかった。あの広いベッドであんたのスタンリーと寝たから?俺とは寝たくねえの?許さねえよ。
抱えてゼノを寝室の広いベッドの上へ落とす。
乗り上げて、圧し掛かると逃げたいのか目線を逸らした。
知るか、あんたは、俺のだ。
「
…………
あ、
…………
っ、や
…………
っ」
必死で声を殺している。かたい身体だった。暴くと竦むのを抑え付けた。
手はシーツを握りしめていて俺の身体に回ることは無かった。それでも執拗に解いていくと濡れた音をたてて開いていく。とろとろと零れるのが可愛くて低く笑うと身体を竦ませて、それもまた腹が立った。俺は、知っている。こいつがもっと溶けるところを。触れ合うと嬉しそうに笑うところを。俺はその顔を見たことが無いのに、知っているんだ。ゼノ。
「ゼノ、力抜け
…………
」
「うぅ
……
」
「
…………
そ、上手いじゃん
……
、
……
っ」
汗の滲む額に掛かる髪を戻して撫でてやる。そうするとゼノが俺を見た。初めて、俺を見た気がした。
そのまま唇を触れ合わせる。頬にも、潤んだ目元にも。
「ゼノ
……
」
ゆっくりと揺れる。痛くないように、揺らすように。
ゼノの吐息が甘くなったような気がした。慣れてない戸惑うような身体だった。何故だかそう思った。
揺れながら、口付けなら合間に囁く。
「なあ、ゼノ
……
、俺にしとけよ、どうせ前のやつあんたの事可愛がってなかったんだろ?恋人同士だってのに慣れてねえじゃん
……
、なあ、ゼノ、ゼノ
…………
」
締め付けが気持ち良くて目を瞑っていたら、ゼノが遠慮がちにスタンリーの背中を撫でた。なだめる様に、甘やかす様に。
脳内に一気に満ちる幸福感に目眩がする。
そのまま登り詰めて、そして。
世界が回る。耳鳴りと頭痛、そして数多の膨大な情報が螺旋状に落ちてくる。俺の中に。自分のキャリア、培った経験。そしてゼノ。ロケットを抱えて笑う子供のゼノ、NASA勤務時代、目の下に隈を作ってパソコンに向かうゼノ、科学で統べると統率した石世界のゼノ、月から帰った俺に泣き笑いでおかえりと言ったゼノが。
―――
俺のゼノ。
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